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114傲慢な夫人~リオネルside④
しおりを挟む一部では娘を隣国に嫁がせたのは英断だと勘違いする輩が王妃陛下から直々に褒美を賜ったと思っている。
実際にも爵位を上げると言われたけど。
私は断ったのだ。
貴族であることに執着はない。
ただ領民の暮らしを思えばこそだ。
私の悩みに領民は好きにして欲しいと言ってくれた。
騎士団を辞める気はない。
平民になったとしても騎士でありたいと思っている。
だからこそ断ったのだ。
そして同時に私の爵位を下げて欲しいと。
国を根本的な場所から変えたいと仰せだった王妃陛下。
その思いは痛いほどわかる。
だからこそ私は丁重にお断りしたのだ。
「私は既に伯爵の地位しかない。しかも一代限り…そんな私が王妃陛下に直接にお願い事などできるはずがないでしょうに」
「なんて馬鹿なことを…それじゃあ私はただの無駄足。無能で地位もない男に私は…」
あまりのショックに私に対して言いたい放題だな。
「このクソ女、好き放題を」
「だから物騒なものを出すんじゃない」
懐から銃を出そうとするのを止める。
「話はこれで終わりでしょう?では早々にお帰りください。逆賊になりたくありませんから」
「逆賊…?」
「世間では貴女は既に王妃陛下の御心を無視した逆賊扱いです。騎士団団長としてそのような者と深く関わるなど自殺行為です。赤の他人ならば余計に」
「そんな貴方には慈悲の欠片もないのですか!」
今ここで言うか?
散々他人を踏みつけ見捨てて来たのに。
「私も少し厳しくすべきだと部下に苦言を申されましてね」
「なっ!」
「故に親しくもない者には情けをかけるのは止めます。甘さを少し捨てよとアドバイスを下さったのは貴女でしたね?」
これは遠回しに嫌味だ。
弱った夫人に最低だと思うが、散々私を馬鹿にしてリゼがあのようになった時彼女はなんて言ったか。
「所詮私は無能な騎士です。そしてその娘も無能で迷惑な存在なのでしょう?生きている価値もない程に」
「あれは…」
「そんな無能に力を借りなくとも貴女お一人でなんとかできますよ」
最後の言葉は嫌味ではない。
ヒギンズ夫人はこの程度で終わる人ではないだろう。
戦乱の時代に女性でありながら戦場を走り回り男にも一目置かれたのは真実なのだから。
人は常に苦難に立たされる。
だからこそ、危機に立たされればその環境に順応する。
すべての人間ができるわけじゃないが、少なくとも彼女は強い人だ。
それに夫とは離縁していないと言うことは二人の間に絆はあるはずだ。
「お帰りください」
今彼女が頼るべきは私ではないのだから。
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