幼馴染な魔剣ちゃんと契約した聖剣ちゃんたちと行く追放ライフ~聖剣と契約できたのに、魔剣と関りが発覚して追放されたが、冒険者人生を謳歌する~

椿紅颯

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第三章

第19話『しつこすぎる男は嫌われるぞ』

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「それで、運動するって何をするの?」
「まあ、すぐにわかるさ」

 ご飯を食べ終わった俺たちは、街並みを堪能しつつ移動していた。
 フローラは終始、運動について質問してきているができるだけ話題を逸らしつつ、人の気配がないような行き止まりの場所を探している。

 そして、やっと全ての条件が揃った場所に到着。

「まさか上を目指すなんて言わないでよ?」
「大丈夫、それはない」
「じゃあなん――」
「な、なあフローラだよな……?」
「……」

 3方向が壁で道がなくなっており、人通りがなく日影となっている場所に居た俺たちは、背後からの男の声へ振り返る。

「ああ、本当にフローラだ。生きていたんだな……」

 まずは自己紹介をしてほしいところだけど、泣き崩れて「生きていた」という言葉から逃がしたパーティメンバーだと予想がつく。
 ここまで心配してくれるような人と出会えていたなんて、フローラも冒険者としても活躍していただけじゃなく、周りの人間にも恵まれていたことがわかる。

 よかったじゃないか、とフローラに一言伝えようと思ったが――先ほどまでの明るい表情は伺えなくなっていた。

「わたし、パーティを抜けるわ」
「え……ど、どしてさ!」
「元々そのつもりだったのよ」
「それは嘘だ! ど、どうせ――そいつがフローラをたぶらかしたんだろ!?」
「はい?」
「だって、他にも女の子をふ、2人もナンパしたんだろ!」

 急に話しかけてきたと思えば、これじゃあ逆上しているようにしかみえないぞ。
 というか、フローラがパーティを脱退するという話も初めて聞いたし。
 この人がフローラのパーティメンバーというのは確定したが、脱退することをいいように思っていないのもわかった。

 いや……どちらかというと、残ってくれるよう懇願するような目だ。
 それほどまでに脱退の話が衝撃的で、唐突な話だから取り乱しているのか、それとも別の何かがあるのか……?

「彼は関係……なくはないけど、自分の意思でそう決めたの。わかってちょうだい」
「そんなんで納得できるわけがないだろぉ」
「話が進まないから割り込ませてもらう。あなたは、どうしてフローラを引き留めたいんだ?」
「お前に関係ないだろ! 話に入ってくるな!」
「だとさ」

 どうやら俺を目の敵にしている様子だから、冷静に話を進められそうなセリナへ目線を向けて助けを求める。

「お2人の間にどのような関係性があるかは存じ上げませんが、少なくともフローラが『パーティを脱退したい』と言っています。であれば、契約などがない限りは彼女の意見を尊重するのが道理というものではないでしょうか。少なくとも、命を預け合って戦った――いえ、命を張って皆さんを逃がした功労者に対する礼儀、というものだと思います」
「そ、それは!」
「この状況で引き下がらないというのであれば、彼女に対しての無礼を承知の上で、なおも尊厳すらも傷つける行為を続けるという意思表明をしていることになります。1人の人間として尊重されないとはどういうことか、あなたは本当に意味で理解できていますか?」
「俺はただ!」
「自身の意思も示さず、明確な理由も述べず、ただ感情的に相手を従わせようとする。あまりにもフローラに対して不敬であり、侮辱的な行為ですよ」
「な、なんだっていうんだ! お前も!」

 この場合、さすがと言っていいのかわからないけど一方的な会話になってしまった。
 いや、あくまでもセリナは対話を試みたが、相手が思考を巡らせることなく感情を反射的に吐露しているだけか。

 でも若干怖いのが、冷静沈着に表情を変えることなくただ淡々と会話を進めていることだ。
 もしも俺が村でセリナの頼みを断っていたら、ここまでじゃないにしても言葉攻めを受けていた可能性もあるということか……。

 ほら、あの人だって歯を食いしばってむき出しになっちゃってるよ。

「……ねえ、もういいでしょ。夜には脱退申請をする予定だったから、この話はここでおしまいにしましょう」
「ふ、ふざけるなぁあああああ!」
「――そこまでだ」
「はぁっ!?」

 フローラに突進してくる男の背後に回り、左腕を掴んで捻り上げる。

「痛い! 痛い! 何をしやがるんだてめえ!」
「じゃあ逆に聞くが、俺が止めなかったらフローラに何をするつもりだったんだ」
「うるせえ――いてててて」

 右の肩を掴んで反転し、彼の耳元へ顔を近づけた。

「しつごすぎる男は嫌われるぞ」
「なっ」
「あんた、フローラのことが好きなんだろう?」
「そ、そんなんじゃ……」
「意固地になってもいいことはない。振り向いてもらいたいのなら、一旦引いて冷静に物事を客観的に考えてみるんだ」
「……わかった」
「痛い思いをさせてしまってすまない」

 彼から完全に敵意が消え、一時的にも考えを改めてくれたことに安堵し拘束を解いた。

「もう大丈夫だ」

 彼はそのままトボトボと歩き去っていく。

「もう少し手荒なことをすると思っていたけど、ちょっとした話し合いで解決できちゃうものなの?」
「まあ、圧倒的な心の余裕があるからな」

 チラっとメノウとセリナへ目線を向け、フローラへ戻す。

「ああ、なるほど。言われてみれば確かにその通りね」
「わたくしは、主様の強さがあるからこそ動くまでもないと判断しましたっ」
「そうね。アレンが動き出した瞬間に全てが終わると確信していたもの」
「さすがに持ち上げすぎだろ。自分の力を過信して判断を見誤りそうになるから、あまり褒めないでくれ」
「ですが主様、進言させていただきます。現在の主様は、わたくしとセリナと契約している状況にあり、既にご存じだと思いますが人間の領域を逸脱しております」
「そうね。人類でありながら、神の領域に達していると表現しても過言ではないのよ」

 2人に対して反論したいが、大型モンスターとの戦闘時に跳んで飛んだことを思い出し、首の後ろに手を回して渋い顔をするしかない。
 あんなことをやっておいて、しかもモンスターの肉まで食べられるようになって――身に覚えがありすぎる話だ。

「まあとりあえず、ここから離れるか」
「変なことに巻き込んでしまってごめんなさい」
「人間関係、そう簡単に全部が上手くいかないのが普通っていうか。『困ったときはお互い様』、だろ?」
「アレン……ありがとう」
「気晴らしに街散策を続けよう。いや、モンスター討伐して金策か。お金ないし」
「お金のことなら大丈夫よ。さっきの件を含めて、夜には解決するわ」
「そうなのか?」
「ええそうよ」
「じゃあいいか」

 お金ばかりは、どれだけ俺が強くなろうとも稼ぎ続けなくちゃいけない。
 稼ぐこと自体の難易度は格段と下がったものの、現状ではフローラに奢ってもらってしまっている。
 もしもその言葉通りにならなかったら、夜中にでも金策するか。
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