【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第四章

第30話『能力を知れたことは、かなりの収穫だ』

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「それにしてもさっきのすっっっっごかったね」

 と、鼻息荒く前のめりに話をする真綾。

「値段のことを聴いた時はさすがに驚いたけどね」
「たしかに!」

 時刻は12時30分。
 お昼時のファミレス、店内には様々な客が食事を楽しみながら賑やかな空間となっている。

「もっと早めに伝えておけばよかったとは思ってたんだけど、遅れてごめん」
「いやいや、自分が和昌くんの立場だったら同じ風にしてたと思うもん。全然気にしないで」
「そうね。あそこまで高額になると、どんな反応をされちゃうかある程度は予想できるし」
「俺も最初、この装備の鑑定結果を伝えられてた時は夢なんじゃないかって思った」
「だよね~」


「だけど気になっていることはあるんだよね。どうして、芹那だけに伝えてあったのかな?」
「そこは私も気になってる」

 一瞬、和昌の心臓がキュッと握られた気分になり、表情が引きつる。

「芹那とは前からの知り合いだったから、話をしている流れで言っちゃったんだ」
「まあそうね。その時は、私も2人と全く同じ反応をしたものよ」
「そういう感じ」

 真綾と天乃は、「ふぅーん」と口を揃えてジト目で視線を向けてきている。

「本当だって。芹那とは学校が一緒で、中学1年の時に一緒のクラスで意気投合したのがきっかけなんだ」
「お、同じ学校……」
「それを言われると疑いようがないね」
「ぐぬぬ」

 天乃は鼻から息を抜き、真綾は理由が納得できても悔しがっている。

「と、とりあえずご飯を食べ始めよう」

 既に注文した食べ物は運び込まれていた。

 それぞれは手を合わせ、「いただきます」。

「いろいろ凄かったけど、装備についていろいろと知れたのは大きな収穫だったと思う。芹那、提案してくれてありがとう」
「いいよこれぐらい。でもあの感じ、探索者連盟が管理している割には不親切よね。レア装備を偶然にも手に入れたといっても、カズは初心者なのに」
「そう言われてみればそうだけど、実際のところは厄介払いって感じだろ。あっち側からすれば、こんな装備を持ち歩いている人間とはできるだけ関わりたくないだろうし」
「総合的にはそうかもしれないけど、初心者だからこそ、もっと危険な状況に陥るってことだってあるわけじゃない」
「自分で言うのもなんだけど、問題に巻き込まれる確率は高いだろうな。初心者だからこそ」
「でしょ」

 芹那が話す内容は、非の打ち所がない。

 レア装備以外は装備を持ち歩けないからこそ、それを知っている人間は狙いを定めて近づいてくる可能性だってある。口車に乗せられて装備を奪われたり、目を離している隙に盗まれる可能性だったりも。

 初めて出会った人間が、真綾と天乃のような純粋な探索者であったからよかったものの……こういった出会いでさえ仕組まれてしまう事だってあり得たわけだ。
 2人もほぼ初心者だったからというのもあるが、窃盗するためだけに探索者になるという輩も居ないわけじゃない。

「探索者を護り、管理するのが探索者連盟だっていうのに。詳しいことはわからないけど、逆に、レア装備を手に入れた探索者は軒並みああいった対応をされるのかもしれないけど」
「もしそれが本当だったら、悲しい話ではあるけどな」

 デミグラスソースがかけられているオムライスを頬張りつつ、和昌はふと思う。

「ゲームとかって話になるけど、こういった珍しい装備を手に入れた人物って、特殊な依頼を受ける宿命にあるってのがあるよな」
「そういった物語は珍しい話じゃない。現実でもそういったことがあるかもだけど、まさか新米探索者に危険な依頼は回されないんじゃない?」
「アニメとか映画とかでもそういう話はあるよね。装備は強くても、相手もそれ相応に強いけど」
「相手にする装備によって違うし、それが素人じゃない可能性が高いって話だからな。もしも俺が対応しなくちゃならなくなった場合、怖すぎて逃げ出す自信はある」
「あそこまで凄い装備を所有している人間のセリフではないわね」

 ゲームなどの話題に移ったものだから、天乃も話題に入ってくる。
 しかし悲しいことに真綾だけは蚊帳の苑で、チャーハンを運び終えたスプーンを加えて視線だけを送り続けていた。

「で、でもさ。さっき、初めてしっかりと見てたけど剣と盾の能力が凄かったよね」

 と、会話の中に入ろうと模索した真綾は、なんとか話題を戻そうと試みる。

「本当に、凄すぎる。盾の機能性は多種多様すぎるし、強固すぎる。剣の方は、もうなんというか言葉がみつからない」
「うんうんっ。盾は使い方次第ではもっと可能性がありそうだったよね」
「剣の方は、ぶっちゃけヤバすぎるって話だけど」
「使っていた俺でも、あんまり理解はできてないからな」

 何を呑気な事を言っているんだ、と部外者に聞かれたらそう思われるかもしれないが、あの光景を目の当たりにした当事者であれば、和昌が思っていることを理解できている。
 理屈でどうこうって、簡単に説明できる内容ではなかった。

「受付嬢の人に避難する様に言われたけど、あの瞬間じゃ逃げても間に合わなかったよね」
「あの瞬間、『あ、部屋が壊れる』ってことしか考えられなかったね」
「私も同じことを思ってた。『あー、これ終わった』って」
「本当に申し訳ない。俺も、無我夢中で制御できるかもわからなかったんだ」

 あの瞬間の感情を、和昌は思い出す。
 今でも繊細に憶えている、目の前から突進してくる恐怖。そして、高鳴る鼓動。
 いくら相手が中ボス、というそこまで珍しくない種類のモンスターだったとしても、記憶として残っていた【サルイ】は和昌にとって強敵であった。

 恐怖の象徴との対峙、そして願いと渇望。

 様々な感情が渦巻き、ただ勝利を欲していた。

「でもさ、物体というか作り物とかには影響が出ないってわかったのはかなりの収穫なんじゃないかな。もしも地上のどこかであの力をぶっ放したとしても、建物を吹き飛ばさないで済むんだし」

 鼓動が早まり始めているのを感じ、それを治めるように和昌はコップに注がれている水を一気に飲み干す。

「そんな怖いことを言うのはやめてくれよ。てか、俺が地上で剣の能力をぶっ放すってどういう状況だよ」
「まあそうね。もしもそんなことがあったら、それこそ勘弁してほしい状況よね」
「そろそろ込み始めて来ているから、早めに食べちゃお~」
「いろいろと話し過ぎちゃったね」
「だな」

 一行は食べることに専念し、店を後にした――。
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