俺の短編集4

睦月丸

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最後の言葉

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「行ってきます!!」

それが最後の言葉だった。

ー10年前ー
「明日か… 修学旅行。」

「うん!]

「忘れ物、するんじゃないぞ?」

「お父さんに言われたくないよ。」

「それも、そうだな!」


なんてことない会話。
これから先もまだまだできると思っていた。

修学旅行に行くため、学校に向かう途中だった、らしい。


「プルルル…」
携帯が鳴った。


「あの~担任の久保と申しますが…
お子さんのみゆきちゃんは今日は?」


「え?もう、30分も前に学校に向かったはずですが…」

学校までの道を探そうと慌てて支度をしていた時だった。

「プルルルル…」

また、電話が鳴った。

(あ、よかった… 学校についたんだな!)

しかし、その電話は学校からではなかった。

「はい…」

見慣れない番号は病院からの電話だった。

娘は交通事故にあったと聞かされた。
駆け付けた病院では娘は横になっていた。

「先生、娘は大丈夫なんですよね?明日には退院できるんですよね?」

先生は少しだけだまったあと口を開いた。

「お気の毒ですが、、、、
娘さんは助かりませんでした。」

そこからの数分、記憶が飛んでいてない。

車を運転していた男に怒鳴り散らした。
50にもなった親父が本気で。


「ふざけるな!!!わき見運転でつい、、、だと!!?
そんな言葉で納得すると思っているのか!!
娘を返せ!!」


35の時、娘が生まれたばかりなのに妻を病気で失った。
その時も病院で先生に大声を上げた。
妻を助けてくれと、、、
それさえできれば金なんか要らないと。

あれから、毎日神棚の前で返ってくるはずもない質問を妻と娘に問いかけている。

(2人は会えたか? きっと会えたよな… 楽しくやってるよな…)

その答えはいくら聞いても返ってくるはずもないのになんども、なんども聞いている。
そして、今日で娘がいなくなって10年。

今日もいつものように問いかけようとした。
そんな時、

「ピンポーン…」

家のチャイムが鳴った。

(誰だろう…)

郵便屋だった。

(俺宛?)

手紙は病院の先生からだった。


「突然の手紙、すみません。
私はあなたの娘さんがなくなった病院の医師だったものです。
10年経ってもあなたは娘さんのことが忘れられないと思います。
そしてこれからもきっと娘さんのことを忘れられるわけないと思います。
実は私もあなたと同じく息子を交通事故で失くしています。
そんな私のもとに先月ある人が訪ねてきました。
男は信じられないことを私に言いました。」

「息子さんに会いたくはないですか?」


「会いたいに決まっているじゃないですか!!
親は子供に会いたいに決まっています!」

「その願いかなえてあげましょうか?」


「あいにく、私の息子は既に亡くなっています。気休めなら帰ってもらえますか?」

「気休めなどではありません。口で言っても信じてもらえるはずもないでしょう…
試せばわかります。」


私もはじめは胡散臭いなと感じました。
しかし、息子に会えるならとだまされることにしたのです。
すると、驚いたことに数分でしたが息子に会うことができたのです。
もちろん強制はしないのでこの手紙をすぐに捨ててもらっても構いません。
私のところに怒鳴り込んできても仕方ないかもしれません。
ですが、少しでも信じていただけるなら会ってみてください。


怪しみながらも、先生に会いに行くことにした。


(だめでもともとだ。どのみち普通にしていても会うことはかなわないのだから…)


そして、先生に聞きそのある男のもとへ…

「貴様も私の力を信じるか?」

男が先に話し始めた。

「娘に会わせてください。」

声を張り上げずにそっと男に話した。

「私の力を信じるのだな…
いいだろう… 会いたい者を頭の中で思い浮かべるがいい…」


娘のことを思い浮かべようとしたが男の話し方から1人だけではないのかもしれないと感じた。
男に聞くことにした。

「1人でなくてもいいのか?」


「構わないが貴様の体がどうなっても知らんぞ?」

(体がどうにかなる?)

そういえば先生からの手紙に会うための代償について記されてはいなかった。

「今更だけど、代償って?」

「人による… 私にはわからん… だが、場合によっては体が動かなくなることもある。」

息を飲んだ。
それでも、覚悟を決めて妻と娘に会おうと決めた。

「決めたようだな」


「はい…」

「いくぞ…」

妻と娘を思い浮かべた。


二人がうっすらと見え始めた。
見間違えるはずもない。
2人のことを…

「久信さん…」
「お父さん…」

「みゆき、恵梨香」

2人を強く抱きしめた。

「おかえり…」

「ただいま…」

娘も同じくらい泣いていたが妻はそれ以上に泣いていて何を話しているかも聞き取れないほどだった。
そこから、この10年の話、3人で暮らしていた時の話、いろいろ話した。
気が付くと2人の体がどんどん薄くなっていることに気が付いた。

「お父さん… お別れの時間みたい…」

「行かないでくれ!!待ってくれみゆき!」

「あの時、行ったままになってしまってごめんなさい。
ただいまを言えなかった。お父さんに言えなかった…」

「みゆき…」

妻は娘の方に手をかけて首を振った。

「お父さんはきっと許してくれる…
私もあなたたちよりも早くいなくなって見ていたけど…
決して、私に腹を立てずに1人であなたを育てたんだもの…
できれば、こんなに早くにあなたに会いたくはなかったけど
私みゆきにあえてよかったし、今、久しぶりに久信さんに会えて。
もう思い残すことはないわ…」


「お父さん…」

なんて言おうか考えているうちに妻に言われてしまった。
やはり、恵梨香の言葉はしみる。
そう感じたと同時にむすめにも自分の言葉で言わなければならないと決心した。

「みゆき。この10年間神棚の前でずっと考えていたことがある。
それは、お前が向こうで母さんと会えたか。
仲良くやっているか。
それを、毎日考えていた。
そりゃ、もちろん俺もその輪に入りたかったけど口で言うほど死ぬことは簡単なことじゃないと
俺は思っているし、そんな会い方ではかあさんやみゆきに会えないと思っていた。
だから、今日2人のことをこうして見られて本当によかったよ…」

もう涙が止まらなくなっていて果たしてきちんとした言葉で聞き取ってくれているかわからなかった。


「本当に俺が2人に会えるのはまだまだ先だろうけどみゆきが母さんと会えたのを見て俺は満足だ。」
「みゆき、10年かかったけどおかえりが言えて、ただいまが聞けてよかったよ…
そして、今度は父さんの番だな。
行ってきます!」

涙を拭き目を真っ赤にしたまま俺は娘にそういった。
何を伝えたかったのか、どう感じたかは正直わからない。
娘は俺の最後の言葉を聞いた後答えを聞く間もなく消えて行ってしまった。
でも、あの2人ならきっとわかったと思う。
根拠なんてない、でもなんとなく…

その後代償として俺は余命1年の宣告を医者から受けた。
でも悲しくなんてない。
あの2人に会えるのだから。



今度は再び2人に会った時ちゃんと伝わったかを聞くために
そしてたわいもない話をするために
俺は生きていく。







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