僕を君で満たす方法

ぐざい

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ミネラルウォーター

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君はいつもミネラルウォーターを飲んでいる。ペットボトルに入った水。店で売られている普通の水。君は棚に並んだたくさんのペットボトルの中から、いつも同じものを買ってくる。間違ってお茶を買うこともないし、色のついた炭酸飲料を買うこともない。いつも同じ水を買う。透明の水。透明のボトルに入った透明の水。君は変わらないことに満足しているよね。

君はペットボトルのキャップを手慣れた仕草でひねる。数回まわす。キャップがはずれる。手慣れた仕草でボトルを傾けコップに注ぐ。君の綺麗な手は、グラスを持ち上げる。グラスは君の柔らかな唇に運ばれる。グラスのつやつやした曲線が君の唇にふれる。グラスは唇に沿って傾けられ、グラスの水は唇のその先、君の口の中をすべり、喉からその奥に流れていく。僕は時々、君は何を飲んでいるんだろうかと考える。そのグラスの中は本当にお水なの?

僕は店頭のペットボトルの列を見ると、無機質な人の列を思い出す。駅までの道をそれぞれに歩く人の流れ。入社式で整列している新社会人。卒業式の生徒。何かの店に並ぶ若者たち。電車を待つホームの人混み。満員電車。揺られている。頭と体がばらばらにならないのは、なんでなんだろうと考える。君は考えないかい?君は僕がなぜそんなことを考えるか、わかるかい?

人の列。ペットボトルの陳列棚。君が飲んでいる水はどんな人の列?そのペットボトルの水は美味しいのだろうね。そしてとても衛生的なんだろう。でもね、僕には、なにかもっと別の物に見える。
人の首をひねったものから出てくるものってなんだろう。僕はそれがなんだかはわからないけど、その色は、透明なんじゃないかと思う。人から出てくるものは、透明なんじゃないかな。君の息は目に見えないだろう?僕の息もそうだ。透明なんだ。その水みたいに。

いつか、君をペットボトルみたいにひねって、僕を君で満たしてみたいんだ。君で僕を満たすことはできるだろうか。君を飲んだら、僕はどこが満たされるだろう。満たされると、満たされた場所はどうなるの?大きくなる?膨らむ?破裂しそうなくらい?とても気持ちが良い?とても?
僕はいつだって満たされていないんだ。僕が満たされていないのは、腹でも心でもない。満たされていないのは脳だと思うんだ。僕の脳はいつだって、満たされないことに不安がっている。君を見ても、君といても、君に触れても。なにかを食べても、なにかに充実しても、なにかをきっかけに人を見下しても、満たせない。満たされない。満たされたと思ったことがない。

僕は自分を満たすことなんて望んでいない。君をひねって飲むことはできないからね。だから君で僕を潤すことはできないんだ。でも僕は、君が水を満足そうに飲むのを見て幸せになる。君は満たされている。満たされているということが、君の一番の魅力なんだよ。
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