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17:大人になったイジワルなお星様
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「ラティ殿下、言いつけ通り参りました」
「ど、どうぞ!」
どんなに鞭に打たれた日も、ケインは毎晩僕の部屋に来てくれます。友達のウィップに会う為に。……いいえ、これは都合の良い僕の解釈ですね。王太子からの「言い付け」で、ケインは今日も僕の部屋に来てくれました。
僕は次期国王。尊い存在なので、誰も僕の命令には逆らえないのです。その事に、僕はホッとしつつも、たまに虚しくなります。僕が次期王でなければ、ケインは僕の所になど来てくれない事は「弁えて」おかねばなりません。
「あぁ、ケイン。来てくれてありがとう」
「ラティ、また泣いてたのか」
「……そんなワケないじゃない。僕も、もう子供じゃないよ」
「ふーん、どうだか」
僕は部屋に入ってきたケインに駆け寄ると、軽口を叩き合いながら、いつものように二人でソファに並んで腰かけます。そして、ケインの肌に付いた傷を見て、改めて自分の出来の悪さに辟易してしまうのです。
「ケイン……ごめんね。ごめん。僕のせいで。こんなに赤くなって……痛い?」
「毎日同じ所を叩かれるから、全然良くなんねーよ。昨日の訓練で出来た傷も治ってねぇのに」
「……ごめん」
ケインは、ただ事実を述べているだけなのに、その言葉にジワリと涙が込み上げてきそうになります。僕が泣くなんて、お門違いも甚だしい。僕は泣きそうなのがケインにバレないように少しだけ俯きました。
「ごめん、ケイン……ごめんね。ごめんなさい」
「あーぁ、俺はいつまでラティの代わりに鞭を打たれなきゃなんねーのかなぁ」
そうやって、ただただ謝る事しか出来ない僕に、ケインの深い溜息が漏れます。その溜息に僕は、情けないやら申し訳ないやら。そんな事を思っていると、ケインの口から最も聞きたくない言葉が聞こえてきました。
「あーあ。フルスタ様付きの鞭打ちなら、俺もこんなに鞭に打たれずに済んだろうに」
「っ!」
フルスタ。
それは僕の腹違いの弟の名前です。僕の母は四歳の頃に病気で亡くなってしまいました。その為、僕のお父様……国王陛下はすぐに、次のお后様を迎え入れられたのです。その二人の間に出来た第二王子の名前が「フルスタ」です。確か、今は十二歳だった筈です。
「弟に聞いたけどさ、フルスタ様は一切問題を間違ったりしないそうだ。むしろ、家庭教師の間違いを指摘するそうだぜ」
「そ、そうなんだ」
僕にケインが付いているように、フルスタにはケインの弟が付いています。なので、最近はよくケインの口からフルスタの名前が出てきます。少し……いや、かなりサイアクな気分です。
「むしろ、家庭教師が鞭に打たれた方が良いって皆で笑ってるらしい」
そう言って、ソファにゆったりと腰かけウィップをパラパラとめくるケインの姿は、出会った頃とは異なり、今や立派な大人の男の人です。
可愛らしかった顔つきはシャープになり、切れ長の目から覗くエメラルドグリーンの瞳は、ケインの精悍な美しさをより際立たせています。ただ、お星さまのようにキラキラと輝く金色の髪の毛は、あの頃のまま。あぁ、とてもきれい。
「しかも、家庭教師が勘違いをして、まだ教えていない部分まで質問してきても普通に答えちまうみたいでさ。そのせいで家庭教師が範囲を間違っている事に気付けないから、むしろ、うちの弟の方が答えられなくて困るって言ってた。な?笑えるだろ?」
「……」
楽しそうに話すケインに、僕は心の中だけで答えます。「そんな話、ちっとも笑えないよ!もう止めて!」と。でも、僕はそれをケインには言えません。言ったら、出来損ないの兄が、たった十二歳の弟に嫉妬している事がバレてしまう。それこそ笑えないからです。
「そ、そうだね。すごく……すごく、おもしろい!」
僕は必死に面白い“フリ”をしていますが、大丈夫でしょうか。ちゃんと笑えているでしょうか。
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