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失敗しても一人じゃない

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 大会も始まり、競技の結果が出ている人も居る。
 その中には予選敗退した人、決勝に進めた人も居る。
 その中には不本意ながら予選落ちした人も含まれる。


「はぁ、本当に最悪です。親になんて言ったら良いのでしょう……」

 応援合戦の最中、テント内に居る彩智が気になり足を運んだ。
 すると、予想通りに膝を抱え込んで、暗いオーラを身に纏った彩智が居た。

「まあ、そんなに落ち込むなって、本番は次の大会からだろ?」
「そうかもしれないですけど、フライングで失格。それにより記録無しって……はぁ……」

 今回のような大会は一日で日程が終了するため、800m以上の種目はタイム決勝という判定になることがある。

「まあすぐに立ち直るのは無理だろうけど、みんなの応援していれば気も晴れるぜ」
「そうですか……」
「一緒に練習してきた仲間だし、彩智が泳いでいた時もみんなで応援してたんだぜ。落ち込んでる暇があったら、みんなの気持ちに報いてやるのも悪くないだろ?」
「――そう……ですね。うん、直輝が言ってることは正しいです。私、みんなを応援します」
「よし来たっ。じゃあ行く――」

 テントの入り口から立ち去ろうとした時、彩智に腕を掴まれた。

「そ、その前にお願いしたいことがあります」
「どうしたの」
「来週のどこかで……いや、土曜日ぐらい空いてませんか?」
「空いてるよ」
「じゃあ、そこで打ち上げをしましょう」
「お、いいね」
「私の家で」

 ん、なんだこの流れ、さっきも似たようなことが起きたような。

「もしかして、お泊りとか言いませんよね?」
「おっ! それは良い案ですね。直輝は天才ですか? それ採用で!」
「え、でも男と――」
「よしっ! やる気が出てきました! 残りの種目も頑張れます!」

 あー、はい。これは何を言っても聞いてもらえないやつですね。
 あれ……てことは、俺の来週末ってかなりハード?
 ギリギリ日曜日だけが休めるからセーフか。

 キョトンとした俺は置いてけぼりにされ、彩智は先程のテンションとは真逆に、ウキウキの鼻歌交じりでみんなのところへ向かって行った。
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