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第一章
39再会
侍女の仕事は楽だった。
他の侍女に言えば怒られるだろうが、下働きをしていたグレーテルにとっては楽すぎるのだ。
早朝に起きても仕事おはある程度片付いたし。
侍女に迎えられてからは厨房の手伝いをしようものなら。
「頼むから止めてくれ」
「旦那に殺されちまうよ」
等と言われ土下座までされてしまった。
間にコロネが入ったがこれまでのように肉体労働はさせてもらえない。
「せめて水汲みと薪ぐらい」
「そもそも、男の仕事だ!」
知らないうちにあの侍女二人に過重労働を強いられていたのだ。
「つまんない」
こうして一人の時間を持て余していたのだ。
翡翠宮を出て庭園をぶらぶらしていると、珍しい薬草を見つけた。
「まぁ、沢山」
薬草につられて知らない道に入ると小さな離宮。
翡翠宮よりも大きいが正方形の古いが気品のある宮にたどり着く。
「わぁー素敵な宮」
王宮とは異なったつくりをしているがとてもシックな作りで目を奪われる。
「誰じゃ!」
そんな時だった誰かに咎められた。
「申し訳ありません!私…」
「そなた…」
凛とした声にびくつくも声を聞くと。
「あの時の親切な奥様…」
「何故そなたが」
顔を隠している女性はあの日、馬車にも置いて行かれたグレーテルを邸まで送ってくれた貴婦人だった。
「どうしてこちらに?」
「それは妾の台詞じゃ…いや、良い」
「はい?」
「入れ」
いきなりの事で理解できなかった。
「聞こえぬか?そなたは耳も悪いのか」
「いえ…」
「妾が入れとお申しているのだ。早く入らぬか!」
「はい!失礼します!」
咄嗟に返事をしてしまったグレーテルは何だか逆らえなかった。
(鬼姫様のようで逆らえなかった)
前世仕えた主、鬼姫。
顔は美しいが鬼のように恐ろしいと呼ばれた女主人。
声一つで周りを恐れさせ怯えさせたという女傑だった。
グレーテルは別の意味で恐れではなく畏れを抱いた人物でもあった。
「ふわぁー…なんて素敵なのかしら」
「その口を閉じぬか。馬鹿かそなた」
「はい」
「返事をするでないわ」
馬鹿と言われても良い。
この宮にはグレーテルが大好きな物であふれている。
「なんて素敵なのかしら。美術館でもお目にかかれない貴重な品ばかり」
「ほぉ?頭は悪いが目は悪くないか」
「目は良い方です」
「そなた、やはり脳みそが腐っておるのぉ」
さりげなく酷い事を言われているのにも気づかない。
それ程に興奮しているのだろう。
「お茶を」
「はい、かしこまりました」
いつの間にか現れた侍女らしき年配の女性がお茶の用意をするべくその場を後にした。
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