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第四章
第29話『目を逸らさずに向き合うべき』
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モンスターの大群が襲来! 阿鼻叫喚! 乱戦! 激闘!
「――ひ、ひぇっ!」
と、なることはなく。
確かにモンスターの大群が到来し、小型中型がどれくらいだろうか、100体は居たのではないかと思うが。
もはや今の俺たちが苦戦するはずもなく。
誇張なしで瞬く間に全てのモンスターを駆逐してしまった。
そして今、彼は完全に腰が抜けて立ち上がることすらできずに地面を擦って後退りしている。
「なんなんだよぉもう! なんでそんなに強いんだ!」
「その気持ちだけはよくわかる」
「ちくしょぉ」
実行犯のあなたが理不尽に歪む表情は理解できないが、目の前で繰り広げられる圧倒的な力による力の行使に驚愕する気持ちは理解できる。
俺も未だかつて目の当たりにしたことがなかったから、自分も含めてこんなことになるとは思ってもみなかったが。
「さて、これからどうしたものか」
「フローラ、ゆ、許してくれ。ただ、一緒に居たかっただけなんだ」
「……今までの関係や行い、好意を抱いてくれていたことを加味して許すことはできる」
「ありがとうフローラ……」
「でも、あなたを赦すことはできない」
「へ……?」
今こうして話をしているフローラは苦しそうにしている。
胸の前で自分の手を握り、感情を抑えようと力を加えていて。
楽しかった思い出があるからこそ強く突き放すことはせず、そこから状況が悪くならないようにパーティ解散の道を選び。
きっとフローラは、こんな状況になってしまったことを自分のせいだと思っているはず。
その考え方には一理あるのかもしれないが――こうやっていつまでも自分のことしか考えていない元仲間に対し、まだ優しく接しようとしている。
俺が直接手を出してしまってはフローラの後悔は払拭できない。
あまりにもどかしく、今すぐにでも目の前に居る男をぶん殴ってやりたい気分だ。
「わたしが赦すことができないのは、魔法を扱えるようになったことでも、付きまとっていることでもない」
「じゃ、じゃあなんだって言うんだぁ!?」
「まだわからないのね……」
「わからない、わからないさ! だ、だってフローラさえ居てくれたらそれでいいんだ。他には何もいらない。フローラのために人生を捧げる、ただその一心で尽くそうとしているのに――」
フローラは深くため息を吐き出した。
「あなたは、わたしの大切な仲間の命を奪おうとした」
「は、はぁ?」
「パーティみんな、そしてここに居るみんな。そして、あなたも命に代えてでも助けたいと思っていたその1人だったのよ」
「……」
「全て未遂に終わったとしても、それは奇跡的なもの。ちゃんと罪を償って罰を受けてちょうだい」
「――裏切りやがってぇ! このぉ!」
街で会ったときみたいに走り出そうが、俺が――。
『主様、お待ちを』
メノウからの一言に、足を止めてしまった。
「わたしだって怒ってるんだから!」
「がはっ――」
フローラの右拳が強烈な一撃となり、向かってきた顔面に叩き込まれ――反動で後頭部を地面に強打した。
そして起き上ることも声を上げることもなく、白目をむいて気絶してしまったようだ。
「本当に、こんなことをさせないでって。ずっと訴えていたのに」
振り抜いた右腕は震え、今にも泣きだしそうなぐらい悲しそうな顔をしているフローラ。
俺も同じ立場であったら、同じことをしたと思う。
彼だって最初はみんなと仲良くしたり協力したりしていたんだろう、だからこそ今こうしてフローラは胸を痛めているんだ。
どこで道を踏み外したのか――いや、自分の欲望へ忠実に進み始めてしまったのか。
人を好きになる、その点に関しては何も悪いことはなく責められるようなことじゃない。
だが、進むべき道を間違い取るべき選択や行動を誤れば、もはやそれは相手のためではなく自分よがりになってしまうだけだ。
「お疲れ様」
「うん……ありがとう」
「さて、これからどうするか。街までは俺が運ぶとして、事情説明や立ち合いまではいいとして」
「さっきはああ言ったけど、引き渡しの件は大丈夫よ。ギルドの人が代わりにやってくれるから」
「そうなの?」
「ええ。もはや状況も事情も必要じゃないかもね。だって、見たらわかるだろうし」
言われてみたら、それもそうか。
じゃあ手筈通りに進めるとして。
別のところで気になるところもあるな。
「なあメノウ、なんでさっき俺を止めたんだ?」
「え?」
「ちなみに私も動く必要はないと判断したわ」
「主様は、最初からわかっていたと思います」
「……まあな」
「この件は、フローラが落とし前をつける必要があって。罪悪感を残させないため、主様も手も口も出さなかったはずです」
なんていうか、いつもの感じが印象付いてしまっているから真面目な対応をされると困ってしまうんだよな。
「そうだったの……?」
「ああ」
「補足として伝えるなら、主様はずっと堪えていたの。感情を殺すように拳を握り締め続けて」
「アレン……」
「かつての仲間とはいえ、大切にできないどころか命を奪おうとした行為は許されるものじゃない。だがそれよりも、築かれた絆や想いを裏切る行為は一番許せなかったんだ」
「ええ、そうね」
そして、その気持ちを人一倍持っているフローラだからこそ、俺は俺よりも聖騎士に相応しい人間はフローラだと思っていた。
正義感、という言葉で収まりきらないほどの熱い想いと心は、本当に誰よりも強く堅く誇り高いものだと思っている。
「なあメノウ、とりあえず今のままで居た方がいいんじゃないか?」
「なんのことでしょうか!」
「おい、抱き着くな」
「この流れは褒めていただけると思いまして!」
「わかったから離れろ。よくやったぞメノウ、よーしよし」
「ありがとうございます主様!」
事細かく説明したいが、今は頭を撫でながら褒めるしかない!
力が強すぎて引き剥がすことはできないし、さっさと満足してくれ!
「大丈夫じゃないと思うけど、気負い続けるのはやめましょう。めそめそされていると危ないから」
「ありがとうセリナ。そうよね。これ以上の迷惑はかけられないから、足を引っ張らないようにしないと」
「ええ、その意気よ」
さすがセリナ、俺は上手く言葉に出せなかった想いを優しすぎず伝えてくれた。
気遣い上手で落ち着いていて、幼馴染がセリナで本当によかったよ。
今の力強く抱き着いてきているメノウ同様に、とんでもない力でモンスターを蹂躙し続ける姿は別人にしか見えないけど――まあ、それはそれということで。
いや本当に、メノウの抱き着く力強っ。
「メノウ! 木の皮を縄みたいにして持ってきたらもっと褒めるぞ!」
「本当ですか主様!」
「ああ、本当さ」
「ではいってきます!」
剛力から解放され方と思えば、ぴゅーんっと走り去って行くメノウ。
「まだ日は高いが、街に戻るか」
「そうね」
「うん」
「――ひ、ひぇっ!」
と、なることはなく。
確かにモンスターの大群が到来し、小型中型がどれくらいだろうか、100体は居たのではないかと思うが。
もはや今の俺たちが苦戦するはずもなく。
誇張なしで瞬く間に全てのモンスターを駆逐してしまった。
そして今、彼は完全に腰が抜けて立ち上がることすらできずに地面を擦って後退りしている。
「なんなんだよぉもう! なんでそんなに強いんだ!」
「その気持ちだけはよくわかる」
「ちくしょぉ」
実行犯のあなたが理不尽に歪む表情は理解できないが、目の前で繰り広げられる圧倒的な力による力の行使に驚愕する気持ちは理解できる。
俺も未だかつて目の当たりにしたことがなかったから、自分も含めてこんなことになるとは思ってもみなかったが。
「さて、これからどうしたものか」
「フローラ、ゆ、許してくれ。ただ、一緒に居たかっただけなんだ」
「……今までの関係や行い、好意を抱いてくれていたことを加味して許すことはできる」
「ありがとうフローラ……」
「でも、あなたを赦すことはできない」
「へ……?」
今こうして話をしているフローラは苦しそうにしている。
胸の前で自分の手を握り、感情を抑えようと力を加えていて。
楽しかった思い出があるからこそ強く突き放すことはせず、そこから状況が悪くならないようにパーティ解散の道を選び。
きっとフローラは、こんな状況になってしまったことを自分のせいだと思っているはず。
その考え方には一理あるのかもしれないが――こうやっていつまでも自分のことしか考えていない元仲間に対し、まだ優しく接しようとしている。
俺が直接手を出してしまってはフローラの後悔は払拭できない。
あまりにもどかしく、今すぐにでも目の前に居る男をぶん殴ってやりたい気分だ。
「わたしが赦すことができないのは、魔法を扱えるようになったことでも、付きまとっていることでもない」
「じゃ、じゃあなんだって言うんだぁ!?」
「まだわからないのね……」
「わからない、わからないさ! だ、だってフローラさえ居てくれたらそれでいいんだ。他には何もいらない。フローラのために人生を捧げる、ただその一心で尽くそうとしているのに――」
フローラは深くため息を吐き出した。
「あなたは、わたしの大切な仲間の命を奪おうとした」
「は、はぁ?」
「パーティみんな、そしてここに居るみんな。そして、あなたも命に代えてでも助けたいと思っていたその1人だったのよ」
「……」
「全て未遂に終わったとしても、それは奇跡的なもの。ちゃんと罪を償って罰を受けてちょうだい」
「――裏切りやがってぇ! このぉ!」
街で会ったときみたいに走り出そうが、俺が――。
『主様、お待ちを』
メノウからの一言に、足を止めてしまった。
「わたしだって怒ってるんだから!」
「がはっ――」
フローラの右拳が強烈な一撃となり、向かってきた顔面に叩き込まれ――反動で後頭部を地面に強打した。
そして起き上ることも声を上げることもなく、白目をむいて気絶してしまったようだ。
「本当に、こんなことをさせないでって。ずっと訴えていたのに」
振り抜いた右腕は震え、今にも泣きだしそうなぐらい悲しそうな顔をしているフローラ。
俺も同じ立場であったら、同じことをしたと思う。
彼だって最初はみんなと仲良くしたり協力したりしていたんだろう、だからこそ今こうしてフローラは胸を痛めているんだ。
どこで道を踏み外したのか――いや、自分の欲望へ忠実に進み始めてしまったのか。
人を好きになる、その点に関しては何も悪いことはなく責められるようなことじゃない。
だが、進むべき道を間違い取るべき選択や行動を誤れば、もはやそれは相手のためではなく自分よがりになってしまうだけだ。
「お疲れ様」
「うん……ありがとう」
「さて、これからどうするか。街までは俺が運ぶとして、事情説明や立ち合いまではいいとして」
「さっきはああ言ったけど、引き渡しの件は大丈夫よ。ギルドの人が代わりにやってくれるから」
「そうなの?」
「ええ。もはや状況も事情も必要じゃないかもね。だって、見たらわかるだろうし」
言われてみたら、それもそうか。
じゃあ手筈通りに進めるとして。
別のところで気になるところもあるな。
「なあメノウ、なんでさっき俺を止めたんだ?」
「え?」
「ちなみに私も動く必要はないと判断したわ」
「主様は、最初からわかっていたと思います」
「……まあな」
「この件は、フローラが落とし前をつける必要があって。罪悪感を残させないため、主様も手も口も出さなかったはずです」
なんていうか、いつもの感じが印象付いてしまっているから真面目な対応をされると困ってしまうんだよな。
「そうだったの……?」
「ああ」
「補足として伝えるなら、主様はずっと堪えていたの。感情を殺すように拳を握り締め続けて」
「アレン……」
「かつての仲間とはいえ、大切にできないどころか命を奪おうとした行為は許されるものじゃない。だがそれよりも、築かれた絆や想いを裏切る行為は一番許せなかったんだ」
「ええ、そうね」
そして、その気持ちを人一倍持っているフローラだからこそ、俺は俺よりも聖騎士に相応しい人間はフローラだと思っていた。
正義感、という言葉で収まりきらないほどの熱い想いと心は、本当に誰よりも強く堅く誇り高いものだと思っている。
「なあメノウ、とりあえず今のままで居た方がいいんじゃないか?」
「なんのことでしょうか!」
「おい、抱き着くな」
「この流れは褒めていただけると思いまして!」
「わかったから離れろ。よくやったぞメノウ、よーしよし」
「ありがとうございます主様!」
事細かく説明したいが、今は頭を撫でながら褒めるしかない!
力が強すぎて引き剥がすことはできないし、さっさと満足してくれ!
「大丈夫じゃないと思うけど、気負い続けるのはやめましょう。めそめそされていると危ないから」
「ありがとうセリナ。そうよね。これ以上の迷惑はかけられないから、足を引っ張らないようにしないと」
「ええ、その意気よ」
さすがセリナ、俺は上手く言葉に出せなかった想いを優しすぎず伝えてくれた。
気遣い上手で落ち着いていて、幼馴染がセリナで本当によかったよ。
今の力強く抱き着いてきているメノウ同様に、とんでもない力でモンスターを蹂躙し続ける姿は別人にしか見えないけど――まあ、それはそれということで。
いや本当に、メノウの抱き着く力強っ。
「メノウ! 木の皮を縄みたいにして持ってきたらもっと褒めるぞ!」
「本当ですか主様!」
「ああ、本当さ」
「ではいってきます!」
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「まだ日は高いが、街に戻るか」
「そうね」
「うん」
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