【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第五章

第31話『強力な装備につき、ブラックリストに載る』

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 午前9時。

「本日はお忙しいところ、お越しいただきありがとうございます」

 和昌は、電話連絡によって呼び出しをくらって探索者連盟支部に足を運んでいた。

「それで……なんだか似たような展開を数日前に体験したような気が」

 2人が居る空間は、装備の鑑定後に受け渡しの際に使用された部屋だった。
 装備の金額を初めて耳にした場所であるから、見慣れていないにしろ、簡単には忘れることができていない。

「装備の査定、鑑定、能力テストを終えての重要な報告があります」
「なんだかもうこういう展開に慣れてきている自分が居て、ある程度はなんでも来いって感じになってきています」
「それはありがたいですね。では、早速」

 互いに1人掛けのソファに腰を下ろし、互いに肘を突いたとしても距離がとれる四角い机。その上へ裏返しになっている書類が用意されている。

 前回とは違い、対面している相手に緊張の色は見えない。だからこそ、和昌もリラックスできていた。

葭谷よしたに和昌かずあき様が手に入れた装備を総合的に判断し、ブラックリストへ名前を加える運びとなりました」
「え」

 聞き馴染みのある言葉ではないが、ほとんどの人間が知っているその存在。
 そこへ名前が載るという事に、良い意味を見出すような人間はあまりいないだろう。

 当然、和昌も受付嬢から告げられた言葉の意味をすんなりと理解することはできていない。

「ど、どういうことですか……? 俺、借金なんてした記憶はないですよ」
「ブラックリストと言っても、世間一般的なものとは別のものになっております」
「さらによくわからないのですが」
「要注意人物もといレア装備を手に入れた人間の中から厳選された人だけが載ることができるリストになっております。別名【モータル・インデックス】というリスト名ですね」
「……その感じだと、要注意人物から厳選された、もはや監視対象になるという感じに聞こえてしまうんですが」
「はい、その通りです」

 何も隠す素振りもなく、受付嬢はサラっと答える。

「もしかして常に尾行されるとかそういう感じなんですか?」
「いえ、さすがにそこまではしません。というより、ブラックリストとは若干だけ異なる点があります」
「と言いますと?」
「簡単に言いますと、特殊な依頼をすることになる感じです。地上での緊急事態時に依頼される、といった感じですね。当然、ダンジョンでもそうですが」
「なるほど……納得できる理由ではありますね」

 まさか自身に当てはまることがあるとは思ってもみなかったが、レア装備を地上で自由に装備できる権利を貰えている以上、等価交換というのは妥当な話だ。

「そこがいろいろと難しい判断にはなるのですが、今回はダンジョン内で起きた問題に関しては依頼しないという話でまとまっております」
「そうしてもらえるとありがたいです」

 和昌は、そこまで取り乱していない。
 ゲームや物語で、強力な装備を手に入れた人間はどういった扱いを受けるのかというのは散々見てきた。
 ヨイショされるのは簡単に理解できるが、周りからの目線は変わるし、管理する側は野放しにするようなことは避けたいはず。

「たぶん話の流れ的には、能力を考慮しての事だと思うのですが。もしも緊急の時が訪れた場合、人間相手でも装備の使用許可が出るんですか?」
「一応、許可は出ております。申請が出た時点で、相手を見つけたら即座に鎮圧……というよりは、力でねじ伏せてください」
「逆に言えば、そういった緊急性がなければ申請が来ないってことですよね」
「そういうことです。後、能力を出し渋ったら死ぬかもしれない、と頭の中に叩き込んでおいてください。葭谷様が強力な装備を所持していると同様に、相手もそういった装備を所持しているということですので」
「恐ろしい話ですね」

 自分の話ではあるが、和昌はどこか他人事かと思ってしまう。
 なぜなら、他人のレア装備を目の当たりにしたことは1度もないし、対人戦も未経験なのだ。
 もしもそんな時が来たら、程度でしか捉えていない。

「最後に、忠告だけはしておきます」

 淡々と話を進める受付嬢の表情は変わらないが、声と表情に真剣さを帯びたことを和昌は察した。

「その剣――【叶化の剣エテレイン・ソード】は、非常に強力です。それは今回、葭谷様も理解できたと思います」
「はい、その通りです」
「では、その力を人に向けて使用した場合、どうなるかという事も考えておかなければなりません」
「……」
「モンスターを討伐できる。しかし物体を破損または切断することは不可能」

 ここまで話をされたら、和昌はもう察している。

「では人間相手なら、どうか。それがわかるのは実践のみです」
「……はい」
「突然、装備を手に入れただけなのに『相手を殺すかもしれない覚悟をしろ』というのは、あまりにも酷な話だとは思います。ですが、この宿命を背負った人間がその責任を放棄した結果、もっと多くの人間が犠牲になるということも理解してください」
「そう……ですよね」
「ですが、一応はまだ回避する方法はあります。そちらの装備を、探索者連盟へ譲渡することです」

 そう、それは至って簡単な事。
 しかも、そうすれば大金だって手に入る。
 そのお金で探索者を引退し、また別の事をしたっていい。誰も文句を言いはしないだろう。

 しかしそうなれば、真綾・天乃・芹那とはわかれるかもしれない。
 もしかしたら、みんな和昌が進む道に同行してくれるかもしれない。でもそんな保証はない。
 頑張って、また最初からスタートでも構わないが、和昌は知っている。自身の弱さと不甲斐なさを。

「ちなみに、そう判断された場合は盾の方も、ですが」

 和昌は想う。そして、理解している。
 みんなは、装備がなくたって一緒にパーティを組んでくれるだろう、と。
 でも、こうも思う。
 自分が自分の価値をやっとみつけられたというのに、それを手放すことはできない。それが、偶然手に入れた装備だったとしても。

(装備にすがっているのはわかっている。だけど、強くなりたいと思った。いや、みんなと出会えて強くなりたいと想えた。だから、装備を手放すことはできない)

「その時が来たら、覚悟を決めます」
「大変だとは思いますが、よろしくお願いします」
「みんなを護るために――やります。やってみせます」

 言葉ではそう決意してみせても、和昌の心の中には未だ迷い残ってしまっている。

「可能性の話になりますが、もしも人体にも影響を与えない能力だった場合、同じレア装備だけを破壊できるかもしれません」
「そんなことってあります?」
「前例はありません。だから可能性の話です」

 受付嬢が書類を束ね始め、和昌は今更ながらに気が付く。

「その書類って俺に何かを見せるためのものだったんですか?」
「そうと言えばそうです。でも、少しだけ予測してみました」

 剣と盾の情報が記載されている書類の裏面に、手書きの文字が。

「盾の方は、名前通りに【朱護の盾】。これは見た目とかを意味していると思うんです。能力も実際にそんな感じでしたし」
「たしかに」
「では剣の方は、【叶化の剣】。パッと見ただけでは、ちょっと特殊な名前の剣だなって感じですけど、願いを『叶える』やそれを『化けさせる』……そう、例えば具現化させる能力というものではないかと」
「……」

 その予測に心当たりがある。

 弱いモンスターや、戦闘慣れしたモンスターでは剣は剣のままであった。
 しかし強力なモンスターや、危機的状況の時に剣はその外見を変化させた。

 そう、まるで和昌の馳せる想いに応えるようなかたちで。

「そうなのかもしれないです」
「どうやら心当たりがあるようですね」
「――はい」

 受付嬢は、『まさかそんなことはないと思いますが』という表情だったが、和昌の真剣に頷く表情を前に、心が入れ替わる。

「なるほど。それならば、もしかしたら人間相手でも能力をぶっ放しても問題なさそうですね」
「え……?」
「悪の心を持てば、人を殺める。しかし善の心を忘れることがなければ、それはない。ということになりますよね」
「そ、そうなんですか?」
「全面的に保障することはできませんが、まあそうなんじゃないですか」
「そんな投げやりにならないでくださいよ」
「だって、先ほども言いましたけど実践的なことは実戦で経験を積まないとわかりませんから」
「た、たしかに」
「それでは、お話は以上になります」

 書類をトントン、とまとめ終えて立ち上がる受付嬢。

「わかりました。いろいろとありがとうございました」

 和昌も立ち上がり、一礼。

「ではこちらを」

 受付嬢は和昌へ銀色の指輪を手渡す。

「これを肌身は出さず装着しておいてください。指輪で連絡などを行います。そしてそれ、凄い便利なんですよ。早速どうぞ」
「――お、おお」

 右手の薬指に装着した途端、透明化した。

「これで、手袋を外した状態でも見つかることはありません。そして――」
「基本的には他言無用、ということですよね」
「そういうことですね。まあ、もしもメンバーに喋ってしまったとしても、全員が監視対象になるだけですが」
「な、なるほど」
(たぶん、その監視対象になるというのは今のものとは別なんだろう。本当に人が尾行してくる、とか)
「それでは外へ行きましょうか」

 受付嬢に再び案内され、和昌は探索者連盟支部を後にした。
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