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第四章
40.恋ではなく愛
困った表情で私の頭を撫でるロミオ様。
精神年齢は私の方がずっと上のはずなのに、ずっと大人だった。
多く口に出して語らないけど、言葉に出さないだけでちゃんと通じていた。
私が壁にぶち当たる時。
何かに悩んでいた時もただ何も言わずに傍にいて、何かしたいと思った時は影ながらサポートを実行してくれた。
私がどんな無茶をしても。
ぶっ飛んでいる行動をしてもロミオ様は最後まで付き合ってくれた。
そういう人だった。
友人や身内にはあまりにも優しく寛大すぎる人だった。
「君が嘆いている問題は、余りも多きい…だからこそ、短時間で解決はできない」
「はい…」
前世の常識とこの世界の常識を同じにすることが間違いなのは解っている。
貴族が税を払わないのが当然だった世の中にいきなり言っても無理だし、順序という物がある。
解っている…。
「時間がすごくかかる。父の代ではなす事が出来なかった。だが俺達の代、そして俺達の後を引き継ぐ子供達にも伝えればいい。俺達は土台を作るんだ」
「子供達の代…」
「大きな改革は時間がかかる。後五十年、いや、百年ぐらいした時に、政治は変わるだろう」
「百年…」
「それだけの年月が必要なんだ」
政治を変えると言うのは大変で長い月日を費やさなくてはならない。
それ程の長い時間がかかるんだ。
「だが、子々孫々と俺達の願いを引き継いでもらえるように変えて行けばいい、最初は税を安くして、貴族から別の形で民に援助させるんだ。それだけでも変わるはずだ…貴族しか通えない高等教育も平民が受けられるようにしたらいい。教育の場を広げて、誰もが平等に学べる場を持つべきなんだ」
ロミオ様は私よりもずっと深い所で考えていた。
宰相を父に持つからこそ、下町や貧民街で暮らす子供達の状況を嘆いていたのかもしれない。
「髪の色、目の色…魔力がないから差別される。逆に魔力が強いから恐れられることがない様に国の法律を見直せるように働きかけるのも時間かかる。だが俺は必ず変えて見せる…だから信じて欲しい」
「ロミオ様」
「俺は今まで君に嘘をついたことはあったか?」
私は首を横に振った。
ロミオ様は私に一度だって嘘をつかなかった。
「俺は君に嘘は言わない。これまでずっと君に偽りを口にしたことはないし。この先も君には誠実でありたいと思う」
不器用ながらもロミオ様の誠実な思いだった。
泣きたくなるほど嬉しかった。
この人は優し過ぎる。
真っすぐすぎる。
「だから俺を信じてくれ」
そんなロミオ様が好きだった。
友人としてではなく。
私はこの時改めて思い知った。
幼い頃から私を助け支えてくれていたロミオ様の思いは。
恋ではなかった。
幸せになって欲しい。
その思いは愛であり、一切の見返りはなかったのだから。
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