【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第三章

第14話『辿り着いた街で思う事』

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「はぁ――はぁ――はぁ」
「まさか、本当にここまで来られるなんてね」

 和昌かずあきを先頭に、全員でダンジョン内を走って走って走りまくった。
 その結果、階層を降り進めることができ、無事に第12階層の階段前まで辿り着くことができてしまったのだ。

「ていうか。この戦法が通用するんだったら、とりあえず戦いの練習より走り込んで体力をつけた方が効率アップに繋がるんじゃないの?」
「我ながらに否定できないのがなんとも言えない」
「それもそうなんだけど、盾の使い方どうなってるのよ。ちょっと前までは、手袋の動きに連動していないとダメって話じゃなかった?」
「あー、たしかに。でもこればかりは勘弁してくれ。なんかこう、アニメで観た加速していくと風を切って進んでいくアレを想像してみただけなんだよ」
「言いたいことはわかるのが悔しいところね」

 走り抜けていく最中、普通に腕を振りながら盾を展開してたことに対して芹那せりなは文句を言っている。
 芹那は「これじゃあなんでもありじゃない」、と心の中で文句を追加した。

「本当、私たちの決心がなんだったのかなーって感じではあったね」
「まあでも、あそこまで言っておきながら【サルイ】を1体だけ視界に入ったときは血の気が引いたけどね」
「だけど、真綾まあや天乃そらのは足を止めなかった。それだけでも凄く勇気が必要だったと思う」
「――うん。頑張ったよ」
「だね。私も」
「本当に凄いことだよ」

 そして――息を整えながらも、表情が曇っている人は誰もいない。
 本当に、それだけでも雲泥の差だ。

「それにしても、ここまで頑張ってきたというのにやる気が……」

 和昌は、後は降りるだけの無機質な下へ続く階段へ向かって目線を落す。

「私も詳しくはわからないけど、情報を仕入れた感じ、ダンジョン内でも街がある階段は他より長いみたいね」
「やっぱり?」
「うん。その階がそもそも大きいから街を建設できるって意味があるらしいよ?」
「そういう理由なら納得はできるな。ここまでの11階層分を通過しただけだけど、剣を投げたら届くぐらいの天井じゃ家とかは建てられないだろうからな」
「まあたぶんそんな感じ。一応、写真は見ちゃったからどんな感じかはわかるんだけど」
「やめるんだ芹那。それ以上は、ただのネタバレになる」
「わかってますよーだ。私だって、こう見えてもちょっと後悔してるんだから」
「まあ、生粋のゲーマーならそうだろうな。みんなも――そろそろ動けそうだし、降り始めるか」

 和昌は全員の様子を見渡し、先頭で足を進める。

「うわっ、大丈夫だと思ったけど走った後に階段を降りるのってキツイな」
「ちなみに言っておくけど、たぶん私が一番ヤバいと思ってる」
「ゲームばかりやっていないで、俺みたいにたまにはジョギングとかしたらどうだ? 付き合うぞ?」
「くっ、どの口が言っているのよ――って反論したいけど、他の誰でもない、カズにそれを言われるとぐうの音も出ないわね」
「ははっ、だろ?」
「まあでも、1人じゃないんだったらそれもありかもし――」
「あ~あ~、私も最近は体力作りをサボっちゃってたからな~。和昌くんと一緒にジョギングとか筋トレとかやりたいなぁ~」
「お、そうか? なら、やっちゃうか」
「おぉ~! やろやろ~っ」
「なら私も」
「お? 天乃もやる気だっていうのか?」
「ええもちろん。でも、私は普段もしっかりと体力作りをしているから、ジョギングじゃなくてランニングだってできるし、他のアウトドアで遠出したりすることもできる」
「な、なんだって!? それは凄い。じゃあ今度、山登りとか川下りとか行っちゃったり? 俺、1回はやってみたかったんだよな」
「いいね、全然あり」

 と、ダンジョンの中だというのに全く関係のない話をして完全に気を緩めている一行。
 それはひとえに、ゴールを目の前に張り詰めていた近況感から解放されたからである。

「ちょっと、私はそんな急に沢山走れないしアウトドアとかも無理だからね」
「ん? じゃあ、それぞれとそれぞれのことをすればいいじゃん」
「はぁ……カズ、本当にそれでいいの?」
「何がだ? みんなと個別に共通のやりたいことをすればいいだけだろ?」
「まあ、自分の体力とちゃんと相談することね。資本は自分の体なんだから」
「おう、そうだな。わかってるよ」
「どうだか」

 そんなこんな雑談に花を咲かせていると、心安らぐ異変に全員が反応する。

「お、これは安心する匂いだな」
「わかる、ダンジョンの中とは思えないほど」
「これはなんの匂いかな~、ラーメン?」
「真綾の鼻って超が付くほど敏感なの? 私は、心安らぐ草木の匂いがするんだけど」
「真綾は、食べ物に関しての嗅覚があまりにも鋭いだけ」
「ちょっと天乃ってば! それじゃあ、まるで私が食いしん坊キャラみたいじゃんっ!」
「え、そうでしょ」
「え? 違うの?」
「もーうっ!」

 今更ながらに、3人が仲睦まじい様子を見せていることに和昌は人知れず安堵する。

(なんだかんだあって、みんな仲良くやってくれているようで安心した)

 自分が真綾まあや天乃そらのへ連絡をし忘れていたことで、ファーストコンタクトはすれ違うかたちになってしまったことを悔いていたから。

(そしてそんな状況から始まれば、必然的に芹那せりなは俺とばかり話をすることになってしまう。その結果、身内ノリみたいな感じになっちゃって、天乃も乗ってきちゃうものだから真綾が話の話に入れなかったりしたんだよな)

 人生で、誰かの上に立ったり、リーダーなどの人をまとめる役を担ったことがなかったから招いてしまった失敗。
 しかし、その流れで全員の距離感が一気に縮まったのもまた事実であった。

 だからこそ、今の表情明るく話をする3人を見てみんなの適応力に感謝している。

(本当にみんな、ありがとう。俺も、これからもっと頑張るから)

 と、決意を新たにしたところで、光が射し込む扉の枠だけが残された門の前へ辿り着いた。

「うわー、ここから先がダンジョンの中にある街なんだね」
「よし、行こうか」

 まるで光の門を潜っていくかのような不思議な感覚に包まれながら通過すると――。

「ここがダンジョンの中だっていうのか……」
「わあ~」
「なんか、こう、なんか」
「私たち、テレポートでもした?」

 全員が、想像していたものとは異なりすぎる光景に口をポカンと開ける。

 無理もない。
 特にゲーマーである3人にとっては、ここまでの全てが血肉となっているゲーム知識を基づくものであった。
 ならば、思い浮かべるのは建造物全てが木造や石造でできているものばかりの街。しかし、目の前に広がっているのは地上で見るそれと大差ない、いや、そのままである。

「うわ、普通に車とかバスも走ってるじゃん」

 しっかりと道路まで整備されており、標識までもしっかりと建てられている。

 目線を移動させれば、デパートのようなショッピングモールのような建物もあり、歩いている人々は武器など持っていない。

「さすがに電車とかはないよな」

 と、あまりの便利さに不満点をあえて探してしまう和昌であったが、芹那せりながそれに答える。

「あそこにあるの、路線電車じゃない?」
「うわ、あるじゃん」

 もはやここまでくれば、不満を探すのであれば飛行機ぐらいだろう。と、考えた和昌は考えるのをやめて、目の前に広がっている光景全てを受け入れることを決めた。

「てか、芹那は写真でみたとか言ってなかったか?」
「いやいや、そこまで事細かくまでは見ていないわよ。言ったでしょ、ネタバレは私だって本意じゃないって」
「言ってたな」

 そして、とりあえず歩き出す一行。

「あー、まずは宿か? それとも、探索者連盟支部か?」
「両方じゃないかな?」
「とりあえず、説明とかを聴くなら後者じゃない?」
「それがよさそうね。宿とかも斡旋してくれそうだし」
「なら、それで」

 と、ご丁寧に探索者連盟支部の位置が記されている、大きな木枠に収められている地図を発見し、目的地を確認した。

「なんかこう、ここって本当にダンジョンの中なのかよ」
「不思議だよね~」
「違和感は諦めるしかない」
「お腹も減ってきたし、早く行こー」

 和昌は拍子抜けな展開に、盛大なため息を零した。
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