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第2章小さな奇跡が生んだ真実の愛
51策に溺れるファティマ
こんなはずではなかった。
シナリオに描いた通りに行かなかったファティマは眉を顰めた。
明らかに部が悪いのはファティマの方だった。
人通りは少ないとはいえ、男装の麗人と謡われるセフィーナの容姿はかなり目立つ。
特に一般科、特別科関係なく女子生徒に好意を向けられるセフィーナが立っていれば視線は自然と集中するので人だかりが出て来た。
「何事ですの?」
「魔物討伐がどうとか」
話を小耳に挟んだ生徒達が何事かと集まってくる。
ファティマのシナリオではディアナが醜態を晒し、窘めるというものだったが。
「本当に素晴らしい。自ら魔物討伐に志願されるなんて。私から騎士団にも報告しておこう」
「ちょっと!何を勝手な…」
「貴族として国を守る為に尽くされるのであろう?」
(この女!)
笑顔を浮かべながらもはっきりと周りに聞こえるように言うセフィーナにファティマは確信した。
(私を嵌める気なのね!)
最初にディアナを嵌めようとしたのにいざ自分の立場になると怒りを覚える。
そんな考えなどセフィーナにはお見通しだった。
「アンタ…」
「ルーカス先生を戦場に出すべきというならお手本を見せていただきたいものです」
反論させる暇もなくファティマの逃げ道を塞ぎ、あたかもファティマが魔物討伐に志願しているという雰囲気に持っていき、他の生徒を証人にしようとしている。
「まぁファティマ様が魔物討伐に志願ですって?」
「え?クラスメイトを暴行しようとなさったのに?」
「ここ最近問題ばかり起こされたあの方が?」
現在ファティマの評価は最低なものだった。
復学した当時にクラスメイトに暴行しようとし、ハイネに怪我を負わせても反省の色が見えずランク落ちをしたが、学園側の対応の悪さを喚き散らし、寮生活でも不満ばかり零す。
学業に対しても真面目に参加しないので成績は下がり続けていた。
そんな中、魔物討伐に志願するとなれば周りの味方は変わってくるのだが、本人はその気はない。
「もしや最近の態度は…」
「わざとですの?魔物討伐の為に精神的に不安定だったとか」
なのに周りは勝手に勘違いを始めだす。
そもそもハイネとの婚約解消問題がある前は授業を真面目に受け成績もそこまで悪くなかった。
身分絶対主義思想はあれど、ファティマのような考えの貴族令嬢の方が多く。
貴族としての誇りを重視していると受け取られていたのだから。
王子妃になるべく誇り高くあろうとしたと言うのあればそこまで非難されるものではない。
――なのだが。
ここでファティマが魔物討伐への参加を否定すれば状況は変わる。
ディアナへの嫌がらせで進言したとなれば、残ったファティマの僅かな評価はがた落ちになる。
己の保身だけを考え、ルーカスを死地に追いやる行為は悪女の所業でしかないのだから。
(どうしてこうなるのよ!)
ここで断るなんてできない。
誰か止めに入ってくれることを願いながら視線を向けるも誰もが拍手を送りそうな表情だ。
(誰か!)
この場で止めてくれる生徒はいない。
そんな中、ファティマが見つけたのは――。
「何だ?」
「またお前か」
ハイネとシリルだった。
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