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声劇用台本~鬼女~分割【中】

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 ~鬼女きじょ

登場人物 

(占)占竜せんりゅう
年代:40代イメージ
職業:占術師せんじゅつし(お祓い、祈祷もする占い師)

(和)佐藤和美さとうかずみ
20代前半イメージ
職業:OL 

(光)加藤光一かとうこういち
25歳くらいイメージ
居酒屋の店主になろうとしている、チャラ男系

(鬼)鬼女きじょ
若い女性イメージ…光一の居酒屋に住み着く鬼…怨みを持って死んだ女性が鬼になった。

(登)加藤登かとうのぼる
50代前半イメージ・光一の父親で建設会社社長

(久)加藤久恵かとうひさえ
40代後半イメージ・光一の母親・専業主婦

(雄)加藤和雄かとうかずお
70代後半イメージ・光一の祖父

(道)加藤道代かとうみちよ
70代前半イメージ・光一の祖父

(オ)近所のおばちゃん
噂話、野次馬大好き、40代後半イメージ


【開幕】

N〖病院に着き、車を駐車場にとめ
光一の病室は何号室かを確かめる為、
占竜は受付に向かう…

そこには光一と和美が待っていた…〗

光「占竜さん!

来てくれたのですね

ありがとうございます」

N〖光一は冷静を取り戻してはいたが
かなり泣いたのだろう…
目が真っ赤に腫れあがっていた…

愁傷様しゅうしょうさまでしたと占竜は
言葉につまりながら頭を下げた…

しかし、次の言葉がでない…

頭をあげられない…

そんな占龍に光一がボソボソと問いかけてきた…〗

光「占竜さん…
占竜さんが言ってくれたように引っ越していれば
おじいちゃん死なずにすんだのかなぁ?…」

N〖占竜にとっては凄まじくキツイ質問だった…
自分がもっと真剣に光一さんを説得していたら…

自分が死期を占わずに
強硬手段きょうこうしゅだんでもかまわないから
すぐに行動していれば…

色んな考えが頭の中をめぐった
心の中で光一さん…

すまない…

すまない…

と何回も謝り…

頭をあげた…

頭をあげた占竜は次なる戦いの為にそな
表情を変えず…
びの言葉も言わず…
光一に返答した…〗


占「それはわからないですよ…
過去は変えられないんです…
あの時にこうしていたらって考える時間があるなら
これから自分に何ができるかを考えるべきですよ…

でも光一さんは無事でよかった…
もう歩けるんですね…」

N〖占竜は表情を変えずに話している…
それを聞いた光一は凄まじい表情で占竜に食ってかかってきた…〗


光「何が良かったんだ!
じいちゃんは苦しんで死んだんだ!」

N〖光一が占竜につかみかかってきた…
だが占竜はどうなるか予想して話していたのだろう…
顔色を変えずに黙って光一に殴られるのを待っていた…〗

和「光一さん落ち着いて!」

N〖和美が止めに入ってくれたお陰で
占竜は殴られずにすんだ…

占竜は殴られた方がスッキリするのだがな…
と思いながら、ここでお話するのも何だし
場所を変えましょうと光一さんの病室に向かった…


病室に向かう途中、光一は占竜に話かける…〗


光「すいません…
俺が全部悪いのはわかっているんです…
占竜さんの言うことを聞いていたらと思うと…
すいませんでした…
詐欺師呼ばわりして…
俺がじいちゃんの変わりに死ねばよかっ…」


ドガッ!
【光一が占竜に殴られる】


N〖占竜に殴られ、倒れこむ光一…
 その光一にむかって、感情をおさえられなくなった
 占竜が叫ぶ〗

占「それ以上言うなぁ!

おじいさんは我が身を犠牲にして、孫を守ったんだろうがぁ!

その行為を無にするような言動は許さない!

俺は詐欺師さぎしだよ!

何もできなかったんだ!

悪い道に向かっているのをわかっていながら止められなかったんだ!

俺なんか詐欺師さぎしで十分なんだよ!

だがなぁ!

俺はこのまま泣き寝入りするつもりはないぞ!

光一!

てめえぇ…

このまま泣き寝入りするつもりかぁ!

おじいさんが切り開いてくれた運命うんめい

死ぬ気で幸せをつかみ取るのが
命をかけて守ってくれた…

おじいさんに対する礼儀だろうがぁ!」


N〖ハァハァと占竜は息を切らし光一を見つめる…
いきなりの出来事で和美も止めにはいれず、唖然あぜんとしていた…

占竜は頭を激しくふり
唖然あぜんと見ている光一に話かけた…〗


占「すまない…
だがな光一さん…
今、この時…
命があることに感謝し…
おじいさんの勇気にも感謝しようや!」


N〖占竜は殴った時に倒れこんだ光一に
笑いかけ手を差し伸べる…〗

光「はい…」

N〖光一は占竜の手を掴んで立ち上がった…

占「光一さん…
すまない、病室で話をする前に
おじいさんに会わせてもらえないかな?」

光「はい、じいちゃんはこっちの霊安室れいあんしつにいますので…」

N〖光一は占竜に殴られ気合いが入ったのだろう…
病院についた時は死んだような目をしていたが
今は生き抜いてやると目に生気せいきが感じられる…

おじいさんのいる霊安室れいあんしつに入ろうとドアに手をかけると
男性と女性の鳴き声が聞こえる…〗

登「親父ぃ~…」

N「その声を聞いた光一は
つらそうな表情をしている…
その様子を見た占竜は光一の父親だなと気づいた・・・」

占「やっぱり光一さんの病室で
先に話をしようか?」

光「すいません…
そうしてくれたら助かります…
あっ占竜さん…
それと俺のことは光一って呼び捨てにしてください!
かなり年上ですし…
その方が、気合いが入るっていうかなんていうか…」

N〖占竜は、「わかったよ、光一」っと言うと
背中をポンって叩いて光一の病室に向かった…

病室につくと椅子に座り
今まで何があったかを聞いた…〗


占「倒れるちょっと前から教えてもらえるかな?」

光「はいっ
俺が倒れたのは居酒屋の二階…

俺の部屋です…

テレビを見ていたら、急にノイズが走り
おかしいなって立ち上がった時に
心臓を何かに掴まれた感じがして…
脂汗あぶらあせがでてきたんですよ…

スッゴク苦しくなってきたので救急車を呼んだんです…
救急隊員が駆けつけてくれた時には意識がなくて…

気が付いたら病室でした…
じいちゃんの声は聞こえていたんですが
他はわからなかった…

目が覚めた時は和美ちゃんが側にいて
俺の胸に占竜さんの護符をあててくれていたんだ…

両親とじいちゃんは俺の家に泊まるからと、帰って行ったって
和美ちゃんに後から聞かされたんです…

その時、親父もお袋もじいちゃんも
お見舞いに来てくれていたんだなって…」

占「そっか…
光一は意識不明なのに
なんで両親とじいちゃんは光一の家に行ったんだろな?
医者が大丈夫って言ったのかな?」


N〖そのことは私がと和美が話してくれた…〗

和「私が占竜さんの護符を持って来た時には
ご両親もおじいちゃんもいなかったから
看護婦さんに聞いたんです…

おじいちゃんが、どうしても光一さんの
家に行くって両親ともめていたみたい…

仕方なくお医者さんに相談してみたら
意識はないけど安定しているから
大丈夫ですよって言われたみたいで
光一さんの家に行ったみたいです」

N〖光一もそのことは知らなかったのだろう
疑問ぎもんが浮かび占竜に問いかけた…〗

光「そうなんだ…
占竜さん…
なんで爺ちゃんはそんなに家に行こうとしたんだろ…」

占「おじいさんは、俺が行くから光一を返せって言っていたんだろ?
光一が倒れた原因…
おじいさんには…
わかったんだろうな…
光一を助ける為にはあの家に行かないと無理だって…

俺も佐藤さんに護符を預けて光一の店に行ったよ…
俺が店についた時には人だかりができていて…」

光「爺ちゃん…」


トントン…
【光一の両親が病室をノックする】


N〖病室のドアをノックして
光一のご両親が入ってきた…
占竜はご両親に挨拶をすると
父親がどなたですかと訪ねてきた…〗


占「占術師せんじゅつしをしている占竜という者です…
光一さんを占ったことがありまして…」

N〖話の途中なのに父親は占竜の手を握りしめた…〗

登「あなたが光一を救ってくれた占竜さんですか!

ありがとうございます!

正直…信じられないですが
和美ちゃんから占竜さんの護符で光一の
意識が戻ったんだよって聞いています!

申し遅れました…
私は光一の父親で加藤登かとうのぼると申します…
こっちは家内の久恵ひさえです…」


占「自分はたいしたことはしていません…
お爺さんが光一さんを救ってくれたんですよ…
この度はご愁傷様しゅうしょうさまでした…」

登「親父が亡くなって気が動転どうてんしているからかも知れません…
自分で見たことを信じられない…
親父が倒れた時の話を…
聞いてもらえませんか?」


N〖占竜はぜひ聞かせてくださいとお願いした…
和美が看護婦さんに椅子を借りに行き、
みんなは腰をおろして登の話を聞こうとしたが
久恵さんだけは、おばあちゃんに連絡入れてきますと
話を聞きたくないのか病室を出て行った…

登は目をせながら淡々たんたんと話し出した…〗


登「親父が光一に会った直後…
すぐ光一の自宅に連れて行けって言い出したんです…
今はもう少し光一の側にいてやりたい…
どうせ今日は光一の自宅に泊まるからっ待ってくれよ…
先生にも話を聞かないといけないからて言ったのですが
早くしろの一点張りでした…

今思えば…

あんなに真剣な目をした親父見たことなかったなぁ…」


N〖病室の気が重くなってきた…
占竜の表情がくもる・・・〗

占「登さん…
少し待ってください」

N〖占竜は登の話を中断させると
並みの結界けっかいでは無理だなとボソッと言い捨て
病室の四隅よすみに水晶を置いた…

水晶にはそれぞれ文字が彫り込まれている…

占竜は水晶一つ、一つに何か秘文ひもんつぶやいている


占「すみません…
お待たせしました…」

N〖占竜は登に頭を下げると椅子に座った…〗

登「仕方なく医者に相談して
光一の自宅に行ったんです…

光一の自宅に近づくにつれて
親父の様子がおかしくなってきました…
汗をかき、震えだしたんです…

親父大丈夫か?って言うと
武者震むしゃぶるいだ!』と言っていました…

その時は言っている意味がわからなかった…」

N〖登は涙を見せたくないんだろう…
ずっとうつむきながら話していた…〗

登「光一の店につくと親父は何があっても下で待っていてくれと言って
一人で二階に上がっていったんだ…

一時いっときすると、『ドンッドンッ』って凄い音がしたから
親父の言いつけを守らずに慌てて二階にあがりました…

二階では親父が壁にむかって…

『光一を返せぇぇぇ!』って…
壁を殴っていた…

血だらけのこぶしを見た時…
親父が狂ったと思いました…

久恵と親父を止めに入ろうとした時…
俺は見たんだ…

壁から女の手が出てきて
親父の胸に手を突っ込んだんだ!

親父は壁から出た手をつかみ…

凄い形相で『俺はくれてやる!』

だから光一を離せって叫んでいた…

壁からでた手は親父の体から白い何かを抜き取ったんだ…

その後、オヤジは倒れたんだ…

親父に駆け寄り…

大丈夫かって話かけたら親父は苦しそうに…

すまない…光一…との道は切れな…かった…

奴…に対…抗しようとしている人が…

光一の…側にいるは…ずだ!

探し出して助け…を求め…ろ…

すまない…

情け…ない…

親父だった…な…

道代みちよに今まであり…が…とう…と伝え…


これが親父の最後の言葉に…」


N〖登の足元の床が濡れていく…


ときは少し前に戻る…
病室からでた久恵は電話をかける為
病院の外にでた…

病院の外で携帯からお婆さんに連絡をとろうとしていたら
タクシーが目の前にとまった…

タクシーが気になり見ていると
中からお婆さんがおりてきた…〗

久M「えっ?
お義母さんには
まだ連絡入れてないのに…」

久「お義母さん!」

N〖お婆さんに駆け寄り泣き出す久恵…
お婆さんは
光一は無事?と久恵を抱きしめながら聞いた…〗

久「光一は…

光一は…

無事なのですが…」

N〖言葉をつまらせる久恵を見たおばあさんはうなずいた〗

道「和雄かずおさん…
やっぱりってしまったんだね…」

N〖と久恵さんの頭をなでながらつぶやいた…

久恵はお義父さんが亡くなったのを
連絡もしてないのに何故知っているかを疑問ぎもんに思い
聞こうと思ったが言葉がでなかった…

すると道代みちよの方が先に久恵ひさえにお願いしてきた…〗

道「久恵さん…
先におじいちゃんのところに連れて行ってもらってもらえるかしら?

のぼるや光一に会う前に会っておきたいから…」


N〖道代は久恵に微笑ほほえむと
おじいちゃんがいる霊安室へとむかった…

霊安室に入ると道代はおじいちゃんの手を握り…

涙を流した…〗


道「和雄かずおさん、頑張りましたね…

あなたと共に歩いてきた人生…

私はとっても…

とっても…

幸せでしたよ…」


N〖そうおじいちゃんに言うとおばあちゃんは肩を震わせていた…



病室では登さんが話を続けていた…〗

登「親父と一緒に救急車で病院に運ばれ
親父が亡くなり打ちひしがれている時に
光一の意識が戻ったことを医者に聞かされたんだ…

その後に光一の病室で和美ちゃんに護符をあてたら意識が
戻ったんだよって聞かされました…

正直、神様や霊なんぞは信じていなかった…

親父やお袋は信心しんじん深かったけど…

正直馬鹿にしていたよ…

占竜さん…

親父は奴に対抗たいこうしている人を探しだせと言っていた!
護符の話を聞いて確信しましたよ!
親父が言っていたのは占竜さんのことなんだって!
親父の遺言ゆいごんなんです!
占竜さん力をかしてください…」

占「未熟者みじゅくものですが…
命に変えても奴だけは自分が何とかします…」

N〖占竜はおじいさんが亡くなったのは自分の責任だと感じていた…〗

登「占竜さん…
ありがとうございます…」

N〖登は占竜の手を握り締め
何回も頭を下げた…〗

登「占竜さん、親父は何故、色々わかったんだろう…
光一が倒れた原因…
占竜さんがいること…」

占「人はみんな第六感だいろっかんって言うか…
不思議な力を持っているんです…

今は科学が発展して
その力はおとろえる一方ですが…

死期しきが近い人や純粋じゅんすいな子供…
動物などは不思議なものが見えるんですよ…

お爺さんは先祖せんぞに教えてもらったんじゃないかなと思います…
登さん…
お爺さんにあわせてもらえませんか?」


N〖登はぜひ会ってくださいと言うと霊安室にむかった …
霊安室につくとは人の気配がした…
登がかけよる!〗

登「おふくろぉ!」

N〖霊安室には登の母親である道代と、妻の久恵がいた…
登は母親に駆け寄ると『親父がぁ~!』と泣き出していた…
占竜はお婆さんに挨拶するのを後回しにして
おじいさんに手を合わせ…

心の中で…
すいません…
俺の力不足のせいでと謝った…
そして、失礼しますとおじいさんの胸に手をあてた…〗














占「くっ…」

N〖占竜は肉体を通して霊視れいしするが…
魂が闇に捕らわれている…
やはり喰われている…
占竜の辛そうな表情にお婆さんが話しかけてきた…〗

道「占竜さん…」

N〖占竜はお婆さんに頭を下げる〗

占竜「このたびはご愁傷様しゅうしょうさまでした」

道「色々とお世話になったみたいで…
ありがとうございます…
占竜さん…
和雄かずおさんを見て何か気づきましたか?」

占「大変言いづらいのですが…
その…魂が…闇に捕らわれています…」

道「そうですか…
和雄かずおさんの魂…
取り戻してくれませんか…
せめて安らかに眠ってもらいたい…」

占「勿論もちろんそのつもりです!
必ず魂を取り戻します!」

登さん…
光一さんの自宅の鍵をかしてください…
魂を取り戻しに行ってきます!」

N〖登から鍵を借りると
占竜はおじいさんの胸に手をあて…

少しでかまいませんから
和雄かずおさんの勇気を自分にかしてください…
つぶやいた…

その時、話を盗み聞きしていた光一が霊安室に入ってきた…〗


光「占竜さん!
俺も連れて行ってください!」


占「何を言っているんだ!
危険すぎる!
ダメだ!」

光「そんな…
ダメって言われてもついて行きます!」

登「…
連れて行ってあげてください…」

占「登さん!
何を言っているんですか!
危なすぎます!
止めてくださいよ!」

光「占竜さん!

一緒にかたきをとろうなって言ってくれたのは嘘ですか?」

占M「うっ!
光一の奴…
痛いとこをついてくる…

占「でもな…
もしものことがあったら…」

N〖登も覚悟を決めたのだろう…
真っ直ぐに占竜を見つめ頼みこんできた…〗

登「自分もついて行きます…

このまま…

このまま…

俺は泣き寝入りをしたくない!」


占M「いやいや、登さんまで何を言い出すんだ…」

N〖占竜は助けを求めるように奥さんとお婆さんを見たが
奥さんは頑張ってと登と光一を応援している…
おばあちゃんはかたきつんだよと息巻いきまいている!
占竜はため息をつき最後のおどしをかけた…〗

占「命の保証はできませんよ!」

N〖脅しは逆効果で登と光一に望むところだ!
と興奮されてしまっていた…

占竜は仕方なく登と光一に念珠ねんじゅとヒトガタを渡した…〗

説明【ヒトガタとは、紙を人の形に切り作っている物
自分の身代みがわりにわざわいをうけさせたり
使い方は様々である
布バージョン
木バージョン等がある】


占「念珠は手につけていてください…

ヒトガタは服の中…

心臓の位置に入れてください

守護してくれます!」


N〖占竜は登と光一を自分の車にのせると
光一の自宅にむかった…

光一の自宅についた時には夜中だった…
占竜は自宅に入る前に登と光一に注意をした…〗

占「手をこの形にしてください…
何があっても
この形をくずさないでください」


光「何ですか?
 これ?」

占「この手の形は摩利支天まりしてんいんです…

陽炎かげろう化身けしんである摩利支天の力をかり
わざわいをもたらそうとしてくるモノから
その身を見えなくして攻撃を防いでくれます…

印が崩れると見えるようになりますから
絶対に崩してはダメです!

気合を入れてください!
何があろうと弱気にならないように!

闇に飲まれますから…

では行きますよ!」

N〖登と光一はわかりましたと印を組んだ…
それを確認した占竜は目をとじ、真言しんごんを唱え始めた…〗

占「陽炎かげろう化身けしん
摩利支天まりしてんよ…
我が身…
我が仲間…
守りたまえ…
オン! アニチヤ マリシエイ ソワカ…」


N〖占竜を先頭に、自宅の二階へとむかった…
二階はきりがかかっているかのような状態になっていた…
邪気じゃきが濃く息もしづらい…〗

占M「こんなにキツい邪気を発するとは…
はたして俺で何とかできるのだろうか…
いや、何とかできるとか悩んでどうする!
命をおとすことになってもやるんだ!!!」

N〖占竜は心の中で自分に言い聞かせている…〗

占M「どこにいやがる…」

N〖占竜はペンデュラムを取り出すが
訳のわからない動きしかしない…〗

占M「クソッ!
場所すら特定できねぇ…」

雄「占…竜…

 …占…竜…

占竜ぅ!」


!?


占M「誰だ!
俺の心に直接語りかけてくるのは…」

雄「こっ…ちだ!」

N〖占竜は謎の声に導かれ壁の前に立った…〗

占M「壁に血の後?」

N〖登が叫ぶ!〗

登「占竜さん!
そこが親父の倒れた場所です!」


!?

占M「さっきの声はおじいさんか…
この壁…」

N〖占竜が壁を調べようと手をだした瞬間!

占竜の腕を、壁からでてきた青白い女性の手がつかんだ!
占竜は調べる為に摩利支天まりしてんいんいている…
その方が敵の正体がわかるだろうと我が身をおとりにしていた…
光一にも青白い手が見えるのだろう…
青ざめ叫ぶ!〗

光「占竜さん!!!」

N〖光一が駆け寄ろうとするが
占竜が一喝いっかつする!〗

占「近づくなぁ!!!
印を絶対に崩すんじゃないぞ!」

N〖占竜は逆に壁からでてる手をつかみ返し
秘文ひもんを唱えだした…〗

占「さぁ、捕まえたぞ!
正体を教えてもらおうか!

貴様は何者だぁ!
我が占術せんじゅつの力…
今こそ見せてやろう!」

N〖占竜は意識を集中し、敵の心を読みとろうとしていた…
地面の底からひびくようなうめき声がこえてくる…〗


鬼「ヴェェェェェェェェェェェ…

エェェ…」


N〖占竜は女性の心に入り込む…〗


鬼「お願いっ!

ダシてぇ…!

苦し…いょお~…


寂し…いよぉ…


ゴホッ!

ゴホッ!

ブハッ!」


N〖占竜の心に敵の過去が写し出される…
若い女性…
着物を着ている…
かなり昔だな…
監禁かんきんされているのか?…

病か?
血を吐いているぞ!
女性は部屋で監禁され
部屋には食事だけを入れる小さな穴がある…

ドアは頑丈で
女性は何度もドアを破ろうといどむが、全く歯が立たない…

苦しそうにき込みながら
吐血とけつり返している…〗


鬼「ワタ…シヲ…
トジコ…メ…
サベツ…シ…
オソレ…ル…
ヨワキ…
ニンゲ…ンヨ…

イツノ…ヒ…カ…
クロウ…テヤル…

ジブン…タチダケ…
シアワセ…ニ…ナリ…

ワタ…シハ…

ノロッ…テヤル…
ニンゲ…ン……スベ…テヲ…
ノロ…イ…
クロ…ウ…テ…
ヤル…ワ…」


N〖女性は呪いの言霊ことだまを吐き…
着物のオビで首をった…〗

占M〖このやまいは…
結核けっかくか!
伝染しないように隔離かくりされた女性か…」

N〖占竜は登や光一にもわかるように
念珠にその心を通じさせていた…
お爺さんを殺った奴が
どんな奴かを知ってもらいたかったのと…
占竜がもしやられた時には
どうしたら良いのかを
わかってもらう為に…〗


鬼「ヴエェェェエェェ…」

N〖うめき声は鳴り止まない…
占竜は更に女性の心を探った…

女性の怨念おんねんはこの家に住む者を
何人も喰い殺していた…

占M「これほどの怨念とは…
凄まじい…
魂を喰らい…
人を怨み…
鬼となりはてたのか…
哀れな…」

N〖当時の大家はたまらずに
はらいを頼んでいた…
部屋に護符等で結界を貼り封じ込めている…〗

占M「では何故…
今頃でてきた…」

N〖占竜は集中し更に読み取る…〗

占M「光一の前の住人…
エアコンを設置する為に…
壁に穴を…
開けたのかぁ!

封印はとかれた…
今はまだ少し封印力が残っている…
まっ!
マズイ!
これほどの魂を喰らっている奴だ!
今のままでは勝てない!」

N〖そう思った瞬間!
占竜の腕を掴んでいた女性の手が変貌へんぼうをはじめた!
青白かった細い手が太く赤黒くなっていく…
メキメキッっと占竜の腕がきしみはじめた!

占竜が叫ぶ!〗

占「登さん!
光一! 
逃げろぉ!!!」

N〖登と光一は、心に写し出されたものを見て震え泣いていた…
占竜の声に二人ともビクッっとなり我にかえる…
光一と登は占竜をつかんでいる手が変貌へんぼう
占竜が苦しそうにもがいているのを見て慌てて逃げだした!

家の外まで逃げると、もう安全だなと登さんは確信して
光一の肩に手をおいた…〗

登「光一…
母さんと婆ちゃんを頼むな…」

N〖光一に別れをつげると
登はそのまま、占竜のもとに向かおうとした…〗


光「イヤだ!
父さん何で行くんだよ!
あんな奴にかなう訳ないじゃないかぁ!
占竜さんだってやられたんだ!
行ったって何ができるっていうんだよぉ~!
無駄死にするだけじゃないかぁ!!!」

N「登さんは光一の方を向き…
ニッコリと笑うと
そのまま鬼女きじょがいる二階へとむかった…

光一はその場にふさぎこんで泣いていた…〗


光「チクショウオォ~!」

N〖光一はどうしてよいかわからずに、
地面を殴りつける…〗


光「占竜さん…
俺はどうしたら…」




中【閉幕】【下に続く】
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