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第四章
第24話『本日の活動は午後からですよね?』
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三連休も終わり、本日から探索者としての生活が再開。
いつもは休日だろうと連休だろうと、頑張って空き時間を捻出してゲーム実況などをして目標達成に向けてひた走ってきていた。
だからこそ今回の連休みたいに充実しているだけではなかったから、ゆっくりと休日を謳歌したのは久しぶりであり、そのおかげで気持ちも晴れ晴れしている。
「外出前に家事も済んだことだし、ちょっとだけ休憩でも――ん?」
スマホからの着信音が部屋中に響いた。
電話をかけてきたのは芹那。
「はいもしもし、どうかした?」
「えっと、気になる情を手に入れてね。それの提案をしようと思ったの」
「今日から活動が再開するんだし、そのタイミングじゃダメなの?」
「それでもよかったんだけど、急に言われたらビックリすると思ったから。後、たぶん早めに申請しないといけないだろうから」
「申請?」
「えっとねー」
カチカチカチッと、聞き馴染みのあるマウスクリック音が聞こえてくる。
「一応は目を通して観たんだけど、詳しくは現地に行って聞いたりした方がいいと思うけど」
「大変そうな話じゃないことを願う」
「最初に結論を言うと、珍しい装備を手に入れた時のために能力テストできる制度があるんだって。受けられる場所は探索者連盟支部」
「ほほう」
「申請自体は電話一本でできるだって」
和昌は、受付嬢達の嫌そうに顔をしかめているのが容易に想像できてしまった。
言葉にするならば、単なる厄介払い。
「……まあそうだよな。高価な装備というのがわかっているだけで、それ以外の能力は明確になってないし、タイミング的にはちょうどいいのかもしれない」
「ね。珍しい装備の中には、使用者の心を汚染するものとかあるらしいし。能力を暴走させないためにも必要だと思って」
「本当にその通りだ。使用者である俺が能力を理解していないと、みんなに危害が加わっちゃうかもしれないからな」
和昌は気になる単語へ反応する。
「『心を汚染する』か。確かに、装備が強すぎると欲に溺れたりする人がでてくるんだろうな」
「まあね。そこら辺はアニメとかゲームとかでも同じだよね。強力な装備を手に入れた途端、自分も強くなった気になって自分勝手にあられ始める人」
「あるあるすぎて違和感もない話だ……だけど、もしかしたら自分もそうなってしまう可能性があるっていうのは怖い話でもある」
「自覚があるんだし、そういう人達の末路を知っているからカズは大丈夫でしょ」
「今後どうなるかわからないし、そうなったら芹那が俺に説教をしてくれよ」
「大丈夫よ。絶対、そんなことにはならないから」
芹那は和昌がそのような事にならない、と確信しているからこそ、そう言い切る。
「なんでそう言い切れるんだよ。俺は、大炎上を経験している張本人なんだぞ」
「でも、身に覚えがないんでしょ?」
「それはそうだが……」
「少なくとも、私に一度でも嘘を吐いたことがあるの?」
「ないけど」
「長年……じゃないにしろ、近くで観ていたんだからそれぐらいわかるわよ。目標を達成するために、ただがむしゃらに取り組むだけじゃなく計画を立ててやってた。全力でやってるのはすぐにわかったし、自分の動画作りに誇りをもって真摯に向き合ってた」
「……」
「そんな人間が、裏では誰かの悪口を言っていたり、誰かを陥れるはずがない。一生懸命にやりたいことをやっている人間が、そんな余計な時間を過ごせるはずがない」
現実の世界で、初めてできた意気投合できる友達だった芹那。
今発言した内容は和昌の心に響いた。と、同時に自責の念に駆られた。
和昌は誰にも負けない気迫で動画作りを行ってきた。それと同じくして動画作りを楽しんでいたのは事実。
しかし、意気統合しただけではなく、ここまで和昌という人間を理解してくれていた芹那との関係を蔑ろにしていたのもまた事実であった。
何事にも熱中し過ぎると視野が狭くなってしまう。というのは珍しい話ではない。
だとしても、そんな理解者を遠ざけてしまっていた事に責任を感じないというのはあまりにも失礼な話だ。
「そんで、どうせカズのことだから――一緒に切磋琢磨し合った仲間の危機を、もしかしたら助けられるかもしれない。なんて、思ってたんじゃないの」
「うっ」
「同情するな、っていう方が無理な話だってのはわかるけどね。でもそれはさすがにお人好しすぎるから、やめておきなさいよ」
「……」
「今は、他人の事よりも自分の事が優先よ。もしかしてその装備が金額だけじゃなかった時、それはもうとんでもない話になるんだから」
「だ、だよな」
どうしてそんなことまでわかるんだ、というほど自分を理解してくれている芹那の言い分に従う他ない。
まるで自分の脳内を覗き込まれているかと思ってしまうほどではあるが、実際にその通りでしかないのだから。
「じゃあ、パーティメンバーが申請して大丈夫みたいだからやっておくね」
「ありがとう」
「それと合わせて、今日の狩りはじゃんじゃん使ってみてもいいんじゃないかな」
「いやぁ……それはちょっと怖いというか」
「でもさ、その装備を売らないで使うって決めてるんだだったら、使わないと損じゃない? 危険性については、たしかに未知数って感じではあるけど。もったいないでしょ」
「それはそうなんだけどなぁ」
「宝の持ち腐れって言葉もあるでしょ?」
危険性を確認できていない、という点も心配ではあるが……やはり『高額な装備を破損させてしまったらどうしよう』という気持ちの方が強い。
しかし、芹那から言われているのも本当にその通りである。
「わかった、ガンガン使ってみるよ」
「その意気。ゲーム用語でもあるからね、ラストエリクサー症候群って」
「あるあるすぎて、ぐうの音も出ない」
「じゃあまた後で」
「おう。それじゃ」
通話終了。
「少し気が引けるけど……覚悟を決めて、やってみるか」
と、意を決した和昌は準備に取り掛かり始めた。
いつもは休日だろうと連休だろうと、頑張って空き時間を捻出してゲーム実況などをして目標達成に向けてひた走ってきていた。
だからこそ今回の連休みたいに充実しているだけではなかったから、ゆっくりと休日を謳歌したのは久しぶりであり、そのおかげで気持ちも晴れ晴れしている。
「外出前に家事も済んだことだし、ちょっとだけ休憩でも――ん?」
スマホからの着信音が部屋中に響いた。
電話をかけてきたのは芹那。
「はいもしもし、どうかした?」
「えっと、気になる情を手に入れてね。それの提案をしようと思ったの」
「今日から活動が再開するんだし、そのタイミングじゃダメなの?」
「それでもよかったんだけど、急に言われたらビックリすると思ったから。後、たぶん早めに申請しないといけないだろうから」
「申請?」
「えっとねー」
カチカチカチッと、聞き馴染みのあるマウスクリック音が聞こえてくる。
「一応は目を通して観たんだけど、詳しくは現地に行って聞いたりした方がいいと思うけど」
「大変そうな話じゃないことを願う」
「最初に結論を言うと、珍しい装備を手に入れた時のために能力テストできる制度があるんだって。受けられる場所は探索者連盟支部」
「ほほう」
「申請自体は電話一本でできるだって」
和昌は、受付嬢達の嫌そうに顔をしかめているのが容易に想像できてしまった。
言葉にするならば、単なる厄介払い。
「……まあそうだよな。高価な装備というのがわかっているだけで、それ以外の能力は明確になってないし、タイミング的にはちょうどいいのかもしれない」
「ね。珍しい装備の中には、使用者の心を汚染するものとかあるらしいし。能力を暴走させないためにも必要だと思って」
「本当にその通りだ。使用者である俺が能力を理解していないと、みんなに危害が加わっちゃうかもしれないからな」
和昌は気になる単語へ反応する。
「『心を汚染する』か。確かに、装備が強すぎると欲に溺れたりする人がでてくるんだろうな」
「まあね。そこら辺はアニメとかゲームとかでも同じだよね。強力な装備を手に入れた途端、自分も強くなった気になって自分勝手にあられ始める人」
「あるあるすぎて違和感もない話だ……だけど、もしかしたら自分もそうなってしまう可能性があるっていうのは怖い話でもある」
「自覚があるんだし、そういう人達の末路を知っているからカズは大丈夫でしょ」
「今後どうなるかわからないし、そうなったら芹那が俺に説教をしてくれよ」
「大丈夫よ。絶対、そんなことにはならないから」
芹那は和昌がそのような事にならない、と確信しているからこそ、そう言い切る。
「なんでそう言い切れるんだよ。俺は、大炎上を経験している張本人なんだぞ」
「でも、身に覚えがないんでしょ?」
「それはそうだが……」
「少なくとも、私に一度でも嘘を吐いたことがあるの?」
「ないけど」
「長年……じゃないにしろ、近くで観ていたんだからそれぐらいわかるわよ。目標を達成するために、ただがむしゃらに取り組むだけじゃなく計画を立ててやってた。全力でやってるのはすぐにわかったし、自分の動画作りに誇りをもって真摯に向き合ってた」
「……」
「そんな人間が、裏では誰かの悪口を言っていたり、誰かを陥れるはずがない。一生懸命にやりたいことをやっている人間が、そんな余計な時間を過ごせるはずがない」
現実の世界で、初めてできた意気投合できる友達だった芹那。
今発言した内容は和昌の心に響いた。と、同時に自責の念に駆られた。
和昌は誰にも負けない気迫で動画作りを行ってきた。それと同じくして動画作りを楽しんでいたのは事実。
しかし、意気統合しただけではなく、ここまで和昌という人間を理解してくれていた芹那との関係を蔑ろにしていたのもまた事実であった。
何事にも熱中し過ぎると視野が狭くなってしまう。というのは珍しい話ではない。
だとしても、そんな理解者を遠ざけてしまっていた事に責任を感じないというのはあまりにも失礼な話だ。
「そんで、どうせカズのことだから――一緒に切磋琢磨し合った仲間の危機を、もしかしたら助けられるかもしれない。なんて、思ってたんじゃないの」
「うっ」
「同情するな、っていう方が無理な話だってのはわかるけどね。でもそれはさすがにお人好しすぎるから、やめておきなさいよ」
「……」
「今は、他人の事よりも自分の事が優先よ。もしかしてその装備が金額だけじゃなかった時、それはもうとんでもない話になるんだから」
「だ、だよな」
どうしてそんなことまでわかるんだ、というほど自分を理解してくれている芹那の言い分に従う他ない。
まるで自分の脳内を覗き込まれているかと思ってしまうほどではあるが、実際にその通りでしかないのだから。
「じゃあ、パーティメンバーが申請して大丈夫みたいだからやっておくね」
「ありがとう」
「それと合わせて、今日の狩りはじゃんじゃん使ってみてもいいんじゃないかな」
「いやぁ……それはちょっと怖いというか」
「でもさ、その装備を売らないで使うって決めてるんだだったら、使わないと損じゃない? 危険性については、たしかに未知数って感じではあるけど。もったいないでしょ」
「それはそうなんだけどなぁ」
「宝の持ち腐れって言葉もあるでしょ?」
危険性を確認できていない、という点も心配ではあるが……やはり『高額な装備を破損させてしまったらどうしよう』という気持ちの方が強い。
しかし、芹那から言われているのも本当にその通りである。
「わかった、ガンガン使ってみるよ」
「その意気。ゲーム用語でもあるからね、ラストエリクサー症候群って」
「あるあるすぎて、ぐうの音も出ない」
「じゃあまた後で」
「おう。それじゃ」
通話終了。
「少し気が引けるけど……覚悟を決めて、やってみるか」
と、意を決した和昌は準備に取り掛かり始めた。
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