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番外編
若き王の事情④
二人でパン作りをした後にミカエルは執務室に戻って行った。
「姫さん」
「団長さん」
「アンタの読みは正しかったな」
壁が動き、そこから出て来たのはハインツだった。
「帝国に密偵を送ったが、アンタの予想は当たっている。あの国は現在疫病だ」
「やつぱり」
ラセンドル帝国は金銭的にも厳しい最中に戦を仕掛けたが、勝利する為にある方法を考えた。
「捕虜を一時的拘束して、その捕虜に菌を入れてから帰国させた…」
「ああ、恐ろしい事を考えるな」
「だけど、敵国に病をふりまくのはリスクが多きすぎる」
「自業自得だ」
敵国に病気を感染させることはできたが、計画を実行した騎士が帰国して、その病が商人や下級貴族に感染した事で、菌が広がった。
人だけではなく家畜も広がり、ラセンドルは皇族も病気になっている。
「姫さんが帝国の様子がおかしいと言ったからな」
「ええ、内々で私に視察して欲しい手紙が頻繁に来ているので、不信に思って」
あの事件以来、ティエルドもラセンドル帝国を監視していた。
しかし三年前から入国するのが難しくなった事で不信に思ったのだ。
「人で無理なら海の生き物を諜報員にすればいい」
「普通は魚をスパイにするなんてアンタ以外考えつかないだろうよ」
「獣姫ですから」
不敵に笑うメアリはかつて馬鹿にされた事を思い出しながらも使える手段は全て使う事にした。
「もう一つお願いがあります」
「人使いが荒い姫さんだな」
「これが終わりましたら休暇を差し上げます」
「ハァー…」
深いため息をつきながらハインツは部屋を出て行き、メアリは書類を握りしめる。
「邪魔させない」
敵国が何かを仕掛ける前にこっちがしかけなくてはならない。
戴冠式が行われる前にすべての問題を片付ける。
「絶対に手は出させない。国もミカエル様の民も…絶対に」
メアリは国を守る為に必死で踏ん張っているミカエルを傷つける存在が許せなかった。
「あの人の誇りを汚させない」
民を犠牲にして国を治めようとする君主はどんな手でも使うだろう。
平和的解決方法を探すミカエルは戦争は最終手段であるが、限界まで避ける。
メアリも無暗な戦は避けたかった。
「優しいだけじゃ守れない。私は聖女でも天使でもないわ」
純粋で優しいだけのメアリはもういなかった。
何かを守るには時には強かにならなくてはならないのだから。
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