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73絹の価値
しおりを挟む王族の象徴でもある花嫁衣装は絹を使われている。
生地の中でも最高級と言われている事から絹を使ったドレスは高価で女性としては絹のドレスを着れるのはステータスだった。
しかし絹の材料となる繭は動物性たんぱく質。
カイロンと呼ばれた繭を使った絹が光沢が美しく太陽の光を浴びるとまるで女神の輝きのようにも見えたと言われている。
しかしカイロンの繭は今では手に入らない。
尚且つ絹にするには手間がかかり、それに代わるカコンという昆虫が作った繭で絹が作られている。
現在宮廷貴族達が知る絹とは二流品だ。
中には偽物の絹も出回っているのだが、今回ベルモット嬢が用意した絹は――。
「こちらが生地でございます」
「普通に絹の生地よりも透明感があるわ」
「カイロンの繭を薄くしております。王都で売られている絹よりも薄いですが上質です。そして生地を少し足してその上に銀刺繍を施します。その上にまた記生地を被せます」
絹を使う部分はそこまで多くないが、見る人が見れば本物だと解るだろう。
「私が以前遠征に出向いた時に絹に使われる繭に詳しい職人から繭の優劣に聞いたんですよ」
「流石ですわシオン様。こちらの繭は最高級です。最高の生地に最高のお針子が手を施せばその辺の絹に負けませんわ…いいえ最高の絹のドレスになりますわ」
ベルモット嬢に無理を言ったが、ある条件を対価として快く受け入れて貰えた。
「歴代の王族の中でももっとも美しい花嫁様になりますわ。ペチコートも豪華にいたしましょう!
「えっ…」
「真珠を遣いただのペチコートではなくドレスの一部として演出するのです」
デザイン画を見ると、露出する肌の部分をレースで覆っている。
「肌を見せるのは良くありませんが程よい加減が必要です。これならば素肌を晒すことなく姫様お魅力を引き出せますわ」
「貴女の手腕に感謝する」
「いいえ、絶対的な不利な状況こそですわ」
流石だ。
平民でありながら社交界に革命を起こした仕立て屋だ。
「万一妨害されても絹に変わる布を探します。権力に屈するのは三流ですわ」
まだ見習い時代の頃は貴族出身や商家出身の名ばかりのデザイナーに苦しめられて来たからこそ権力に屈することはしない。
信念を持っている彼女ならば大丈夫だろう。
「頼んだぞ」
「お任せください」
花嫁衣装はその後、大急ぎで制作された後に挙式まで後一か月となった。
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