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88劇の裏側~リディアside
しおりを挟む「馬鹿にして!」
私を睨みつけ扇を振り上げて殴ろうとする彼女。
殴られるぐらいの覚悟はしていた。
「なっ!」
「乱暴な真似を止めてもらおうか」
シオン様が扇を握った。
でもいきなりだったので手袋から血が流れていた。
「怪我を!」
「大丈夫です。この程度傷にも入りません」
真っ白な手袋に真っ赤な血で染まって行く。
「貴女が傷つくよりもずっといい」
「シオン!どうして…何で」
「妻を守るのは夫の勤めです。それから私の事はアルハルト伯爵とお呼びください…かつて元婚約者でありましたが、貴女には既に思う方と言い交わしているので誤解を受けます」
「何を言って…」
「私も妻を持つ身です」
社交界ではラインハルト殿下が仕組んだ影武者の影武者と肉体関係を持っているのは有名な話だわ。
他国では広まっていないけど時間の問題だと思うけど。
「貴方は騙されているのよ…」
「例えそうだとしても選んだのは私です。私は貴族である前に騎士です」
私を穏やかな目で見られるシオン様は何処までもお優しかった。
初めこそは王命だったにも関わらずシオン様の私の思いに真剣に答えてくださった。
だから先程言った言葉は本心だわ。
もし私がシオン様よりも先に亡くなった時は、他の女性を妻に迎える事を私は望む。
シオン様の幸せを望めばこそ。
でも、私の面影を大切にしてくださる。
その言葉だけでも十分だわ。
「サンドラ様、私は貴女から婚約者を奪った悪女と言うのは変わらないでしょう。その罪と向き合う為に機会を与えてくださったことを心から感謝いたします」
「は?何を…」
「過ぎた過去、でも私に償う機会をくださったのですから…本日ご参加してくださった皆様に罪を告白できます」
口を挟む機会を与えない。
でも程よく隙を与えつつアピールする。
ディアッカ先生がピースをしているわ。
タイミングとして絶妙だわ。
「私を馬鹿にして!出来損ないの死にぞこないが!プライドも捨てた癖に!」
「サンドラ!」
「シオン!私が復縁してあげると言っているのに何様なの!この私が折れてやっているのに最後までここまで使えないなんて!アンタなんて私の為に生きいればいいのよ!」
「サンドラ!」
傍で怒鳴り声を上げて娘を止めようとするも、止まらない。
そしてヴィッツ伯爵夫人も暴言を繰り返し、完全ある悪女が出来上がった。
これこそがシナリオ通りだった。
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