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閑話2ある男の思惑
しおりを挟むここまで簡単に作戦に乗ってくれるとは思わなかった。
サンドラ・ヴィッツ。
あの女の噂は以前から知っていた。
思慮の欠片もなく身の程を弁えない女。
本当に馬鹿な女だ。
少し甘い言葉で囁けば簡単に騙される。
自分が一番偉いと思うとは、ここまで愚かだと露骨だな。
美しさなど社交界で生きていくうえでそこまで重要ではない。
既に唯一の長所である美しさも失ってるのに自分はあの時と変わらないままだと思っているのが滑稽で笑えた。
だが、これでいい。
「手札は揃った」
あの薬を渡してそれとなく危険性を伝えたが、あの女は自分の欲望に忠実だ。
己の欲望の為に薬を利用するだろう。
シオン・アスハルトの身が滅んでもお構いなしだ。
あの女は寄生虫だ。
悪女と言う名ならばあの女が相応しい。
自分の為ならば他人がどうなるとどうでもいい。
いや、自分の幸せこそがすべてだと勘違いしている大馬鹿だ。
「だが、これで巻き返せる」
私は貴族派の中でも過激派だった。
別に王家が憎いわけではない、貴族派のためだというつもりはないし民も国も貴族もどうでもいい。
だが貴族派の高位貴族のほとんどが力を亡くした今、私に野望が芽生えた。
邪魔な連中はほとんどいない。
要るとしたら王族と王族派の貴族だ。
しかし、公のあの若造が立太子したのは計算違いだったが、欲のない男だ。
どうとでもできる。
ただし、簡単に洗脳は難しいからこそ、禁断となっているあの薬を入手した。
薔薇の契約の効果などおとぎ話だ。
男の体とはとても単純なものだ。
あんな魅力の欠片もないハズレ姫に男を満足させられるはずがない。
あの薬で枷を外せば溺れるだろう。
そして男を喜ばせる事も出来ないハズレ姫は捨てられる。
そう、その時が来た時。
私がすべてを手に入れる。
あの馬鹿な女は甘い言葉を囁けば騙される程度の女。
富も権力も失った名ばかりのヴィッツ家等恐れる必要もないのだから。
私がこの国を乗っ取ってやる。
「そうだ。もう邪魔な連中はいないのだから」
影でひっそり微笑みながら私はワイングラスを傾けながらいずれ来る栄光の時を夢見ていた。
もうすぐ手に入る。
その為にもあの若造のご機嫌取りをしておく必要がある。
同時に邪魔な番犬も始末しなくてはな。
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