聖なる祈りは届かない

浅瀬

文字の大きさ
14 / 18
【Memory_2】

14.さがしびと

しおりを挟む

 「さぶっ…リリィ、今日は外に出ない方がいいかも」

 「じゃあ今日はもっと暖かくして寝ないとお腹壊しちゃうね」

 「そうだな」

 最近特に日を増して寒くなっているのだが、もはや寒い次元では無い。
 防寒具を何枚重ねても手は赤切れするし外に出ればあっと言う間に足は氷の様にカチカチだ。

 レイトが家を出て1週間。
 リリィと他愛ない会話を交わしているとこの猛吹雪の中、割と強めの音で家をノックされた。

 また別の関係者かもしれない。不審者だと怖いので彼女を奥にやって俺が出る。
 恐る恐るゆっくり扉を開けると、そこには軽装備で立っている人がいた。

 「すみません、レイト知りませんか?」

 形容するなら雪のように真っ白な女の人だった。
 レイトの事を知っているとすれば、旅仲間か何かだろうか。

 フードを取ってこちらに質問を投げかけてきた彼女。
 長い藍色の髪に切れ長の目が特に特徴的だった。現代風に言うと…ギャルに近しいものかもしれない。
 こんな寒いのに明らかに服2、3枚しか着ていなさそうだし。
 凄い偏見だけれども、どうしても薄着のイメージがある。


 「レイト?レイトならこの間来たけど…」

 「今はどこに?」

 「うちにはもう居ませんよ」

 「行き先は?どこか聞いてますか?」

 「いや、何も聞いてませんが…」

 「僅かな手掛かりでもなんでもいいんです!何か聞いてませんか?」

 相当心配している様子で、あまりの迫力に気圧されてしまう。
 話への食い付き方が凄く、こちらがしどろもどろになるくらいだ。

 誰かと旅をしているのなら早く言ってくれれば何泊でも泊めたんだが…。
 レイト自身、事情を他人に簡単に言う性格ではなさそうだし何より彼女がこんな薄着でこの国を歩いてるのが凄く可哀想だ。

 「この国を出るとは言ってたけど…」

 「なん…で…」

 「え?」

 「なんでよぉ!!追いつけたと思ったのに!」

 大声を出した彼女の声は震えていた。
 さっきとは打って変わった態度に驚いたが、どう声をかけていいのかわからない。
 
「あの……」

 とりあえず外は寒いかと思い彼女に声をかけると、右頬を鋭利な物が掠めた。
 咄嗟のことに反応が取れず、相手を凝視してその場で硬直してしまう。
 掠められた頬は一瞬ひんやりとしたが、今は血が流れているのか熱い。

 紙で指を切った時の後から来る痛みにとても似ている。
 血が頬を伝う度にジンと暖かさが滲むが、この外の寒さでは血など一瞬で凍ってしまう。
 服の袖口で頬の血を優しく拭いながら相手から目は離さない。

 「やっと…、やっと見つけたと思ったのに!!」

 「待て、なんの話だ!」

 「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさい!!レイトと私の邪魔ばっかりみんなでして!酷いよ!」
 
 子供の癇癪を起こしたみたいに人の話を聞かない。
 聞かないと言うよりか、眼中にないと言った方が正しいのだろうか。
 先程の頬を掠めたのもきっと彼女から発せられた何かのせいだ。
 
 考えろ、どうしたら危害を加えて来ない?
 こちらは生憎手持ちは何の武器もない。
 斧どころか木の棒ですら手の届く範囲には置いていない。
 そもそも人の家の玄関口でする行い自体ではないが、そんなのも気に留めていないのだろう。
 彼女の目的もそこへ至るまでの着地点がわからなければ対話さえ不可能な状態だ。




 どうする?どうすればいい?魔法も何も使えない俺は、どうすれば…____。





 「ミコト?…どちらさ…ま?」









 声が聞こえた瞬間、時間が止まった感覚に陥った。
 顔に巡っている血が一気に引いていく感覚が俺自身で分かる。
 血の気が引いた。呼吸を忘れてしまいそうだった。









 








 「____来るな、リリィ!!!!!!!」

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...