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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛
41義務と責任の重さ
異例のランク上げで好奇の視線に晒されるディアナは精神的に疲れていた。
幸いにもディアナのクラスは憧憬の眼差しはあれど邪推する者が極端に少ないことだ。
一般科と異なり特別科の生徒は一クラス二十人の少数なのだから。
特別科の校舎内にいる分は問題なかったが一般科の校舎に出向くこともあるのでその時の視線が悪意に満ちた視線が多いのだ。
特に女子生徒の。
「男子生徒は明らかに取り入る視線。女子は嫉妬と軽蔑の視線だものね」
「淑女科のいた時は恥だと散々言われたのに」
少し前までは功績を残せないうだつがあがらないことを責められたのに逆の立場になっても責められる状況に胃が痛くなる。
「私にどうしろと」
「そんな連中を気にしていたらこの先どうするんだ」
「工房に引きこもりたいです」
社交界では嫉妬と悪意の塊、魔の巣窟だ。
常に好意と悪意を向けられる場で生きなくてはならい。
「お前が国でも数少ない錬金術士であることは変わらない。ハイエナの餌食になるのは確実だ」
「そんなぁー…」
シリルの言葉は正論だった。
周りは言葉を濁そうとするが、事実なのだから。
ディアナの周りは基本過保護な連中が多すぎるからこそシリルがはっきりと告げた。
「お前の才能を利用する人間はこれから増える。お前の作った物を利用されるだろう」
「シリル様!」
「お前の預かり知らぬところで人殺しの道具にもされるだろう。だからこそお前が自身で選ぶ必要がある」
世に便利な魔道具や武器を広めた者は達は作った後のことは責任を持たない者が多かった。
過去にはポーションに関して、作った後の責任まで追っていたらキリがないと責任を放棄したのだから。
その所為で不幸な事故が相次いで責任を後になって追及され罪に問われてしまうのだから。
「お前が技術を提供する者を見極めろ。関わりたくないなんて言葉は逃げだ」
シリルの言葉は厳しくも正論だった。
世に新た技術を出すならば責任を持てなければならない。
「お前が選ばれて錬金術士の資格を有したのなら、その責任を果たせ」
「はい…」
捨てられた子犬が主人に許しを請うような姿に一同は頭を抱える。
「もはやご主人様と飼い犬よね」
「言うなユーリ。俺もそう思ったが」
「完全にママですよ。副会長」
普段からディアナをしかりつけて教育する役目に徹底している。
もはや子供を厳しく今日くする母親以外の何物でもなかったのだが、若い男女のやり取りとしてはどうなのかと思ってしまう。
「とりあえず甘い言葉を言う連中は相手にするな。しつこいなら生徒会を通すように言え」
「えっ…」
「いいか。媚びを売る男と二人きりになるな…噂を利用して囲い込まれる」
「囲い込まれ…」
ぞっとするディアナはそんなことまで想定していなかった。
「お前も噂の恐ろしさは身に染みているだろう」
「はい」
噂一つで人の人生を変えることができることを嫌というほど知っている。
ディアナ自身が偽りの噂でどれだけ酷い目に合ったか思い出したくもないのだから。
「一般科には極力一人になるな」
「え?」
「今ではお前は嫉妬の対象だ」
シリルの脳内にはカミエル言葉があった。
ファティマが接触する可能性があると警告を受けたがそれだけでは済まないだろう。
(シャンデラ伯爵家が動きを見せるのも時間の問題だ)
ディアナの評価は現在社交界でもうなぎ登りだった。
こうなると社交界で落ち目なシャンデラ伯爵家がディアナを利用するのは目に見えている。
(この警戒心がない娘をどう守るか…)
異例のランク上げにより一般科からの嫉妬。
そしてその功績を利用しようと近づく貴族や家族からディアナをどう守るか。
自分でも何故こんなに必死になっているのか分からない。
(いや、後輩を守るのは先輩としての義務だ!)
自分に言い聞かせながら納得させようとするシリルは分からない感情を消そうとした。
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