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145誘惑と罠~サンドラside③
しおりを挟むシオンの唇に触れようとした時だった。
「えっ?」
強い電撃が私を襲った。
「きゃああ!」
まるでシオンに触れるのを阻むようだった。
強い電撃と同時に部屋に置かれている植木鉢からツルが伸びて私の体を拘束する。
「痛い!何…」
ツルには棘があって肌に刺さる。
「茶番はここまでだ」
「何を言って…」
「本当に堕ちる所まで堕ちたか」
どうしてシオンは…
私の魅力に堕ちたはずじゃ。
「強い麻薬だろうと、媚薬だろうと私には意味がない」
「えっ…」
「薔薇の儀式をした者は、契りを交わした者以外とは通じ合う事はない。肉体関係を持つなど論外だ…」
「そんなの!」
だってあれはただの迷信なはず。
「馬鹿だと思ったがここまで馬鹿だとは。だが、おかげでお前永遠に牢屋にぶち込む物証を手に入れた」
「え?」
「性的暴行未遂現行犯として貴様を逮捕する」
「チャールズ!」
何でここに騎士団がいるのよ!
この部屋には鍵をかけて誰も入れないように…
「既にエスカルダは逮捕されている」
「は?」
「お前が違法的な薬を使った事は解っている。尚且つ王太子殿下を部屋に連れ込む麻薬を飲ませようとした事も。映像と写真だ」
「そんな!」
床に叩きつけられたのは私がシオンに襲っているかのようだった。
「証拠をつきつけて貴様を重罪人にして極刑にしてくれるわ」
「そんな…私は」
「今さら泣いても無駄だ。既にお前を助けてくれる人はいない。お前は罪人だ」
どうして…
計画は完璧だったはずなのにどうしてよ!
「お前は最初から利用されていたんだ」
「あっ…がっ…」
痛みで声が出せない。
出た声は私の声とは思えないほどの声だ。
「親切心で教えてやろう」
チャールズが私を見下しながら冷たく言い放つ。
「お前は真面にしゃべれなくなるだろう…既に蛙の鳴き声のようだ」
なんで喋れないの?
さっきから酷い声だった。
焼けるように喉が痛くて声を出せなかった。
私の美しい声が…ふと鏡に映る私の姿を見ると。
声にならな悲鳴を上げてしまった。
「あの薬は猛毒だ。原液を飲めば髪は色が抜けるだけで済まない」
私の髪が…
床に落ちている白髪は私の髪だと言うの?
そんなの…
信じられない!
「老化現象が進んで行くだろう…お前の体は既に90歳の老婆同然だ」
「がぁ‥あがぁ!」
「声も出せない、体を起こす事もできない。お前の持つ先は地獄だ」
そんな…
嫌よ。
こんな醜い化け物のような姿で生きて行くなんて。
死んだ方がマシじゃない!
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