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第一章
95錆びれた港町
あと少しで港に到着する。
なのに嬉しいと感じないグレーテルはここまで薄情な人間だったのかと思ってしまった。
「グレーテル、どうしたんだ」
「私も薄情な女だと」
「何がだ」
十数年も過ごした祖国なのに懐かしさも愛おしさを感じなくなっていた。
幼少期を過ごした領地なら少しの愛着もあっただろうかとも思ったのだが、その時点で愛着はないのかもしれない。
「父が愛した国なのに、祖国なのに」
「それは、アクアシア王国が祖国になっているんじゃないか」
「え?」
アスランの言葉にキョトンとするも、納得がいく。
過ごした時間は短いのに、愛着ができているし、王宮での暮らしだけでなく国自体を愛している。
不便な土地で冬が長い国でありながらも、美しい国だった。
誰もが協力し合って生きて行かなくてはならない環境だったからだ。
「私ったら…どうして今まで」
居心地がよすぎて気づかなかった。
忙しい日々が続く中、充実感もちゃんとあったのだから。
「二人共そろそろ到着する」
「王妃陛下…船旅を堪能されてますね」
ジュース片手にバカンス気分を味わっている王妃の隣には釣り道具を持っているルクシア。
「バカンスに行くんじゃないんですがね」
「何を当たり前の事を言っておるのか…」
ならばその麦わら帽子は何だと突っ込みたかった。
どこからどう見ても旅行気分だった。
「母上、ここがグレーテルの祖国カステア王国ですか」
「そうじゃ緑豊かな国・・・のはずがさびれているな」
以前お忍びで来た時はもう少し人でにぎわっていたのに周りにいるのは高齢の老人や女性が多い。
若い者がほとんどいないのだ。
店もほとんど閉めている状態だった。
何より活気がない。
「寂しい街ですね」
「数か月でここまで酷くなるとは…」
明らかにおかしいと感じる。
グレーテルも同様に思ったのは、人通りが少なくなりすぎていることだ。
「おかしいわ。明らかに人が…国内でも三大港と呼ばれているのに」
実はいうと、グレーテルが国から出る時にこの港を利用したのだ。
その時はもっと活気があったし船の出入りも、市場もあったし何より漁師も大勢いたのに。
「もしそこの者」
「ジュノ様!」
街中では名前で呼ぶか奥様と呼ぶようにしていた。
お忍びで来ているのでアクシア王国の王妃であることは伏せている。
「そこの者、少し話がしたい」
「何だ?アンタ…見かけねぇ顔だな」
漁師らしき老人はきょとんとしていたが王妃は気にもしなかった。
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