ぐざい

文字の大きさ
9 / 19

『変化』

しおりを挟む
『変化』
初めての夜から数日、ルデルタは時々視線を落として考えるような仕草をするようになった。ネモゼラはそれが気になったが、しかしそれを聞くことはしなかった。獣人はあまり互いを干渉しない。しかし、ルデルタが苦しそうな仕草をするのは見逃さなかった。自分の身体を抱いてぐっと痛みに耐えるような仕草を、ネモゼラの見えないところでするようになった。ネモゼラは獣だ。人よりよく音を聞く。ルデルタのそんな様子に気が付かないわけがない。匂いに変化もあった。明らかになにかが変わっている。
しかし自分にはなにも言わないルデルタが、妖精のタタとふたりで話していることに気が付いた時は、胸から心臓が飛び出すかと思うほど不安になった。なぜタタに話す?ルデルタがタタとなにを話すというのか。ネモゼラはルデルタに聞くことにした。自分の嫉妬の感情に心底あきれたが、それよりも、大切な人が苦しんでいるのなら、助けたかった。

「話したくないならいいんだ」
ネモゼラの口調はいささかのかたさを感じさせた。表情もかたい。ルデルタをまっすぐ見ていても、ふと視線を落とす。
「…話したくない訳では、ないんだ」
ルデルタは視線を落としたままだ。
ネモゼラは緊張を和らげる香を焚いて、花のお茶を用意した。ルデルタが落ち着くように。でも、ネモゼラは自分の方がはるかに緊張していることに自分でも気が付いていた。ルデルタがなにを隠しているのか、彼は不安だった。
「驚かないで…ほしいんだ」
ルデルタは眉をさげて薄く笑っている。いつもの笑顔はどこへいった?お前はなにを言おうとしている?ネモゼラは自分の手を強く握った。耳が動く。
「ネモゼラ、俺は…」
ルデルタが黙る。ながい沈黙。ネモゼラは緊張している。静かな沈黙でさらに緊張が増す。
「俺は…蝶々なんだ。ネモゼラ、信じるかい?」
ルデルタの目は涙で潤んでいる。なんだって?
「俺にはお前が人間に見えるよ」
「神は俺に、なぜこの身体を与えたのかな。いたずらなんじゃないかと思うよ」
ルデルタがまた視線を落とす。自分の手を強く握っている。不安なのか。その手にネモゼラが手を伸ばした。
「今の言葉は…すまないルデルタ。信じていないわけじゃない。俺にもわかるように、話してくれるか?」
ルデルタはしばらくネモゼラの目を見つめ、涙を堪えてから、小さくうなずいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...