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第26話 妹系女子とマイペースガール
しおりを挟む定期試験が終わり、私たちは穏やかな日常を送っていた。
しかし、そんな安寧な日々を過ごす中で、たった今配られた一枚のプリントがスパイスとして混ざり込んだ。
それは校外学習についてのプリントである。
そう、来週の金曜日に校外学習があるのだ。
私たち一年生の行き先は水族館。学校に集合の後、バスに乗って行くのだが、まぁここら辺は事前に把握していたので問題はない。
私が驚いたのはこっち。
「四人班…」
配布されたプリントの下の方に四人で一班として行動する事が記載されていたのだ。
どうしよう、竜胆さん以外に誘える人がいない…。
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そんなこんなで悩みを抱えながら半日過ごし、現在は既にお昼休みの時間である。
今日は二人ともお弁当なので、教室の私の席で一緒に食べている。
「竜胆さん、校外学習の班どうする~?」
「どうしましょうか。私には宛は無いわ」
「私も無いんだよなぁ」
まぁ竜胆さんと一緒なら他の二人は誰でも良いんだけど…と、そんな事を考えていると私の前の席でお弁当を食べていた二人組が声を掛けてきた。
「ねぇねぇ、お二人さん。話聞こえてきたんだけど校外学習の班員探してるの? もしそうならあたしたちと組もうよ!」
そう言ってきたのは出席番号が私の前の工藤 有咲さんだ。
何度か挨拶程度に言葉を交わした事がある。
私の印象としては、ザ・妹系女子って感じだ。
せっかく席が前後になったので入学時から仲良くなりたいと思っていたが、授業中以外は、ずっと二人組のもう一人の子の席に居るので、なかなか仲を深められずにいる。
ちなみに百四十五センチくらいの低身長でとっても可愛い。髪型はショートカット。
幼い顔立ちをしているので、小学校高学年って言われても信じれる。
…え? 本当に高校生だよね?
「有咲ちゃん、急すぎだよぉ。もっと落ち着いて?」
工藤さんと一緒にいるもう一人は高田 奈緒さん。
眠そうな目が特徴的…っていうかいつも眠いのかな? 頻繁に欠伸をしている姿を目にする。
お姫様カットをしていて、こちらも凄く可愛い。
あと胸が大きい、俗に言うダイナマイトボディってやつだ。こいつは危険だぜ…。
話したことは無いので不正確だが、クラスメイトとして見た感じだと、おっとりしているマイペースガールだと思う。
身長は百五十五センチくらいで、工藤さんと並んでいると姉妹みたいだ。
ともあれ、校外学習の班のお誘いということだが、ちょうど二人組同士だし、こちらとしては願ったり叶ったりだ。
竜胆さんと頷き合い、賛成であることを確認できたので、快く了承する。
「お~、もちろん! 組も組も!」
という事で校外学習の班は、私・竜胆さん・工藤さん・高田さんの四人に決定した。
同じ班になった勢いで、私と工藤さんの机をくっ付けて四人で一緒にお弁当を食べる。
そして、取り敢えず私から順に軽い自己紹介を行った。
「私は小森 華奈、よろしくね!」
「竜胆 朱音よ、よろしく」
「あたしは工藤 有咲だよー、よろしく!」
「私は高田 奈緒です~、よろしくお願いしま~す」
いや~、ここ(※私含め!)顔面偏差値高いな~。
この美少女だらけの空間、居るだけで癒される…。
「工藤さんは、」「あ、有咲でいいよ!」
「あ、分かった。有咲ちゃんはさ、高田さん…奈緒ちゃん? と仲良いよね。入学前から知り合いだったの?」
途中で高田さんを呼んだ時、高田さんに腕をつんつんされてそちらを見ると首をフリフリしてたので、名前呼びに直しながら(奈緒ちゃんって呼んだら頷いてきた。少し不思議ちゃん味があって可愛い)、気になっていたことを聞いてみる。
「あたしとなおちんは幼馴染だよ! 家が隣同士だからずっと一緒なんだー!」
「そうそう、だから有咲ちゃんとは仲良しなの~」
「幼馴染だったのか!」
高校まで一緒って凄いなぁ。
並んでいると姉妹みたいに見えるって言ったけど、それだけ長く一緒に過ごしてるんならもう家族みたいなものなのかな?
「逆にかなちんと朱音っちは? 仲良さげだけど知り合いだったん?」
私のあだ名、かなちんなんだ…。まぁ良いけど。
「いや、高校からだよ。ね、竜胆さん」
「えぇ、入学してから仲良くなったわ」
「えぇ!意外だぁ。仲良いから元々知り合いなのかなってなおちんと話してたのに!」
「んぅ!」
いや、奈緒ちゃん。ご飯をお口に沢山詰めてるだから無理に会話しようとしなくていいんだよ…?
というかそれ、詰め込み過ぎじゃない?
ハムスターの頬袋みたいに膨らんでるけど…。
と、そんな感じで会話をしながらお弁当を食べ、仲を深め合った昼休みであった。
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現在は昼休み明けの五限目、国語の授業中。
考えているのは校外学習についてだ。
いや~、有咲ちゃんと奈緒ちゃんという素敵なメンバーを班に迎え入れることが出来て良かった。
もう今から校外学習が待ち遠しい。
水族館、楽しみだなぁ。
私は特にアザラシが好きだ。海の犬と言われるだけあって、犬にそっくりで愛らしい。
そんなことを考えていると、脳内の猫耳竜胆さんがにゃーにゃーと抗議してくる。
おいおい、いくら竜胆さんが猫っぽいからって猫耳まで付けるか? (呆れ)
私の妄想力、優秀過ぎ、ナイス!(本音)
いや、もちろん犬よりも猫(竜胆さん)の方が愛らしいよ! アイラブユー!
そうやって愛を伝え、ご機嫌を取ると、猫耳竜胆さんは私に擦り寄ってきた。か、可愛い…。
私はこの時、幸福に包まれていた。にやにや。
この後、国語の授業を担当している五十嵐先生に怒られたのは言うまでもないだろう。
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