21 / 210
20両親の過去
しおりを挟むお母様がカリスタ王国の大公閣下の娘?
そんな話は初耳だった。
だってお母様は中位貴族出身だと聞いている。
「まだ君は幼かったから知らされていなかったんだな」
「母上、私も初耳ですよ」
「ああ、いずれ話す予定だった。お前とリーゼロッテが成人したら」
私が成人したら?
そもそもなぜレオも入っているの?
「奥様、話が飛び過ぎております。まずは最初からご説明すべきではありませんか?」
「そうだったな。まぁ今は簡潔に話そう」
「めんどくさいんですね」
「説明するのが苦手なだけだ」
呆れた表情のレオを見るとこのやり取りは日常的なのだと察した。
「私と君の母上は幼馴染関係でもある。本来なら王族に嫁げる身分であったが、若かりし頃に君の父君と大恋愛をしたのだが…ここで問題が生じる」
「国同士の問題ですか」
「そこは問題ない。あの腰抜けを脅して金を握らせれば…いや失礼」
普通に脅したと言わなかったかしら?
当初から国王陛下は弱腰だったということなのかしら?
「だが、当時シャルロッテとの婚約を望んでいた男はいた。まぁ金目当てだが」
「大体の想像はつく。当時の王家は貧乏だったからな」
あっさりと言ってのけるレオ。
敬意の欠片も感じられなかったけど、余程思うところがあったのかしら。
「どの国も基本馬鹿な政治をする王家は貧乏だ。当時私の同盟に賛同し助けてっ下さったこの国の王妃陛下も王の無能さを嘆いていらしたからな」
今の王妃陛下のことか。
確かにあの方は恐ろしほど有能だったと聞く。
国が傾きかけた時も陰で支えてくださったとか。
「支度金をがっぽりいただき、結婚後も援助したい魂胆が丸見えだ」
「もう少しお言葉を…」
「解りやすく言ったんだ。話を続ける」
「はい」
話が脱線しそうになってしまったが両親はその後結婚をするために一度養子縁組をすることにしたということになる。
となれば養子先との関係だ。
「現在は君の父君が領地経営をしているが、シャルの養父となった方はどの派閥に属しておらず。利用されることもない家柄だ…まぁ、高位貴族の餌食にならないように王妃陛下が脅し…じゃなくて、交渉してくださったのだ」
「もう脅しているんじゃないですか。本当に好きですね」
「無能な男を脅して拷問するのは大好物だ。強い女とはそういうものよ…まぁシャルは聖女様だからな。そんな真似はしなかったが」
「聖女様ですか…」
「ああ、成人したら出家して人々の役に立ちたいと言っていた」
なんとなく想像はつく。
辺境伯爵夫人として領民からは聖女と呼ばれ、優れた医師でもあった。
炊き出しに関しても、心ある貴族に声をかけて貧しい民の為に援助を行い、尚且つ国に利益が出るように奔走していた。
お母様が得る者はなくとも常に人々の為に働いていた。
まるで奉仕活動をするかのように。
「先々代では外の国の戦争が日常的だった。それを目の当たりにしていたんだ」
「だから何ですね」
「ただ高位貴族令嬢がそんなことを考えるのは悪しきことだと馬鹿なことを言う輩は多くてな」
女性には比較的優しいカリスタでも男尊女卑こそが正しいと思う人が少なくなかったといことか。
「だが君の父上はシャルと同じ考えを持っていた。大公閣下は隣国のティメリア王国では今よりも男尊女卑が酷い。だからこそ内側から変える為にと…」
お母様のお父様は柔軟な考え方を持ちだったのね。
同時に愛情深い人。
利益だけを求めて娘を政治の道具にする人は多いのに。
「養子縁組に関しては宰相閣下が動いてくれた…伯爵家以上の家格では争いごとになると言ってな」
「宰相閣下が…」
その当時からお父様と交流があったのね。
幼い頃から私を可愛がってくださったのはそういう理由もあったのかと納得した。
3,360
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
幼馴染が熱を出した? どうせいつもの仮病でしょう?【完結】
小平ニコ
恋愛
「パメラが熱を出したから、今日は約束の場所に行けなくなった。今度埋め合わせするから許してくれ」
ジョセフはそう言って、婚約者である私とのデートをキャンセルした。……いったいこれで、何度目のドタキャンだろう。彼はいつも、体の弱い幼馴染――パメラを優先し、私をないがしろにする。『埋め合わせするから』というのも、口だけだ。
きっと私のことを、適当に謝っておけば何でも許してくれる、甘い女だと思っているのだろう。
いい加減うんざりした私は、ジョセフとの婚約関係を終わらせることにした。パメラは嬉しそうに笑っていたが、ジョセフは大いにショックを受けている。……それはそうでしょうね。私のお父様からの援助がなければ、ジョセフの家は、貴族らしい、ぜいたくな暮らしを続けることはできないのだから。
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる