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第五章
36.義理と人情~春麗side
お祖父様の命により私はエリシオン王国に留学することになった。
表向き理由は留学であるが実際は違う。
「春麗よ。そなたはこの国留まり巫女姫様をお守りせよ」
「お祖父様…それは」
「詳しい事情はある程度はロミオ殿から聞いたが、実の妹に命を狙われるなどなんと不憫な事よ。何より龍神様のお使い様に万一の事があってはならぬ」
我が一族は、龍神様に仕える者。
そして龍神様のお使いとなる方を支え守るのが役目でもある。
「本来なら大切にされ、家臣に礼を尽くされて当然の姫をなんと無礼千万な事よ」
「姫巫女様でなくとも公爵令嬢であるならばありえない事なのですが」
私も事情を聞かされた時はないと思ったわ。
魔力至上主義な考えだとしても王族の親族に当たる令嬢に対して無礼過ぎるわ。
聞けばエリーゼ様は公爵家の長女であり、これまで多くの功績を残したのに王は評価しようとしていない。
「本来ならば馬鹿王に訴えてやりたいものだ」
「私情がたっぷりですわね」
「お前もそうではないか」
珍しくお祖母様も同意している。
それだけエリーゼ様を気に入っておられるのかしら。
「姫巫女関係なくあの方は実のある方です。そして物事の道理を理解し本質を見抜くことができる方です」
「例え巫女の資格があろうとも、成長する中で資格を失う事もある」
二人の言う通り、過去に聖女の資格を持った乙女が堕ちてしまった事は少なくない。
幼い頃は純粋でも時間が過ぎれば変わってしまう。
だけどエリーゼ様は公爵令嬢でありながら周りから酷い仕打ちを受けながらも心を汚すことはなかった。
「本当に罰当たりな連中が…エリーゼが優しい事を良い事に」
「ですから、学園でもエリーゼ様を傷つける者は外交問題にならない程度に痛めつけなさい。ええ、国同士の問題にならない方法なら許しますわ」
二人共相当怒っているわね。
巫女の資格がなくてもエリーゼ様を庇う気でいたのでしょうね。
特にお祖父様。
でも、気持ちは解るわ。
清の国を馬鹿にしているこの国の貴族とは違い、最初から裸の付き合いをしてくれたエリーゼ様は、お祖父様の正体を知っても接し方は変えなかった。
元から気にしない性格なのでしょう。
もし私が知らずに出会っていたら同じだったかもしれない。
我ら一族は敵に容赦はしないけど、一度でも恩を受ければ忘れない。
義理と人情が強い一族なのだから。
「何処の世界に自分の利益無しに手を差し出してくれる貴族がいるか。それも見下している国に手を差し伸べてくれるか」
「何も解ってないのはあの愚王ですわね」
「良いな、エリーゼを守るのだ」
姫巫女だからではない。
エリーゼ様だからこそお祖父様は私に命じたのだ。
そして私もあの方が好きだわ。
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