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第一章
21.父の背中~ロミオside
視察に同行して王都を離れて二週間。
予定よりも長引いてしまったが明日には我が家に帰る事になった。
ようやく帰れる。
「嬉しそうだねロミオ」
「え…そのような」
「そうか、そんなに恋しかったか」
揶揄うような父さんに俺は直ぐに否定した。
「エリーゼの事では…」
「私はエリーゼ嬢とは言ってないぞ?」
「くっ…」
やられた。
解ってて言ったのか!
「お前は幼い頃から真面目で聡明だったからな。その分感情を表に出さなかった…いや、出せなかったのだろうな。サブリナやシルビアの事もあって」
「俺は…」
「私の責任でもある。もっとうまく立ち回れば良かったのだが」
父さんは十分に上手くやっている。
できる事と、できない事の限界を図りながらも。
「だが、エリーゼ嬢といる時のお前は年相応だ。だからこそ私は喜んだのだが…あのような痛ましい事件が起きるとは」
「父さん、本当に偶然なんでしょうか」
馬に蹴られたのが偶然とは思えない。
「ロベルト殿下の馬は全て管理されている。暴れ馬がいたとしても野放しにすることはありえない」
「はい、何より危険な馬がいる場所に婚約者を連れて行くとは思えません」
こう言いたくないが、ロベルトはエリーゼを好いていた。
友情以上の思いを抱き、社交界で冷遇されていた事を怒っているのを知っている。
普段はチャランポランだが、やる時はやる男だ。
何より一度懐に入れた者は守る覚悟を持っているし、エリーゼを大切に思っていたのは嫌でも知っている。
ずっと見ていたのだから。
「ロベルトはエリーゼを愛していたはずです」
「ロミオ」
「それを俺は奪いました」
罪悪感がないわけではない。
それでも友人から、王子から婚約者を奪ったのだ。
「ロベルト殿下はお前を一度だって責めたか?」
「いいえ…」
「ならばそれが答えだ。ロベルト殿下はエリーゼ嬢を大切に思っていた、そしてお前も」
情が深い男だった。
誰よりも弟思いで、少し行き過ぎな所はあるが優しかった。
「ロベルト殿下に悪いと思うならば、エリーゼ嬢を愛する事だ。大切にすることだ」
「幸せにしろとは言わないのですか?」
「傲慢だろう?幸せも不幸も決めるのはエリーゼ嬢だ。お前が決める事じゃない」
こういう時、本当に勝てないと思う。
父さんにはまだまだ遠く及ばないけど、俺にとって尊敬する父で目標だった。
「まぁ、私も略奪婚だったから悩んだが」
「父さん…」
「王族との婚約が決まっていたサブリナを降嫁させたも同然だったからな」
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俺もできるだろうか。
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