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【Memory_1】君と共に
2.If
しおりを挟む最近、同じ夢を何度も繰り返す。
毎日同じ場所を切り取ったワンシーンだけを見ている状態が連日続いている。
何故か花畑に少女が立っていて、俺はその少女を見て懐かしくなるような、苦しくなるような思いをしていつも途中で少女が血塗れになり、嫌悪感と共に意識が覚醒する。
正直言って、すごく気持ち悪い。
感覚で言えば恋愛ドラマの告白のシーンを何度でも見て恥ずかしがって見せたり、戦隊ドラマのヒーローが登場するシーンを永遠に見て真似をする子供の頃によくやったようで凄くバカらしく、夢から醒めても忘れない夢。
そんな夢を何度も見るなら可愛らしい、憧れているんだなと純粋に思えただろう。
だが俺はどうだ。
知らない人が何度も死ぬなんて、お世辞でも可愛くない夢である。
そんな夢を見ている俺は、段々体が動かなくなる病気で入院中だ。
ここは、病院であり水槽だと俺は思う。
入院とは名ばかりで体調は一向に回復の予兆を見せない。
この場所では魚になりかけの俺には少し生き苦しく、呼吸がしにくい。
何故か問われれば、俺には陽の光も差さないこの隔離病棟で、瀕死の魚を飼っているようにしか思えない。
点滴という酸素ポンプで管理され、都合が悪くなれば酸素を無くして殺される。
餌という病院食は、特筆して味が無く何度噛んでも何の感情も生まれてこない。
水草と言うベットに、砂利と変わらない車椅子。
何も変わらずただ死ぬのを待つだけ。熱帯魚の方がまだ数倍はマシかもしれない。
終わりのない日々を過ごすのはとても苦しく、辛い。
命は大切だと言うけれど、俺のこんな命誰がいるものか。
もう自分の力でも歩くことが出来ない。
こんな俺を形容するのなら、自力で歩けない俺は陸に上がった人魚とでも言えばいいだろうか。
考えれば考えるほど、卑屈になる。
ため息を吐きながら診察室に入ると、少し疲れているのか、額に皺寄せをしている担当医が待っていた。
コーヒーを飲む様が似合う三十代後半の優しい先生だ。
俺が部屋に入っても気付かなかったので、扉を2回ノックした。
「___先生。お待たせしました。」
「ああ、命君。格好悪いところを見せてしまったかな。」
「いえ。先生のその顔は見飽きました。」
茶化しながら言うと、先生は口角を緩めてふっと笑った。
普段は笑う人ではないのに珍しいなと俺までつられて顔が緩んでしまう。
「命君。今日は大切な話をしよう。」
「どうしたんですか、改まって?」
首を傾げておどけて見せたけれど、俺はこれから言われることを何となく分かっていた。
分かっているのに、少しだけ聞きたくなくて生唾を飲み込んで覚悟を決めた。
先生も、深い溜息を吐いた後に真っ直ぐ俺の瞳を見つめた。
「____君は後、2週間も生きられないだろう。」
余命宣告された後は思ったより清々しい。
何でか悲しいことなのにそう思った。
何だろう。
何の感情も湧かないんだ。
それより、自分の命なんてとっくの昔に諦めていた俺にとっては、逆に気が楽になった。
これで、来ないかもしれない明日のことを気にしなくて済む。
今日で最後かもしれないという不安からも解放される。
少しバツが悪そうに顔を背けた先生に「俺なら大丈夫」と声をかけた。
もちろん俺だって辛いが、一番辛いのは今まで見てきてくれていた彼だろうから。
辛気臭い空気が漂う。
看護師さんも先生も俺になんて声をかけたらいいのかわからないのだろう。
俺も全く同じ気持ちだ。
「…あーあ!もしも」
もしも、…僕にレイズとか復活使えたらよかったんだけどね。」
一度言葉を切った彼は椅子に背中を預けながらそう言った。
きっとその言葉が、医者としての本心なんだろう。
「使える世界なら、先生職無くしますよ。」
「いや、聖職者の役職にチェンジできるはずだから!」
先生は割とゲームが好きで、部屋を出ない俺のとこにもよく新作のRPGを持ってきてくれていた。
彼の口癖は “復活の呪文がもしも使えたら” だった。
そんな世界ならこんな思いもせずに済んだのだろうか。
いや、もしもなんて世界は訪れない。
現実世界には復活魔法なんてものは存在しない。
存在したら俺は不治の病で2週間後には死なない。
人間にできるのは、科学という形で世界を便利にすることだけだ。
それが分かってるからこそ、俺も彼も夢を見てしまう。
復活の魔法が使える、もしもの世界の事を。
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