婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

51思い

別に宣言するつもりはない。
だが、私達の婚約を誤解している者もいる。


だからこそこの場で。
特にサンドラ嬢にはしっかり伝えておく必要があった。



「ヴィッツ伯爵令嬢。私は貴女の心に寄り添えなかった。ですが幸福になっていただきたいと思っていました」

「何よ…」

「ですから身を引きました。そんな私にリディア様は私を受けて入れてくださったのです」

「シオン様！そのような…」


実際リディア様程の高位な方ならばもっと高位な身分の貴族に嫁ぐのが正しい。
病気の事やくだらない外聞を抜きにしてもリディア様にはそれだけの価値があるのだから。


「私にとってリディア様は高嶺の花です。こんな私を受け入れてくださった事を感謝してもしたりません」

「いいえシオン様…それは私の台詞ですわ」

「リディア様…」


私は口下手で乙女心をまるで理解できない。
ディアッカのように話術で楽しませることもできないし、チャールズのような美しさもない。


まったく面白みのない人間だ。


「私が社交界でどんな目で見られていようとも貴方は誠実でした」

「騎士ならば当然です」

「まぁ、騎士以前に男ならば当然ですがね？」


ディアッカが周りを睨みつける。
ここにいる者はあの夜にリディア様を侮辱した貴族もいるのだから。


「ああ、それから婚約者のいる男を名前で呼ぶのは失礼ですよ？それともヴィッツ家は真面なマナーを教えていないんですかね？」

「エルスワン団長、思っていてもそのような言葉はどうかと。気の毒ですわ」


ニナ、声のトーンが高くなったな。
絶対に悪意がると思ったがここで何も言わない方がいいな。


「ヴィッツ伯爵令嬢。私は王族です。伯爵家は何時から王家よりも偉くなったのでしょう？」

「なっ！」

「父君に抗議しなくてはなりません。そして私の婚約者に無礼はお止めくださいませ…無体が続くなら私も黙っていませんわよ」


リディア様は前に出ようとされる。

急いで止めに入ろうとするも目で訴えられる。


まるで手出しは無用だと。


リディア様とサンドラ嬢の距離が近くなり何かを耳打ちしていたが、何も聞こえなかったがサンドラ嬢がその場を去ってしまった。



「何ですの。姫様に無礼な」

「あの女に礼儀なんてないだろ。人として善意を母親の腹の中から捨てて生まれたんだろ？」


ディアッカ。
前々から思ったんだが、サンドラ嬢の事が本当に嫌いだな。


基本他人に対してここまで嫌悪感を抱かないんだが、何かされたのか？