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『変化』
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『変化』
初めての夜から数日、ルデルタは時々視線を落として考えるような仕草をするようになった。ネモゼラはそれが気になったが、しかしそれを聞くことはしなかった。獣人はあまり互いを干渉しない。しかし、ルデルタが苦しそうな仕草をするのは見逃さなかった。自分の身体を抱いてぐっと痛みに耐えるような仕草を、ネモゼラの見えないところでするようになった。ネモゼラは獣だ。人よりよく音を聞く。ルデルタのそんな様子に気が付かないわけがない。匂いに変化もあった。明らかになにかが変わっている。
しかし自分にはなにも言わないルデルタが、妖精のタタとふたりで話していることに気が付いた時は、胸から心臓が飛び出すかと思うほど不安になった。なぜタタに話す?ルデルタがタタとなにを話すというのか。ネモゼラはルデルタに聞くことにした。自分の嫉妬の感情に心底呆れたが、それよりも、大切な人が苦しんでいるのなら、助けたかった。
「話したくないならいいんだ」
ネモゼラの口調はいささかのかたさを感じさせた。表情もかたい。ルデルタをまっすぐ見ていても、ふと視線を落とす。
「…話したくない訳では、ないんだ」
ルデルタは視線を落としたままだ。
ネモゼラは緊張を和らげる香を焚いて、花のお茶を用意した。ルデルタが落ち着くように。でも、ネモゼラは自分の方がはるかに緊張していることに自分でも気が付いていた。ルデルタがなにを隠しているのか、彼は不安だった。
「驚かないで…ほしいんだ」
ルデルタは眉をさげて薄く笑っている。いつもの笑顔はどこへいった?お前はなにを言おうとしている?ネモゼラは自分の手を強く握った。耳が動く。
「ネモゼラ、俺は…」
ルデルタが黙る。ながい沈黙。ネモゼラは緊張している。静かな沈黙でさらに緊張が増す。
「俺は…蝶々なんだ。ネモゼラ、信じるかい?」
ルデルタの目は涙で潤んでいる。なんだって?
「俺にはお前が人間に見えるよ」
「神は俺に、なぜこの身体を与えたのかな。いたずらなんじゃないかと思うよ」
ルデルタがまた視線を落とす。自分の手を強く握っている。不安なのか。その手にネモゼラが手を伸ばした。
「今の言葉は…すまないルデルタ。信じていないわけじゃない。俺にもわかるように、話してくれるか?」
ルデルタはしばらくネモゼラの目を見つめ、涙を堪えてから、小さくうなずいた。
初めての夜から数日、ルデルタは時々視線を落として考えるような仕草をするようになった。ネモゼラはそれが気になったが、しかしそれを聞くことはしなかった。獣人はあまり互いを干渉しない。しかし、ルデルタが苦しそうな仕草をするのは見逃さなかった。自分の身体を抱いてぐっと痛みに耐えるような仕草を、ネモゼラの見えないところでするようになった。ネモゼラは獣だ。人よりよく音を聞く。ルデルタのそんな様子に気が付かないわけがない。匂いに変化もあった。明らかになにかが変わっている。
しかし自分にはなにも言わないルデルタが、妖精のタタとふたりで話していることに気が付いた時は、胸から心臓が飛び出すかと思うほど不安になった。なぜタタに話す?ルデルタがタタとなにを話すというのか。ネモゼラはルデルタに聞くことにした。自分の嫉妬の感情に心底呆れたが、それよりも、大切な人が苦しんでいるのなら、助けたかった。
「話したくないならいいんだ」
ネモゼラの口調はいささかのかたさを感じさせた。表情もかたい。ルデルタをまっすぐ見ていても、ふと視線を落とす。
「…話したくない訳では、ないんだ」
ルデルタは視線を落としたままだ。
ネモゼラは緊張を和らげる香を焚いて、花のお茶を用意した。ルデルタが落ち着くように。でも、ネモゼラは自分の方がはるかに緊張していることに自分でも気が付いていた。ルデルタがなにを隠しているのか、彼は不安だった。
「驚かないで…ほしいんだ」
ルデルタは眉をさげて薄く笑っている。いつもの笑顔はどこへいった?お前はなにを言おうとしている?ネモゼラは自分の手を強く握った。耳が動く。
「ネモゼラ、俺は…」
ルデルタが黙る。ながい沈黙。ネモゼラは緊張している。静かな沈黙でさらに緊張が増す。
「俺は…蝶々なんだ。ネモゼラ、信じるかい?」
ルデルタの目は涙で潤んでいる。なんだって?
「俺にはお前が人間に見えるよ」
「神は俺に、なぜこの身体を与えたのかな。いたずらなんじゃないかと思うよ」
ルデルタがまた視線を落とす。自分の手を強く握っている。不安なのか。その手にネモゼラが手を伸ばした。
「今の言葉は…すまないルデルタ。信じていないわけじゃない。俺にもわかるように、話してくれるか?」
ルデルタはしばらくネモゼラの目を見つめ、涙を堪えてから、小さくうなずいた。
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