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第二章
20.正反対の悪役令嬢
エカテリーナ様は社交界でも有名な令嬢だった。
王族の従妹に当たり、教養も高く、魔力も強いことながら非の打ち所がない。
常に周りに友人に囲まれ、友達も少ない私とは月とスッポン。
社交界では太陽と月の令嬢と呼ばれる程だ。
太陽のように光り輝き誰からも慕われるのがエカテリーナ様で、陰に隠れ、頼りない月のような陰気な令嬢と呼ばれていた。
ゲーム上では今ほど酷くないけど、優劣の差はあって、エカテリーナは本物令嬢だった。
王子妃に相応しく、ヒロインにも堂々とした振る舞いをして。
苛めをする生徒にも注意をして、教師からの信頼も厚く、常に自信に満ち溢れていた。
でもその一方で、常に気を張っているようにも見えた。
私は、エカテリーナ様を嫌ってない。
むしろ尊敬をしているし、素晴らしい人だと思っていた。
あの人は自分にも他人に厳しいけど、同時に誰よりも高位貴族令嬢の手本になるべく務めていた。
あれは私が八歳の頃だ。
社交界のパーティーで何時ものように壁の花になっていた頃だ。
周りはマリアンヌと私を比べて陰口を言っていた。
「何故貴女のような方が、今夜のパーティーに」
「いくら公爵家の娘でも、本当に恥知らずね」
五歳で洗礼を受け、緑属性という魔力しかなく。
四大精霊の加護もなければ、必要のない属性を持った私を蔑み、公爵家の恥さらしだと馬鹿にする高位令嬢達に、責められていた。
「これでは我が国の公爵家に泥を塗るような物…」
一人の令嬢が私に扇を付きつけようとした時だった。
「泥を塗るとはどういうことですの?」
「「「エカテリーナ様!」」」
幼くも凛とした声だった。
「随分な言いぐさですわね?我が国の公爵家はたった一人の令嬢で左右されると…王族筆頭公爵家である我が一族を侮辱する事は許されませんわよ」
「いいえ…そのような!」
「私達は、王族派として…」
「ならば、そのような行動はお控えなさい。王族派貴族である誇りのない行動を慎むべきです。いいですわね?」
「はっ…はい」
人睨みするだけで、令嬢達を怯ませるだけの貫禄を既に持っていた。
令嬢は怯えながらすぐにその場を離れるも。
「彼女達の言葉には一理ありますわよ」
「はい?」
「貴女はあまりにも足りなさ過ぎますわ。戦う覚悟のない者は宮廷で生きて行けませんわ。温室の花が外で生きることができないのと同じ…毒花の前では貴女は弱すぎる。良くお考えなさい」
私にも厳しい言葉を投げかけ去って行った。
その言葉は私を責めるだけの言葉ではなかったと思った。
それからも時折視線が合うことはあった。
私から声をかける事は許されないけど、あの方は私に注意等はしても貶すような真似はしなかった。
強く、美しいあの方を私は憧れの目で見ていた。
決して敵対心を持っているわけじゃない。
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