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第二章魔導士の条件
11規格外の力
しおりを挟むフェンリルの群れが大人しくなり去って行く。
「どうなったの」
「メアリ様と殿下は…」
応戦していたリーシアはフェンリル達の敵意が無くなったのに感じながらも、静かすぎるのが不安になる。
「静かすぎる…それに」
「メアリ様の魔力が途絶えたていますわ」
何かあったのかと不安が押し寄せる中、光がこちらに向かって来る。
「ミカエル?」
光と共に現れたのは巨大なフェンリルとぐったりしたメアリを抱きかかえるミカエルだった。
「巨大なフェンリルだ!」
「そんな!」
狼狽える生徒達は声を上げるも。
「静まりなさい!既に敵意はありませんわ」
リーシアは狼狽える生徒を叱咤し静かにさせる。
「おいメアリが何で日干しになってんだ」
「ユリウス、今すぐ殺されたいのですか?」
「おい、グリモワールを向けるな」
ユリウスの失言にリーシアはこれ以上無い程殺意を向ける。
「メアリは無理な魔力を使い続けてしまった…フェンリルはあの呪いにより苦しめられていたようだ」
「何ですって?」
「では私と…」
「ああ」
故意的にフェンリルに呪いかけ、わざと学園を襲わせた者がいる。
その黒幕となるのは誰か判明していないが強い魔力の持ち主と、神にも近しいフェンリルを操ろうとした時点で重罪になる。
「しかし、よく無事だったな」
「ああ、フェンリルの呪いを解くのは普通の魔導士でも不可能だ」
「規格外すぎるだろ…ぶっ!」
ユリウスの顔にグリモワールが落とされる。
「早く運びなさい」
「この不良王女が…」
この二人は犬猿の仲だった。
利害が重ねれば協力はするが基本的にそりが合わなかった。
「良い事?変な事はしないでくださいませ」
「するか!」
文句を言いながらもユリウスはミカエルからメアリを預かろうとするも。
「いや、僕が運ぶよ」
「無理をするな、お前もボロボロだろう」
「僕が運びたいんだ」
「…解った」
普段のミカエルならばユリウスに頼むだろうが、この時のミカエルは自分を責め、メアリを守れなかった事を悔いているように見えた。
「おい、何だ」
「クゥーン」
「は?」
目の前に立ちはだかるフェンリルの群れ。
「ワンワン!」
「「「ワン!」」」
何故かその場を動かないフェンリルは全員ふせをした。
「おい、これって」
ユリウスは嫌な予感がした。
「フェンリルが一斉に頭を下げてますわね」
「メアリ様を主と認めたようですね。フェンリルやドラゴン族の中では自分をまかせた相手を主とする掟があります」
「いや、何だよ!その無茶苦茶な掟は…そもそも戦ってねぇだろ」
「戦う前に負けを認めたのでしょう。我がダークエルフでもありますよ」
ユリウスの突っ込みにも冷静に返すギーゼラだったがはいそうですかと納得できるわけもなく。
「おい馬鹿!なんとかしろ!」
「お止めなさい野蛮人!」
メアリを起こそうとするもリーシアに殴られる始末だった。
結果としてメアリは国の窮地を救っただけでなくフェンリルを従魔にした事で評価は更に鰻登りとなった。
後にメアリは白い聖女様と呼ばれるようになった。
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