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魔女の過去1
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少し時は戻ります。
男の子が成人を迎える二年前、男の子が14歳の時にあったお話。
自身の今後を、どのように在りたいかを決めた重要な日。
男の子はいつも通り、週に一度の魔女の魔術工房を掃除していました。
「はぁ、なんであの人はこうも……整理という、当たり前の事が出来ないのだろう」
無造作に積み重なる、本、本、本。
魔術研究を行った後でしょうか、床には足場の踏み場がないほどの用紙と、なだれが起きた本が床に散らばっていました。
「毎週の事とは言え、今週は特にひどいな……今回は難しい仕事だからって手伝いはなかったけど、しわ寄せがここに来たか」
今回は疲れそうだなと落ち込む男の子。
しかし、これも修行の一環だと考え直し、本を一冊拾い魔術を行使します。
「一週間前の空間記憶参照、空間座標照合……"物体再配置"」
瞬間、男の子の手元にあった本は姿を消し、元に合った場所と思われる本棚へと移動していました。
繰り返すこと数百回、部屋の中に散らばっていた用紙は一ヵ所にまとめられ、本は元ある本棚に綺麗に並んでいました。
「きっつぅぅ……まあでもこれでやっと拭き掃除ができるな。昼まであと一時間、師匠が起きるまでには終わるかな」
掃除用具を持ってきた男の子は、手慣れた手つきで部屋を掃除していきます。
20分程経つと部屋はピカピカ、掃除前の足の踏み場もない汚い部屋は見る影もありませんでした。
「っし、掃除終了。それじゃあ、本題に取り掛かるか」
男の子は封印の魔術が掛けられている棚へと近寄ります。
禁書が入っているから絶対に開けてはいけないと魔女に言われていますが、ここ数年男の子はどうにかして棚の封印を解こうと試行錯誤してきました。
少しでも早く魔女の魔術の腕に近づきたい一心で封印を解こうとしますが、魔女の封印は強固で手も足も出ません。
そこで男の子は数日前、ある思い付きをします。
外部からの侵入を拒む封印なら、内部からならどうだと。
「空間捕捉、対象……ん? 入ってるのは箱だけ? まあ、いいか……"空間転移"」
男の子の手の平の上に小さな箱が現れます。
取り出した箱は小さく、両手で包みこめれる大きさでした。
「……なんだこれ? この箱にも封印魔術が掛けられてるけど、古いな。封印も解けかかってるし、これなら僕でも――」
箱を開けると、いつの間にか男の子の知らない記憶の映像が脳内に流れ始めました。
男の子に出会う前の、はるか昔の魔女の記憶の夢を――
■■■
「玲! 玲! レーイ!! 起きて! 早く起きないと遅刻するわよ!」
「う~ん、もう少しだけ……飛鳥、先行ってて……」
(ここは…………)
「駄目よ玲、あなたいつもそれでお昼過ぎに登校するじゃない! だからあれほど夜に本は読んじゃ駄目って言ったのに!!」
(学院時代の師匠……? それと、この人は……?)
「もう、うるさいなぁ……」
「っ!! 人がせっかく起こしてっ……勅令! 対象捕捉、この赤いナマケモノに罰を! 浮世絵!」
「きゃっ! ちょ! ちょっと待って! わかった! わかったから浮遊魔術はやめて! それ、めちゃくちゃ酔うから!!」
「…………解除。まったく、目は覚めた?」
「うぅ、うえぇ……最悪の目覚めだわ……」
(……あー、これ、師匠の記憶か。もしかして恥ずかしい過去を忘れたいからとか? ある意味禁書より面白い物見つけちゃったな)
「早く着替えて、朝ごはんは用意してあるから」
「ふぁぁぁ、わかったわ……」
男の子が成人を迎える二年前、男の子が14歳の時にあったお話。
自身の今後を、どのように在りたいかを決めた重要な日。
男の子はいつも通り、週に一度の魔女の魔術工房を掃除していました。
「はぁ、なんであの人はこうも……整理という、当たり前の事が出来ないのだろう」
無造作に積み重なる、本、本、本。
魔術研究を行った後でしょうか、床には足場の踏み場がないほどの用紙と、なだれが起きた本が床に散らばっていました。
「毎週の事とは言え、今週は特にひどいな……今回は難しい仕事だからって手伝いはなかったけど、しわ寄せがここに来たか」
今回は疲れそうだなと落ち込む男の子。
しかし、これも修行の一環だと考え直し、本を一冊拾い魔術を行使します。
「一週間前の空間記憶参照、空間座標照合……"物体再配置"」
瞬間、男の子の手元にあった本は姿を消し、元に合った場所と思われる本棚へと移動していました。
繰り返すこと数百回、部屋の中に散らばっていた用紙は一ヵ所にまとめられ、本は元ある本棚に綺麗に並んでいました。
「きっつぅぅ……まあでもこれでやっと拭き掃除ができるな。昼まであと一時間、師匠が起きるまでには終わるかな」
掃除用具を持ってきた男の子は、手慣れた手つきで部屋を掃除していきます。
20分程経つと部屋はピカピカ、掃除前の足の踏み場もない汚い部屋は見る影もありませんでした。
「っし、掃除終了。それじゃあ、本題に取り掛かるか」
男の子は封印の魔術が掛けられている棚へと近寄ります。
禁書が入っているから絶対に開けてはいけないと魔女に言われていますが、ここ数年男の子はどうにかして棚の封印を解こうと試行錯誤してきました。
少しでも早く魔女の魔術の腕に近づきたい一心で封印を解こうとしますが、魔女の封印は強固で手も足も出ません。
そこで男の子は数日前、ある思い付きをします。
外部からの侵入を拒む封印なら、内部からならどうだと。
「空間捕捉、対象……ん? 入ってるのは箱だけ? まあ、いいか……"空間転移"」
男の子の手の平の上に小さな箱が現れます。
取り出した箱は小さく、両手で包みこめれる大きさでした。
「……なんだこれ? この箱にも封印魔術が掛けられてるけど、古いな。封印も解けかかってるし、これなら僕でも――」
箱を開けると、いつの間にか男の子の知らない記憶の映像が脳内に流れ始めました。
男の子に出会う前の、はるか昔の魔女の記憶の夢を――
■■■
「玲! 玲! レーイ!! 起きて! 早く起きないと遅刻するわよ!」
「う~ん、もう少しだけ……飛鳥、先行ってて……」
(ここは…………)
「駄目よ玲、あなたいつもそれでお昼過ぎに登校するじゃない! だからあれほど夜に本は読んじゃ駄目って言ったのに!!」
(学院時代の師匠……? それと、この人は……?)
「もう、うるさいなぁ……」
「っ!! 人がせっかく起こしてっ……勅令! 対象捕捉、この赤いナマケモノに罰を! 浮世絵!」
「きゃっ! ちょ! ちょっと待って! わかった! わかったから浮遊魔術はやめて! それ、めちゃくちゃ酔うから!!」
「…………解除。まったく、目は覚めた?」
「うぅ、うえぇ……最悪の目覚めだわ……」
(……あー、これ、師匠の記憶か。もしかして恥ずかしい過去を忘れたいからとか? ある意味禁書より面白い物見つけちゃったな)
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