246 / 311
第五章
45.乱入~エカテリーナside
最悪の状況だわ。
皇女殿下が何故か私達に対して不機嫌さを隠す事もなく、空気が悪い中で。
「エリーゼ様…」
「皆さんお揃いで。そうだ。先ほど収穫したトマトがあるんですけどどうですか?」
お願いですから空気を読んでください。
作業服に麦わら帽子等を着て貴女は何をしているのです?
また勝手に畑を広げましたのね。
「エカテリーナ、落ち着くんだ」
「えっ…ええ」
そう思った私でしたが。
「春麗様。おひとつどうですか?美味しいですよ」
「エリーゼ様ぁ!」
何普通に進めているんですか。
「うむ、美味いな」
「リオネル様、制服を汚さないように召し上がってくださいね?トマトは汚れが落ちにくいので」
「それなら私が洗ってあげますから任せてください。洗濯は得意です」
だから腕に力を入れて何をしているのです。
「お洗濯をされるのですか」
「ああ!違うのです…春麗様!エリーゼ様は幼少期から領地経営を学ぶ為に平民の暮らしに触れるべく、平民と同じ暮らしをしてまして」
まずいわ。
他国にまでエリーゼ様の悪評が広がるわ。
なんとかしなくては!
「素晴らしいですわ」
「は?」
私の不安とは反対に何故か目を輝かせている。
「幼少期から民の暮らしを疑似体験されるなんて立派ですわ。我が帝国でも皇族は成人するまで外の世界で訓練を受けますの。ですが恩自らそのような事を…なんて立派なのでしょう」
「実に、物わかりの良い方だな」
「ロナウド様、これは物わかりが良いと言っていいのでしょうか」
かなりぶっ飛んでいますね。
女性ながら、国を豊かにしようと自ら率先して動かれている方故かもしれません。
国を豊かにするべく作物や特産物を自身の手で作るのは簡単ではありませんから、食料が不足している国では評価されているそうです。
「それにこのトマトは随分と大きいですね」
「無農薬栽培ですから、美味しいですよ。安全ですし」
「では…」
「えっ?春麗様!」
普通に袖で拭いて食べている!
「まぁ、なんて甘いのかしら」
「私が十年間研究に研究を重ねてフルーツトマトを栽培したんです。美肌効果も抜群ですよ」
「ええ…すごく美味しいですわ」
これは、どういう事かしら。
「喜んでますね」
「ええ、お菓子に全く手を付けてませんでしたが」
もしかしてお菓子よりも野菜の方が好みだったのかしら?
私達が出したお菓子には用心していたけれど、エリーゼ様が差し出した野菜は疑いもなく食べていたのは何故?
「エリーゼはトマトを差し出す時に先に食べている。毒がない事を配慮してだろう」
「え?」
「お茶会のお菓子には配慮が足りなかったな。こういう時は解毒剤になるお菓子やお茶も一緒にすべきだ。そうしていれば相手は安心して食べるし、配慮してくれていると思うんだ」
ロミオ様の言葉に私は唖然とした。
フォーク等は銀のものを使用しているし、カップだって配慮したのに。
盲点でしたわ。
春麗様は最初からそれを指摘しようとしていた?
「あの方は、俺達が思うよりも聡明な方だ。お前に厳し事を言ったのはエリーゼを低く評価している貴族代表故にだろう」
私は自分の過ちを理解したのだけど。
「春麗様、良かったら今からトマトの収穫に行きませんか」
「いいですわね!」
だけど!
彼女はもしかしたらエリーゼ様と似通った感性を持ちなのではないかと不安を抱いてしまった。
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!