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第四章
13.止む無く~ジリアンside
入学式に参加して、私はますますあの子を入学させたことを後悔した。
「ジリアン、これ以上ストレスを溜めるのは体に毒だ」
「ですが、旦那様。あの子を入学させる以外の方法がなかったのか」
「他国の魔法学園からも断られた以上は無理だろう。魔法がない国ではマリアンヌの魔力は危険だしね。国の法律だ…平民ならまだしも」
国王陛下の心遣いもあり、マリアンヌを学園に入れる許可を頂いたが、正直私からすれば更なる悩みが増えただけだった。
とは言え陛下の命令に背くわけにもいかない。
挙句の果てに謹慎処分を言い渡したイズラを使用人として同行させよと言って来たのが厄介な人物であった。
ランはエリーゼが気に入り、旦那様が清の国から直々に頼んで我が公爵家に迎え入れた侍女。
元は下級貴族でもあったから国を挟んで許可を貰った。
信頼のおける上司に、両親も貧しいながらも良き人柄だと聞かされている。
実際、侍女として雇う一か月前に私は国へ出向き挨拶に行きご両親の人となりを知ったうえで娘の傍付き侍女を任せたぐらいに素晴らしい方達だった。
対するマリアンヌの侍女は、王家の推薦により派遣されたのだ。
何処のお邸も、高位貴族の侍女となる者は王宮勤めをした者が推薦状を貰える。
そして各邸に採用される。
我が家の場合もそうなのだけど、イズラを是非にと言った者は貴族派の貴族だった。
無下に断るわけも行かないし、優秀だとは聞かされていたが。
イズラは自尊心が強く貴族絶対主義の考えを持ち、辺境貴族を軽視する考えが強かった。
それを抜いても優秀であるが、私が見ていない間にエリーゼを虐げていたなんて知らなかったし、私の態度の所為でエリーゼは私から疎まれていると勘違いして彼女を増長させてしまった。
謹慎処分をした後に降格しようと思ったのだが、彼女を推薦したサンビエール伯爵家だった。
無視できない派閥で、彼等がイズラは十分反省していると告げ、マリアンヌの思う余り行き過ぎたのだと言われてしまったのだが…。
ここで彼女を解雇すれば後々厄介だったのだが、学園に同行するのは賛同できなかったのだが。
乳母のばあやが間に入ってくれたけど。
「イズラに関しても、今回の事は多めに見るように言われただろう」
「危害を加えたわけじゃないから、処罰を与えるのにも限度がありますわ。だけど…マリアンヌの様子を見るとどうにも」
「まさか、あの場であのような事を言うなんてな」
エリーゼのスピーチを邪魔すかのような言い方。
否定的な事ばかりを言い放ちながらエリーゼを追い落とそうとしているように見えた。
「エリーゼは賛否両論であることは解っているようだ。あげくにマリアンヌの言葉も正論だと思い、真摯に受け止め誠実な答えを出した」
「ええ、だけどマリアンヌは」
エリーゼとは反対にマリアンヌはエリーゼの否定するだけ。
ただ気に入らないからあの場を借りてエリーゼの評価を下げようとしているように見えたわ。
これ以上失望させないで欲しいのに、知ろうとすればするほどマリアンヌの歪んだ性格が見えてしまうようだった。
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