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第一章婚約破棄と白のグリモワール
18監督生
しおりを挟む魔牛が大人しくなったことで他の魔獣も大人しくなった。
その理由は、メアリが大人しくさせた魔牛がボスだったからだ。
群れで生息する魔獣にとって親玉が礼を尽くせば、他の同種族も従うのだった。
「まさか、このような…」
「すごい」
生徒達は一瞬にして魔牛を従わせたメアリに一目置く。
上級者のテイマーですらできない事をあっさりとやってのけ、しかも治癒魔法で魔牛達の傷を癒す懐の大きさに尊敬の念を抱く下級生も少なくない。
「あれ程の治癒魔法を使われる方は見たことないぞ」
「それに、襲われそうになった子供を率先して救うなんて…なんて勇敢なのだろう」
学園に使える騎士も拍手を送る中、二人の上級生がメアリに声をかける。
「この度は混乱を止めてくれたことを感謝する」
「監督生代表として心からお礼を申し上げます。ありがとうございます」
生徒会の交渉をつけ、特待生の制服を着る二人が深く頭を下げる事で生徒達は声を上げる。
「嘘だろ!特待生で監督生代表のお二人が頭を下げたぞ」
「前代未聞だぞ!」
学園内では身分は意味がない。
ただし、星を集めることで地位を得ることができる。
それが特待生の中でも監督生と呼ばれる、生徒を指導する立場の生徒を言うのだ。
そのトップである二人に直接声をかけられるだけでも誉れだが、感謝されることは名誉だった。
しかも頭を下げられているのだ。
「私はシンディア・フォルスターと申します」
「ソーマ・トリヴィスだ」
格差社会が学園でもあるにもかかわらず二人は友好的だった。
「メアリ・バルセルクでございます」
「えっ…貴女が!」
「そうか…君が」
二人は一瞬目を見開かせながら驚きながらも、納得した表情をする。
「今後とも貴女の活躍を期待しております」
「君の道筋が明るい事を心から願う」
「ありがとうございます」
二人は多くの言葉を交わさず去って行くが、周りの生徒には影響を与えた。
この日を境にメアリの環境は変化する。
この混乱を鎮めた功績に、魔獣を無事に飼育舎に戻りたことでテイマーに感謝をされ、学園側から星を一つ与えられることになった。
星ともう一つ。
「え?生徒会に?」
「今回の行動により、監督生の二人より推薦が来た。適性も十分あると」
「はっ…はぁ」
生徒指導の教師より推薦状を渡され戸惑う。
「君があの親子を助けた事で、大変感謝されてね」
「あの…」
メアリは意図が解らなかった。
学園に見学に来ている親子を助けても学園に何かあるのか。
「その女性は身分を隠して我がが君に視察に来られた方だ」
「どなたとはお聞きすべきではありませんよね」
「賢明な判断だ。それで褒美を取らせるべきと…」
「謹んでお断りさせていただきます」
メアリは即座に断った。
無礼だと言われようとも自分はすべきことをしたのだから受け取る必要はないと判断した。
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