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第1章
覚悟を決めて
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果たして、エリサはそこにいた。
青白い光を、天井に向かって発している転送装置を前にして、エリサは一歩を踏み出す勇気をどこかに求めているように、踏み出そうとしては、引こっめてを繰り返していた。
勇者と最後の戦いをする部屋には、この転送装置に乗って行く必要がある。この部屋にはアークしか入れないはずである。
なぜエリサが入れているのかわからない。しかし、この部屋に入れているのなら、転送装置に乗って、勇者の前に出ることもできるのだろう。
「エリサ待つんだ」
アークは息も絶え絶えに叫ぶ。
エリサは驚いた拍子に、光の中へ入っていきそうになったが、すんでのところで体を引き返した。その表紙に、倒れそうになるエリサをアークは慌てて支えた。
「一体どうなっているんだ」
「すみません。部屋から光が漏れていて、覗いてみたら中に入れそうだったので」
「いや、それはいいんだ。だが、なぜ開いていたのだ。この部屋は、俺しか入れないはずなんだが」
「もしかしてこれが、あなたが言っていた変化じゃないでしょうか」
もしかしたら、本当に世界は変わっているのかもしれない。それも思いもよらぬほど大きな変化を。
「そうかもしれないな。本当にこの世界で何かが起こっているのかもしれない」
「でしたら今回は私が行きます。本当に覚悟を決めました。あなたは休んでいてください」
「何を言う。こんなに足が震えているじゃないか」
「これは武者震いです」
アークは大きな笑い声をあげた。それまでの緊張や不安が嘘のように消え去った。エリサの冗談を久々に聞き、笑いを堪えることができなかった。勇者が来ていることも、これまでまた負けたくないと思い詰めていたことも、どちらもそんな悩みは元々存在していなかったかのように思えた。
至って真面目なエリサも、アークの高笑いにつられて微笑み、それは徐々に大きく、アークの笑いと同調していった。
「もう大丈夫だ。さっき休んだから、体もだいぶ元気になったよ。いつもより軽く動けそうだ。心配かけてすまないね」
「本当にもう大丈夫ですか」
「あぁ、問題ない。エリサは何も心配しなくていい。これは俺の仕事だからね」
「わかりました。あなたなら大丈夫ですよ」
エリサの優しい微笑みが、アークの胸に染みる。この家庭を守るのは、俺の役目だ。父として、夫として、そして魔王として、勇気を持って挑まなければならない。
アークは決意を固めた。
「心配かけてすまない。行ってくる」
しかしアークはそれでもやはり、少し怖かった。負けた瞬間のことが脳裏に浮かび、また繰り返されるのではないかと思ってしまう。それでも、戦わなければならない。これはもはや、自分だけの戦いではないのだ。アーク一家の戦いでもあり、魔王族ひいてはモンスターたち全体での戦いでもある。アークは強くそう思った。だから、独りではない。勇気を持たなければならないのだ。
震えそうになる体を抑えて、転送装置が発する青白い光の中に、一歩踏み込んだ。
青白い光を、天井に向かって発している転送装置を前にして、エリサは一歩を踏み出す勇気をどこかに求めているように、踏み出そうとしては、引こっめてを繰り返していた。
勇者と最後の戦いをする部屋には、この転送装置に乗って行く必要がある。この部屋にはアークしか入れないはずである。
なぜエリサが入れているのかわからない。しかし、この部屋に入れているのなら、転送装置に乗って、勇者の前に出ることもできるのだろう。
「エリサ待つんだ」
アークは息も絶え絶えに叫ぶ。
エリサは驚いた拍子に、光の中へ入っていきそうになったが、すんでのところで体を引き返した。その表紙に、倒れそうになるエリサをアークは慌てて支えた。
「一体どうなっているんだ」
「すみません。部屋から光が漏れていて、覗いてみたら中に入れそうだったので」
「いや、それはいいんだ。だが、なぜ開いていたのだ。この部屋は、俺しか入れないはずなんだが」
「もしかしてこれが、あなたが言っていた変化じゃないでしょうか」
もしかしたら、本当に世界は変わっているのかもしれない。それも思いもよらぬほど大きな変化を。
「そうかもしれないな。本当にこの世界で何かが起こっているのかもしれない」
「でしたら今回は私が行きます。本当に覚悟を決めました。あなたは休んでいてください」
「何を言う。こんなに足が震えているじゃないか」
「これは武者震いです」
アークは大きな笑い声をあげた。それまでの緊張や不安が嘘のように消え去った。エリサの冗談を久々に聞き、笑いを堪えることができなかった。勇者が来ていることも、これまでまた負けたくないと思い詰めていたことも、どちらもそんな悩みは元々存在していなかったかのように思えた。
至って真面目なエリサも、アークの高笑いにつられて微笑み、それは徐々に大きく、アークの笑いと同調していった。
「もう大丈夫だ。さっき休んだから、体もだいぶ元気になったよ。いつもより軽く動けそうだ。心配かけてすまないね」
「本当にもう大丈夫ですか」
「あぁ、問題ない。エリサは何も心配しなくていい。これは俺の仕事だからね」
「わかりました。あなたなら大丈夫ですよ」
エリサの優しい微笑みが、アークの胸に染みる。この家庭を守るのは、俺の役目だ。父として、夫として、そして魔王として、勇気を持って挑まなければならない。
アークは決意を固めた。
「心配かけてすまない。行ってくる」
しかしアークはそれでもやはり、少し怖かった。負けた瞬間のことが脳裏に浮かび、また繰り返されるのではないかと思ってしまう。それでも、戦わなければならない。これはもはや、自分だけの戦いではないのだ。アーク一家の戦いでもあり、魔王族ひいてはモンスターたち全体での戦いでもある。アークは強くそう思った。だから、独りではない。勇気を持たなければならないのだ。
震えそうになる体を抑えて、転送装置が発する青白い光の中に、一歩踏み込んだ。
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