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65報われた時間
しおりを挟む特別の待遇を受けた私達は隣国に行っても肩身の狭い思いをしないように王妃陛下が根回しをしてくださっていたそうだ。
カリスタ王国の女王陛下をはじめとする王族の皆様は私達の受け入れ態勢を万全にした後に、私とレオが婚約する形でティメリア王国とは敵対関係になることはないそうだ。
ただし、これまでの援助は打ち切ることとなった。
当初はミカエラ様がそこまでするきはなかったのだが、王妃陛下がケジメだ言い切った。
なのだが、そんなことを他の大臣や貴族に言っても不満を零す者が多いだろうと考えたミカエラ様の配慮であの方が悪者になって手紙を送りつけたとか。
これで文句言は言えないし、学園も火の車だろう。
学園の問題に関しては後任のケネオス様が早速問題を抱えていたそうだ。
学園側もすぐに方針を変えることは難しい。
特にこれまで学園側は過度に生徒同士の諍いに介入しないと公言していたのですぐにとはいかない。
でも、大きな問題は起きないだろう。
それに女性の私は警備責任者であることを不満に思っている方は多かった。
その点で言えばケネオス様なら風当たりは私よりもずっとましだから大丈夫だろう。
クラスメイトも私をよく思っていない人が多かったし。
私がいないことで、クラス内の空気も良くなるだろうし学園長以外の先生方は私に対してイラついていたし案外スムーズに事が運ぶわ。
私に良くしてくださった警備の皆さんもきっとケネオス様に協力して一丸となるだろう。
そう思っていた私は後ろ髪を引かれることなく国を出ることができた。
「そろそろ時間だな」
「王妃陛下」
「これから大変だが、しっかりとな」
「はい」
王妃陛下が手を握ってくださった。
「見送りは私と少数の貴族だけだ」
「いいえ、十分です」
窓を開けると私に良くしてくださった子爵夫人や宰相閣下と伯爵夫人もいらっしゃる。
他にもお父様の部下の方が待機している。
「夫は出迎えにでさせない」
「王妃陛下、よろしいのですか?」
レオが訪ねると…
「少しばかり再教育が必要なのでな?それからヒギンズ侯爵家も不参加だ」
バキッと、扇が割れる音が聞こえたけど。
聞かなかったことにしよう。
うん、そうしましょう。
「レグルス殿下、どうか…彼女をお願いします」
「はい」
「長い間本当に申し訳なかった…謝っても時間は戻らない。だが、忘れないでほしい」
「はい…」
「君がいたから沢山の生徒は守られた…無駄なことはひとつもなかったのだと」
この言葉で私は救われた。
私が踏ん張った二年間は決して無駄ではなかったと思えたのだから。
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