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19.真実
しおりを挟む呆然とするルイスだったけど、私も動揺していた。
お母様は何を言っているのだろうか?
ルイスが婚約解消?
どういうこと?
「ストラス令嬢が大胆な事をしでかした事は聞いておる。結婚目前で他の男と婚約を発表して、濡れ衣を着せてそなたを追放に追いやったことは」
何ですって!
あの雌豚はそんなことをしたの!
「何とも恩知らずな親子だ。十年以上そなたは尽くしたというのに…本来ならばそなたをリディアの婚約者にするはずだったが、前ストラス伯爵の願いを知り諦めたのじゃ」
「先代と前ストラス伯爵は王族に貢献した者でしたからな…しかし、その誇りを馬鹿な二人に泥を塗られてしまいましたが」
前フェンネル伯爵は吐き捨てるように告げられた。
恐らくこの場にいる全員が思っている事だろうし、私も許せない。
本当は私が婚約者になるはずだったなんて。
十年間私はずっと耐えて来たのよ?
ルイスを他の女に奪われる苦しみを耐えながらも約束だけを心の支えにして来た。
恋人になれなくても。
夫婦になれなくても。
戦友として盟友として心は繋がっていれますようにと願いを込めた。
けれど、お父様が残された遺言が時折私の決心を揺るがせた。
心を凍らせようとしてもあの言葉が私を苦しめた。
「亡き夫が遺言に残していました。伴侶はリディアを心から慈しめる者を選ぶようにと。力が強くとも良き夫とは限らぬと」
「有難きお言葉にございます。我が孫のルイスは幼少期よりリディア王女をお慕い申しておりましたが、この通り少々内向的過ぎたのです」
「えっ…」
ルイスは私の事を好いてくれていた?
「お祖父様!」
「愚か者めが、惚れた女性の幸せを望んで身を引くなど軟弱な…本当に欲しいならどんな手を使ってでも手を伸ばさぬか。本当にロゼッタに性格まで似てしまったか」
ルイスは私の為に身を引いたと。
では、私の一方通行ではなかったの?
「あのまま領地に留まれば、事を上手く運べなかった…故に勘当した」
「正確には養子縁組ですわ。次期女王の伴侶となるには侯爵家以上の家に養子に入る方が安全ですもの」
じゃあ、ルイスが婚約破棄されることは見越していた?
ロゼッタ様がご存命の時から、ルイスに厳しいと思っていたけれど。
全ては愛情の裏返しだったなんて、本当に解りにくい人。
けれど、それ程にまでルイスを慈しんでいたのね。
お母様もだけど、本当に不器用な方達だわ。
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