【本篇完結】無能だと言われて婚約破棄に追放されましたが、女王陛下に見初められました!

ユウ

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25.緑の手

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フェンネル家は初代国王の時代から薬草を特産としてハーブを大量に生産して国の財源にした一族だった。


その中でも良質な薬草を目利きと薬草を生産する力に特化した薬草師でもあり調合師がいた。

その者は薬師顔負けの知識と緑の手を持っていた。
緑の手は豊穣の神の愛しい子と呼ばれている。

大地の恩恵を受け、すべての恵みの祝福を受ける。
その為、緑の手を持つ人間が愛を持って植物を育ててればその国の土地は潤い豊作になる。

逆に、その人間を傷つけ悲しませたり。
その人間が苦しみを抱きながら命を絶つようなことがあれば大地の神の怒りが降りかかるとも言われている。


サジータはルイスが緑の手を持つ事に早い段階から気づいていた。
緑の手を持つ人間は誰もが愛情深く心優しい性格をしているとも聞いてる。

優しさを持って植物を育て、特に薬草で調合したハーブティーなどは緑の手の者達が癒したいと強く願えば威力は何倍にもなるのだ。


実際、飲んだハーブティーは優しさで溢れていた。
用意されたお菓子も、サジータの体を思いやる物ばかりだったのだから。


なのに、そんなルイスを奴隷のように扱き使い、人として扱うこともなく暴力を振るう愚かな親子は許しがたかった。


子供ができない体ではあるが、サジータはすっかり回復して、元の元気さを取り戻していたのだから。


「姉上!」

「なんじゃ?どうした」

「私、どのような処分も覚悟で進言した気事がございます」


通常、貴族同士の婚約は王の許可がなくてはならない。
婚約解消もまた同様に。


「フェンネル家のルイス殿の事でございますわ」

「何?またか…」

以前にもルイスの事でカレンディスに訴えたのだ。
ルイスの名誉の為に虐待をされていることはあまり大ぴらには言わずにそれとなくマリエルと婚約解消をしてはどうかと告げたが、前ストラス伯爵の願いを無下にできないと言われてしまったのだ。


しかしサジータは諦めが悪かった。


「ルイス殿とマリエル殿は相性があまり良くないようですわね…社交界でも噂が目立ちます。まぁ人間誰しも合わない人間はいますもの」

「だから?」

「しかも、小耳に挟みましたの。マリエル嬢には既に夫に迎える殿方がいるとか…ルイス殿は側室だと言う噂も」

「はぁ?」


実際社交界では、ルイスの立場は危うい物だと噂をされている。
ただし表向かって下世話な事は言わないが、おしゃべり好きな夫人達が面白おかしく噂しているのだ。


「所詮はタダの噂にすぎませんが…マリエル嬢には愛するかたがいるとか…そうなればルイス殿は邪魔者。万一の事があれば命が危ないですわ」

「しかし…そんなことを」


正気の沙汰とは思えない。
傾きかけたストラス家を救ったのはフェンネル家の援助金にルイスの作った薬草が財源だったのだから。

恩を仇で返すと言ってもいいぐらいだ。
特に辺境地の貴族達は義理堅く、辺境伯爵達は恩には恩に報いる者が多い。

その理由は助け合わなくては生きて行くことも困難なのだから。


「万一、彼等がルイス殿を手放すようなことがあれば」

「うむ…」

「婚約者に見放されたとなれば沽券に関わるでしょう。故に彼を我が公爵家に迎えたく思います。勿論母君が良ければですが…私には子がおりません」

「サジータ…」


妻として役目を全うできない事を悔やんでいた。
夫は子供は親族から養子縁組をすればいいと妾を取らなかったせいで、社交界では口さがなく言われていたのだ。


「しかし…」

「王家では緑の手の者は手厚く迎えるのが当然。私はルイス殿に恩がございますし、ロゼッタ様の孫ならば間違いございません」


思い悩むカレンディスであるが、サジータはちょっとした打算もあった。

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