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21隣国の聖女
しおりを挟む円滑に婚約を進めるためには国同士の利益があると思わせることと、嫁ぐ国に敬意を表すことが重要視される。
特に当時の王族、貴族は自尊心の塊で嫁をもらう側の国よりも上にいたいとか。
すべてを想定して、信頼のおける中位貴族に養子縁組をした後に、お父様と婚約をした。
世間から見れば政略結婚ということにした。
だが実際は違う。
お父様とお母様は恋愛結婚で思い、思われて夫婦になったそうだ。
「まぁ、大公殿を説得するのに二年はかかったらしいが」
「二年…」
「当然だ。どこの世界に可愛い娘を奪われるのだからな。まぁごねたのは私だが」
「母上…」
「何だその目は。私から親友を奪う泥棒猫同然だ」
今時泥棒猫だなんて古い言い回しを使う人がいたのね。
「まぁ、君の両親の恋物語はここで終わるが、問題はそれからだ」
「それから?」
「その二年後、私は国王代行を降りて嫁いだのだ。相手はリーズベルト公爵家だ。勝手知ったる仲でな…幼少期から内助の功で私を支えてくれた男だ」
「内助の功…」
普通は逆に使うんじゃないのかしら?
立場が逆転している気がする。
「夫は今でいう乙男という種類でな。剣を持つのは苦手で芸才があり、刺繍にお菓子作りが好きな男だった」
「それはまぁ…家庭的な方ですね」
別に趣味は色々あるのだし。
人様に迷惑をかけていないなら別にとやかく言うのは間違いだ。
「そうなんだ。だが、男らしくないと馬鹿にされて早々に独立を命じられた後に私の補佐に母が任命したのだが。これがびっくり箱でな…政治に関しては天才的だった」
「まぁ…」
「私の結婚は反対する貴族も多かったが、説得をしてくれたのがシャルだった」
お母様は私が知るよりもずっと立派な方だったのね。
社交界ではあしざまに言われている一方で、慕われていたのだと思うと嬉しくなった。
「だが、幸福な時間は長く無くてな…息子を出産した翌年に夫は他界した」
「えっ…」
「あまりにも早すぎる別れで私はふさぎ込んでしまったが、シャルが子が生まれたら女の子ならば婚約させ、男ならば親友にしようと…私達のようにと」
私は耳を疑った。
そんな話は初耳だわ。
だってそれなら…
「彼女なりの優しさで私を励ます為だったのだろう。ただの口約束だ」
「突拍子のないことをされるのは奥様同様でしたので」
あの穏やかなお母様が想像できない…いやありえるかも。
まだ私が幼い頃、国内で不穏な動きを見せた輩がいて、敵国のスパイの疑いがあった。
その時に、敵国に忍び込んだのがお母様だったと聞く。
大胆不敵な行動で、そのスパイを制圧したとか。
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「イグアナ?」
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アグネスの母君の名前だわ!
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