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123侍女と涙と怒り~ディアッカside
しおりを挟む「おい、何で泣く…ぐぇ!」
泣きながら胸倉を掴まれ息が苦しい。
本当にこの狂暴女、どこにそんな力があるんだよ。
「私は貴方が嫌いでした」
「おっ…おう」
「ずっと嫌いです。だけど今が一番嫌いですわ」
泣きながら言う事かよ。
まぁお前が俺に対してどう思っているか知っていたが。
今のニナの表情を見て思う事は一つだが。
「何で自分の事をもっと愛せないのよ!貴方ふざけるのもたいがいにしてくださる?」
「泣くか怒るかどっちかにしろよ…」
ニナが怒っているのは俺が自分を顧みない事だ。
普段から俺を毛嫌いしている癖に本当に人が良いよな。
「俺の事で泣くなよ。そんなんだと手籠めにされるぞ」
侍女としてこの王宮で生きて来たからそこそこ世渡り上すかと思った俺が馬鹿だった。
「早く男作れよ…お前不器用すぎるだろ」
「要りません」
「あ?そこそこ美人なのに婚期逃す気かよ」
揶揄ったつもりはない。
ニナは子爵令嬢でそこそこ美人だし優秀だから縁談に困らないというのに未だに縁談を断り続けていると聞く。
「誰の所為だと思ってますの!貴方、諜報員でしょ!何で解らないのよ」
「は?」
「鷹の目を持っているなら!私の心ぐらい見なさい」
いや、これって告白か?
それとも何?
どっきりとか。
「何だ?お前俺の事好きだったの?」
「は?馬鹿言わないでくださる」
いや目が泳いでんだけど。
「めんどくせぇ!」
「お黙りなさい!今は貴方の事ですわ」
「いや意味わかんねぇんだけど」
「貴方、何で何時も何時も一人で突っ走りますの」
泣きながら睨まれてもな。
まぁ泣かせているのは俺なんだけど。
「大体…」
「ちょっと黙れ」
これ以上騒がれるわけには行かないと思い口を塞いだ。
「この変態!」
「お前が騒ぐからだ」
「乙女の唇を!」
普段から気が強いニナだったがやっぱり初めてだったか?
「この女の敵」
「解ったから怒るな、鳴くなって…」
「遊び人!」
余計騒がしくなったが一応は泣き止んだ。
まぁ余計に怒っているが。
「もう泣くなよ」
「泣いてません」
「俺はベッド以外で女を泣かせる趣味はない。俺はお前を泣かせたいわけじゃない。死にたいわけでもない」
「だったら…」
それでも俺はこの道を選ぶ。
「俺の望む未来の為だ。お前も俺の事なんか忘れてしまえよ」
そうだ。
俺はシオンを守る。
俺が望んだ未来を作る為にも。
だから俺はその道を真っすぐに進んで行きたいのだから。
「そんなの…納得できるわけないでしょう!」
去ろうとする俺の手を掴み瞳から大粒の雫を零していた。
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