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31.畑だらけ
しおりを挟む今日はやけに暗いと思った。
いつも通りの時間に目を覚ますと、部屋全体が暗いと思って起き上がる。
「今日は曇り?それにしても変だな」
「ピー!ピピー!!」
「んー?モモちゃん?」
枕元で飛び回るモモちゃんにどうしたのかと思った刹那。
「えっ…」
窓を開けると庭が立派な畑になっていた。
「なんだこれ!」
「ピー!」
急いで窓から降りると庭は野菜の畑となっていた。
「ルイス!」
「パパ上、庭が…」
「なんということだ!」
確かに一夜のうちに美しい庭園が野菜の畑で埋め尽くされれば驚くよな?
しかもとてつもなくでかい大樹が立っていたら驚くなという方が無理な話だろう。
「素晴らしい!」
…でもなかった。
パパ上ははしゃいでいた。
使用人はパニック状態だと言うのに。
もしやママ上は?
「今日は涼しいのぉ?ちょうどいい影じゃ」
普通にモーニングコーヒーを飲んでいる!
大物だ。
この夫婦はある意味最強じゃないのか?
「どうしたルイス。そんな所に立っておらず、コーヒーを飲むが良い」
「はぁ・・」
「ピー!」
「モモ、そなたにミルクじゃ」
動じないサジータは昨日にモモちゃんが邸に紛れ込んだ時も通常運転だった。
「ピー!」
「おお、愛い奴め」
一緒に仲良く朝食タイムを取るのはいいけど、侍女長以外は失神しているんだけど。
「それにしてもトマトと珍しい。観賞用にはちと多すぎじゃな」
やっぱり観賞用にしか使わなんだ。
もったないな。
「ママ上」
「何じゃ?」
「朝食に一品、サラダをっ作ってもよろしいですか?」
「良い」
貴族の令息が厨房に入る事は当初使用人に止められたが、王都から離れている領地内ではある程度自由が許された。
普段から自分の事は自分でしているので料理がしたいと言えばサジータは止めなかった。
ただ公の場ではできるだけ避けるように言われていた。
「お待たせしました!」
「ん?これはなんぞ?」
「トマトの中にサラダが入っているな」
丸ごとトマトを使って中をくりぬき新鮮なサラダを入れてドレッシングも入れてみた。
「こちら、どうぞ」
「うむ?実に奇怪であるが赤い器とは珍しい」
「そうだな」
二人は珍しい物が好きなので対抗もなく食べる二人は怖い者知らずだった。
(まぁ、毒は入っていないけど…いいのか?)
王族ならばもっと警戒すべきだと少し心配になるが。
「うっ…」
「これは…」
一口食べてすぐに二人は口元を抑えた。
「二人共!」
「まさか毒が!」
顔色が変わり、侍女達が急いで駆け寄るも。
「「美味い!」」
ズルッとズッコケた。
まるで喜劇のようだったが、心配する側からしたら笑えない。
「なんと瑞々しく美味なのじゃ!」
「ドレッシングもさっぱりして実に良い。王都のドレッシングは少々胃に来るのでな」
そういえば宮廷料理で使われるドレッシングはフレンチドレッシングが主流だった。
後は油を沢山使って見た目華やかなドレッシングだが、高カロリーでお腹にも優しくない。
何より味が濃い。
対する俺が今出したドレッシングオリーブオイルを使った酸味のあるイタリアンドレッシングで玉ねぎを沢山使っているからヘルシーだ。
「こちら、トマトも食べられますので」
「何?本当だ…」
「トマトは食べられたのか」
ナイフでトマトを切るとドレッシングと合わさり、更に美味しくなるようにしてある。
「しかし、トマトはこんなに赤かったのだな?私達が目にしているのは緑かオレンジ色だ」
うん、それは熟す前の状態だ。
そんな状態で食べても美味しいはずがない。
「ピー!」
「モモちゃんはフルーツトマトね?」
昨日、トマトを見つけた時に見つけた。
これならモモちゃんも食べられるだろうが、美味しいなトマト。
この時呑気にトマトを食べて忘れていた。
パパ上とママ上が悪だくみを考えている事を。
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