【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第二章

第13話『このパーティとして、らしいことを』

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「ここまで来たら、一旦は大丈夫か」

 比較的、モンスターの襲撃とは程遠い場所である階層移動用の階段付近まで移動を完了した。
 走っている最中に配信は終了したが、真綾まあや天乃そらのの容体が心配な和昌かずあき芹那せりな

「は、はっ――」
「はぁ、はぁ……」

 呼吸は浅く早く、地面に座り込んでしまっていて足腰に力が入っていないのが見て取れる。
 どう声をかけていいかわからない和昌は、芹那へ視線を向けた。

「……」

 しかし、頼みの綱であった芹那は首を横へ振る。
 目線で「私にもわからない」、と訴えて。

「これからどうするか」
「まずはここら辺で休憩して、2人が動けるようになったら戻った方がよさそうだけど」
「――それが最善策だよな」

 未だに先ほどの戦闘をした余韻に浸っている和昌かずあきは、少しだけ物足りなさを覚えている。
 しかし、今にも倒れそうになっているメンバーを強引に連れ回すべきではない。

(俺は1人じゃないんだ。ここは、リーダーとして安全第一に考えないとだよな)

 ならば、と警戒するためにこの場から離れて振り返ろうとした時だった。

「ごめんね……私、全然動くことができなかった」

 と、真綾がいつもの笑顔で明るい表情を見せることなく目線を上げた。

「いいって、気にしないで。今はとりあえず休んでいいから」
「本当にごめん。気持ちでは足を前に動かしているつもりだったんだけど……」

 次いで、天乃もクールな、だけど柔らかい表情などなく、口角を上げることなく目線を上げている。

「真綾も天乃もとりあえずは休憩しよう。何かあったとしても、俺がなんとかするから」

 リーダーだから、そんな気持ちで気遣う言葉をかけたつもりであったが、逆にそれが仇となって2人に罪悪感を抱かせてしまう。

 それに気が付いた芹那は、再び目線を下げそうになった2人の背中を軽くポンっと叩いた。

「なーにリーダーっぽいことを言い出してるのよ。この中で一番、探索者歴が短いくせに」
「それはそうだけど、俺がパーティリーダーってのは間違ってないだろ。役目を果たそうとして何が悪いんだよ」
「カズもカズだっての。気負いすぎ。私達はパーティなんだから、いくら強い装備を持っているからって強がる必要はないし、みんなで解決すればいいの」
「……そんなこと、言われなくたってわかってるし」
「どうだかねー」

 和昌かずあきもまた、勝利の余韻や責任感を背負っていたから薄れていたものの、慣れない出来事に混乱していたのだ。
 無理もない、探索者となって日が浅いのもそうだが、人生で初めて怯える人間を前にして対処法がわからないのだから。

「そうだよね、私たちだって頑張らないとだよね」
「え?」
「だね。私たち、ずっと護られてばっかり」

 真綾まあや天乃そらのは、両掌で自分の頬をバチンッと叩いた。

「私たちはパーティなんだから、助け合わないといけないんだ。はぁ……情けないよね」
「正直、恥ずかしい話だけど和昌に頼り切っていたのは間違いない」
「だよね。これでパーティなんて、他の探索者に見られたら笑われちゃう」
「だね。私たちもパーティの一員として、もっと頑張らないと」

 まだ完全には震えが止まっていない2人だが、剣を杖に立ち上がる。

「と、2人は意思を示しているけど、リーダーの意見は?」

 2人に対して、未だ心配で仕方がない目線を向けている和昌に対し、芹那せりなは発破をかけた。

「――……2人とも、本当に大丈夫なんだね?」

 真綾と天乃は、目線を逸らさず一瞬の躊躇いなく首を縦に振る。

「ならさ、俺らといえばってことしない?」
「何それ」

 芹那は、和昌の提案が理解できていない。
 しかし、真綾と天乃は強張っていた表情を緩めた。

「いいねそれっ」
「賛成」
「え? 何その感じ、私だけ知らないってこと?」
「大丈夫だ芹那。至って簡単。目的地であるダンジョン街がある階層まで一気に駆け抜けるだけだ」
「うわー」

 顔を引きつらせる芹那。

「後ろは振り向かず、ただひたすらに突っ走る!」
「いいねいいね~」
「単純だけど、作戦が決まっていると迷わなくて済むからね」
「えぇ……あのさ、私はそれでも大丈夫なんだけど。2人は、また同じ状況になっても足を止めずに走れるの?」

 芹那は我ながらに意地悪な質問をしている自覚はある。
 だがそれは、全員の命を護るためでもあるからこそだ。

「どうだろ、わからない」
「同じく」
「だったら――」
「でも、だからこそわかったこともあるんだよ」
「私と真綾の考えていることが一緒かはわからないけど、いつまでも足を止めていられないって思ってる」
「一緒だよー! みんなの足を引っ張りたくないだけじゃなくってね。誰かに負担をかけるんじゃなくって、みんなで戦っていくんだ。そうしなきゃいけないんだって」
「だね」

 真綾と天乃の表情に曇りはなく、互いに顔を合わせて微笑む。

「まあ、それもそうね。なんせ、うちのパーティはリーダーが超強い装備を持っているのに、超が付くほどの初心者なんだから」
「おい、俺を話しのオチに使うなよ。間違ってはいないけど」
「なら問題なし」
「くっ」

 ここまで話をし、既に全員の表情は明るくなっていた。

「じゃあ作戦は変わらないけど、陣形は俺を先頭に、みんなは後ろを走る感じで」
「はいはーいっ」
「わかった」
「はぁ……ため息が絶えないほどの安直な陣形ね。でも、私たちだからこそできるって話だけど」
「ああ。芹那が言っている通り、俺はまだまだ初心者で、ゲームで得た知識ぐらいしか使えるものはない。だけど、俺にはとっておきの装備が2つもある」

 自意識過剰な話ではあるが、何も間違っていないからこそ誰もツッコミを入れることができない。
 いや、だからこそ、誰もこの作戦に否定的ではないのだ。
 今までやってきたことを、そして和昌を信じているからこそ。

「俺は基本的に盾を展開しつつ猛ダッシュ。剣を持って走るのは無理そうだから、もしも横から襲われたらみんなに任せてもいいかな」
「任せてーっ」
「もちろん」
「カズの背中を護ることぐらい朝飯前よ」
「よし、じゃあ決まりだ」

 和昌は深呼吸をし――両手で頬を思い切り叩いた。

「――行こう!」
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