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8.思う事
しおりを挟む学園で派閥争いが激化してから私は気が休まる事はなかった。
しかもその争いに積極的に介入しているのが私の婚約者なんて笑えなかった。
我がユーモレスク家は中立的な立場を貫いている。
王族よりであっても、優先順位は国だった。
未だに鎖国を重視する前時代的な貴族に対して国を守る為にも貿易は止めてはならないと考えるのが国を支える事だとお父様は強く進言していた。
たかが伯爵如きでと罵倒を浴びせる者は多かった。
大貴族の出身でありながらも20年近く出世もせずに官職も平凡なお父様は見下されていた。
長男でありながらもユーモレスク家の本家は次男の叔父様が当主となりその名代を三男の叔父様がされている。
伯爵の爵位を持っているが跡継ぎから外され本家から追い出されたのだ。
元より和を大切にするする人で争い事を好まなかった。
王立図書の管理を任され本をこよなく愛しているので本人は出世欲がまるでなかったけど伯爵領の領地経営はお兄様が行い安定していた。
作物も豊作で周りは領地と周りの物に恵まれ運だけの貴族と呼ばれる程だった。
でも本当は違う。
お父様は無暗に敵を作って領民を巻き込むのは貴族として当主として一番してはならない事だと言ってらした。
もっと外国と交流を図り共に技術を学び国を発展させるべきだと常に口癖のように言っておられるお父様は私の自慢だった。
だからこそ私も貴族令嬢としての役目を果たそうと努力したけど。
これ以上家を軽んじられてしまうぐらいなら、私は家を出てしまった方が良いのかもしれない。
「今頃どうしているかしら」
最悪の事態が過った。
既に学園中の噂になり、社交界にも私の醜聞が広がってしまったらどうしたらいいのだろうか。
ハルバート様は私と婚約破棄をできて嬉しいだろう。
なんせヒロインにぞっこんだったし、私も彼に対して義務感しかない。
それでも愛情を持って接しようと努力した。
だけど私の努力は意味がなく、受け入れられることはなかったのだから。
ずっと無理をして来た。
「こうなった以上は、学園には戻れないわ」
この体で学園生活を過ごすのは難しい。
貴族令嬢としての役目を全うできないのならせめてお兄様の重荷を無くすべきだわ。
「それに、ある意味好都合だわ。これでお役御免だわ」
できるだけユーモレスク家が傷つかないように舞台を降りよう。
「遠くに行きたいな…誰も知らない場所に」
学園には退学届けを出した北の最果て。
いいえ、南国で静かに暮らしながら平民として生きるのも良いわ。
前世では庶民だったし。
幸いにも他国には移民を受け入れてくれる国もある。
お父様のお仕事の補佐をする為に外国語はしっかり習得している。
代筆を任されたこともあるから海外でもやって行く自信はあるし、このまま乙女ゲームのご都合主義に巻き込まれたくない。
お兄様の為にも。
シアンの今後も心配だから辺境伯爵様に手紙を出しておこう。
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