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『過去』
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『過去』
ルデルタはどこかの森で、蝶々の姿で暮らしていた。白い蝶々だった。その日もひとり、気ままに揺蕩っては、草の上や花の上で羽根を休めていた。
その森は動物が多く棲んでいた。豊かだった。そんな森は人間が狩猟のためにやってくる。森のためにも狩猟は必要だ。森もそれは理解している。しかしむやみに森を荒らすことを森は許さない。その日、森に入ってきた人間は、森を荒らす人間だった。
時間をかけてできたけもの道を踏み荒らし、必要以上に木の枝を打ち捨てた。森はざわざわと、ずっと鳴いていた。大きな声で泣いている。蝶々は危ない目に合う前に安全な場所に行こうと思った。しかしそれは叶わなかった。人間がけもの道とは全く違う場所から突然現れ、腕を振り回して歩いてくる。人間が乱暴に振り払った木の枝に巻き込まれて、蝶々の脚と羽根が折れた。はらはらと森の土の上に落ちる。もうとてもはばたけそうになかった。
蝶々は思った。ああ、自分はなんて、小さくて無力なのだと。運のない、小さな虫けらだった。せめて一度でいいから、愛する人にふれてもらいたかった。小さな虫でも大きな愛は得られると、思いたかった。心から愛する人に、温かく愛されたかった。
そうしてそのまま、呼吸が止まった。
そのあとはどうなったのか。蝶々の小さな体は風に舞い、飛ばされ、吹き上げられて、ネモゼラの住む森に運ばれてきた。蝶々はネモゼラの森の土に落ち、そこで神は気まぐれに、人間の身体と名前を与えたもうた。そして森は蝶々に気が付き、ネモゼラがそれを見つけ、今に至る。
ルデルタはどこかの森で、蝶々の姿で暮らしていた。白い蝶々だった。その日もひとり、気ままに揺蕩っては、草の上や花の上で羽根を休めていた。
その森は動物が多く棲んでいた。豊かだった。そんな森は人間が狩猟のためにやってくる。森のためにも狩猟は必要だ。森もそれは理解している。しかしむやみに森を荒らすことを森は許さない。その日、森に入ってきた人間は、森を荒らす人間だった。
時間をかけてできたけもの道を踏み荒らし、必要以上に木の枝を打ち捨てた。森はざわざわと、ずっと鳴いていた。大きな声で泣いている。蝶々は危ない目に合う前に安全な場所に行こうと思った。しかしそれは叶わなかった。人間がけもの道とは全く違う場所から突然現れ、腕を振り回して歩いてくる。人間が乱暴に振り払った木の枝に巻き込まれて、蝶々の脚と羽根が折れた。はらはらと森の土の上に落ちる。もうとてもはばたけそうになかった。
蝶々は思った。ああ、自分はなんて、小さくて無力なのだと。運のない、小さな虫けらだった。せめて一度でいいから、愛する人にふれてもらいたかった。小さな虫でも大きな愛は得られると、思いたかった。心から愛する人に、温かく愛されたかった。
そうしてそのまま、呼吸が止まった。
そのあとはどうなったのか。蝶々の小さな体は風に舞い、飛ばされ、吹き上げられて、ネモゼラの住む森に運ばれてきた。蝶々はネモゼラの森の土に落ち、そこで神は気まぐれに、人間の身体と名前を与えたもうた。そして森は蝶々に気が付き、ネモゼラがそれを見つけ、今に至る。
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