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番外編キャルドンの転落②
しおりを挟む子爵家の連中の信頼を得るのは簡単だった。
人が良いから、商会の役に立つ事をアピールしておいた。
後は跡継ぎである一人娘を惚れさせれば簡単だった。
だが、娘のイオナは警戒心が強下く、マリエルのように単純ではなかった。
両親は簡単に騙されたのに苛立ちを覚えたが、時間の問題だ。
俺が彼女を好いていると言えば、両親は俺を婿養子にしても良いと言い出した。
しかし、イオナは頑なに拒んでいた。
そこで俺はなんとしてもこの子爵家を乗っ取る為に計画を立てた。
それはこの領地では塩が不足しているからだ。
だから塩を増やすべく考えたのは潮に砂を混ぜて量を増やすことだ。
勿論通常の塩よりも質は劣るだろうが、気づく人間は少ない。
砂でも気づかれないように細工すればいい。
そのおかげで商売は繁盛し、イオナと俺は婚約までこぎつけた。
しかし――。
「卑怯な男…両親を誑かして我が家を乗っ取るんなんて」
「何を?」
「白々しいわね。例えこの身が貴方の手で汚されようとも私は貴方なんかに屈しないわ。貴方のような男には」
この女!
元は平民風情で偉そうに!
「私は子爵家を守る身。だから耐えます…けれど、子爵家は貴方に渡さないわ」
「何を言っているのやら」
俺が手を伸ばそうとすると。
ガシッ!
「お嬢様に何をするおつもりですか?」
「なっ!」
「ウィーン!」
この邸の執事が俺の手を掴んだ。
聞けばこの二人は幼馴染と聞くが使用人の分際で。
「婚姻前の女性に軽々しく触れるとは随分と礼儀のない事ですね?貞操観念もないようで」
「貴様!」
「ウィーン!」
「お嬢様!」
茶番劇のようなやり取りを見せながら、俺を睨む。
本当に馬鹿な奴等だ。
どうせあと一か月で俺達は結婚することになっている。
そうなればこの執事は解雇だ。
いや、目の前でイオナを抱いて絶望を味合わせてやる。
惚れた女が他の男の前で抱かれることほど屈辱な事はないだろう。
俺を侮辱した罪は重い事を思い知ればいい。
子爵と夫人は俺が仕組んだ薬で余命あとわずかだからな。
子爵家が俺の物になればすべてを取り戻すことができる。
だが子爵如きで満足はしない。
俺は頂点に立って形だけの王配となったあの男に復讐してやる。
そして引きずりおろしてやる。
あの男の所為で俺はこんな貧しい思いをしているんだ。
そうだ、すべてはあの男の所為だ。
全ては上手く行く。
そう思った矢先に番狂わせな出来事は起きたのだった。
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