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第一章
37.退場する侍女
しおりを挟む「何故!どうして!」
ベッキーは床にしゃがみ込んだ。
絶望した表情で、未だに現実を受け入れられない表情だった。
「少し前から君に疑いを持っていた。情けない話だが、妻が病気になり私も精神的に弱っていたと思ったが」
「こちらの薬は人の判断力を鈍らせ、心を弱らせる効果があります。この粉は芳香剤から出て来たのですよ」
「セバスチャン!」
まさかそんな物まで使っていたとは思わなかった。
邸全体を見直した方が良いと言ったし、やたらと嫌な香りが漂っていた気がしたけど。
「どうして…何故なのユアン様!私は貴方を愛しているのに!」
「愛だと?君の愛は何処までも身勝手だ。自分への愛しかないじゃないか…相手を思いやれなくて何が愛だ」
「違うわ。私は貴方の為に…」
「私は望んでサブリナと一緒になった。サブリナと結婚する為に恥も外聞も捨てて死ぬ気で宰相に上り詰めたんだ!サブリナは私の宝だ」
「社交界では未だに私達を良く思ない人は多いでしょう。ですが私達は思いあって結婚しました」
社交界では噂をでっちあげたり、偽りを真実であるように仕立て上げることが多いから信憑性がない。
でも二人は本当に思いあって結婚したのは事実だ。
「幼い頃から、孤独だったシルビアを救い、周りとも距離を置いているロミオを救い、そして死を待つしかない妻を救ってくれたエリーゼを侮辱し傷つける行為は許されない」
「ましてや、トリアノン公爵閣下が最も重宝する御長女を侮辱する等許されません!」
「えっ…重宝って」
いや、私も初耳なんだけど!
私は公爵家ではお荷物だと思っていたんだけど。
「社交界では悪意のある者が噂を流しているが、逆だ。公爵閣下はエリーゼを誰よりも愛し、期待しているからこそ幼少期から国外の視察に同行させ、沢山の事を学ばせていた」
「一般の貴族令嬢としてではなく領地代行や、外交手段を学んで欲しいと思ったのでしょう。嫡男のハイネ様は幼いので補佐が必要ですもの」
まさかお父様がやたらと私を国外の視察に同行させると思ったけど、そんな意味合いを持っていたなんて。
「そんなの…ありえない」
「君の物差しですべてを図るんじゃない。エリーゼは素晴らしい令嬢だ。一般的な評価がなんだ!ロベルト殿下を始め王家の方々はエリーゼを認めている」
「そっ…そんな」
既に失神しているベッキーは朦朧とした表情をしながらも警備隊が邸に現れ連行されてしまった。
「エリーゼ、本当に申し訳ない」
「今回の事も、伯爵家の問題を貴女が解決しようとしてくれていたなんて…本当になんと謝れば」
「そんな、私が勝手にしただけで!」
ユアン様とサブリナ様に頭を下げられるも、全部私の自己満足だ。
なのにここまで言われると居た堪れない気持ちになった。
でも、ベッキーがいなくなって安心したと思いきや。
これがきっかけで私は余計にスチュアート家の株が更に上がってしまうことになるのだった。
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