ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

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第三章

第21話『俺達が不合格ってマジで?』

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「次の試験……って、これが試験なんですか?」
「ええそうよ」

 俺はリラーリカさんについていったのは良いものの、到着したのはなんと図書館だった。
 しかも図書館というにはあまりにも埃まみれで、蜘蛛の巣もあちらこちらに張り巡らせている、汚れに汚れまくった本棚が並んでいる場所。

「ここに連れてきて、俺は何をすれば良いんですか?」
「あら、察しが悪いのね。ここの大掃除を一人でやってもらうのよ」
「うっ」

 こんなわかりやすい状況で察せないわけがない。
 あまりにも一目瞭然すぎて、目の前に広がる状況から現実逃避したいから聞いたんだ。

 リラーミカさんはここに来るのがわかっていたから、自分だけマスクをしているが、俺の分はなく、どちらの手にも二枚目はない。
 しかも終始俺の目を見ているあたり、視界にすら入れたくないのだろうが、これは一体どういう場所なんだ。

「試験内容は、もう諦めてやるしかないってのはわかりましたが、ここはどういう場所なんですか? どうやったらここまでになるんですか」
「ここは、元々私達職員が使用する目的で作られた場所なんだけど、いろいろと仕事が忙しくなったり従業員が減ってしまったりが重なって使用頻度が少なくなっていったの。そして、自然に誰も使用しなくなって……宝の持ち腐れという感じね」

 真面目な人達の集まりなだけあって、逆にこうなってしまったのだろう。
 現実世界でも、仕事をバリバリにしている真面目な人ほど、毎日が忙しくなっていくにつれて部屋が汚れていってしまう、というのをどこかのネット記事で見掛けた記憶がある。

「宝の持ち腐れということは、ここに置いてある資料は有力なものがあるってことですか?」
「勘が良いんだか勘が悪いんだか、キミってどっちなの?」
「どっちなんでしょうね」
「ええそうよ。ここに置いてあるのは基本的にモンスターやダンジョンに関する資料が主なの。ここがこんな感じになっているので、キミならもう察したんじゃない? 最近じゃ冒険者があまり冒険しなくなっていて、ダンジョンに挑む人が少なくなっているのよ」
「だから、ここも自然と使われなくなった、と」
「そういうことね」

 なるほどな。
 やはりここはゲーム世界と一緒で、どこかにダンジョンがあるらしい。
 だが、不思議な情報も手に入れた。

 冒険者が、冒険しない――か。

「それで、みんなはいつ頃ぐらいに合流するんですか?」
「何を言っているの?」
「え?」
「あー、もしかして、ここを仲間と一緒に掃除できるとでも思っちゃってた?」
「ま、まさか」
「そうよ、ここを一人でやるのよ」
「……わかりました。では、期限だけは教えてもらえませんか?」
「そうね~。掃除が全部終了したら?」
「なんで疑問形なんですか」
「んっふふーん」

 そんな、鼻息だけで返事されても困るんですが。
 それに、その挑発的な顔、やめてくれませんか。

「参考程度に、みんなはどんな感じの試験を受けさせられているんですか?」
「大体同じようなものよ。全員で五人だなんて、本当にちょうど良かったわ~っ」
「そ、そうですなんですね」

 これ、本当に試験なのか?
 俺達はただギルドにこき使われているだけじゃないのか?

「それじゃあ、頑張ってねぇ~」

 と、クルリと俺に背中を向け、リラーミカさんは手のひらをひらひらと振りながら部屋から出て行った。

 あの人、俺が冒険者になった暁には憶えていろよ。
 俺はそう決心し、拳を胸の前で握り締めた。

「早速始めなきゃな」

 まずは窓であろう、埃まみれかつ蜘蛛の巣だらけになっている窓に手を掛け、開け放った。
 勢いもあったせいか、ボワッと埃が舞い上がって、俺は反射的に顔を退ける。
 そして部屋の中に陽の光が沢山入ってきたところで、やっと部屋の全貌が見渡せた。
 とりあえず今立っている位置から見えるだけでも、中央を揃えで四台あり、こちらから反対側の壁に設置してある本棚が四台ぐらい。
 もう少し奥行きがありそうなため、この部屋にある本棚は計十台になるだろう。

 ここまで来たら入り口も開けてやろうと思い視線を向けたら、見えていなかったが箒と塵取り、そしてそれを入れる大きい袋が数枚置いてあった。
 流石に素手でやれ、ということではないと知って少しだけ安堵する。
 しかし、これを一人でやれというのは鬼畜そのもの。

「はあ……やるか」

 盛大なため息を吐き、袖を肘まで巻くって派業に取り掛かった。



「あら、案外早かったんじゃない?」
「それは嫌味ですか」
「いいえ、褒めているのよ」

 あの、リラーミカさんわかりません? 目で笑いながらそんなことを言われても誰が素直に受けられると思っているんですか?

「それにしても凄い格好ね」
「当たり前じゃないですか。あんなところを掃除をすれば誰だってこうなりますよ」
「それもそうね」

 絶対に分かってて言ってるでしょこの人。

「それで、みんなはどんな感じなんですか?」
「うーん。私が担当しているわけじゃないから、詳しいことはわからないけれど、少なくともここには顔を出していないわよ」
「わかりました」
「あ、ちなみにこのまま他の人の作業を手伝った場合、不合格になるからね」
「相当な鬼畜ですね」

 なんでそんなにドSなのか訊きたいところだが、疲れ果ててそんな気力もない。
 ロビーに設置してあるソファーに腰を下ろそうとした時、リラーミカさんから「備え付けのシャワーがあるから体を洗ってきなさい」とのお達しが出た。



 ありがたいことに、シャワーを浴びている間に衣類も綺麗にしてもらい、綺麗さっぱりになってロビーに戻ると、ケイヤ・アケミ・アンナ・ミサヤが疲れ果てて床に崩れ落ちている姿を発見した。
 他の受付嬢は既におらず、たぶん代表者としてリラーミカさんが一枚の書類を手に立っている。

「あら、綺麗さっぱりね」

 俺の接近に気づいたのか、振り向いてそんな感想を俺にくれた。

「じゃあこれで全員が揃ったということで、早速結果発表にしましょうか」
「え? もうですか?」
「そうよ。だって、もう時間が過ぎているし」
「ああ、そういうことですか」

 俺は床にヘタっているみんなの傍に歩み寄り、姿勢を正す。

「それでは結果発表です。カナト・ケイヤ・アケミ・アンナ・ミサヤ全員――――不合格」

 ん? 今、聞き間違えたか?

「リラーミカさん、もう一度だけお願いしてもいいですか?」
「不合格、よ」
「「「「「ええええええええええぇ!」」」」」」」」」」

 俺達はこれでもかと声量大きく驚愕を露にした。

「あんな大仕事をした、この俺達が不合格ってマジで?」
「理由は単純。さっき言った通り、もう時間が過ぎているからよ」
「そんなこと――……言ってましたね」
「つまりはそういうこと。今回はお金は徴収しないから、明日また来なさい」
「また同じ試験をしろってことですか?」
「いいえ安心しなさい。今度は正攻法よ」

 ここまで来て信じなさいって言われても、そこそこ無理がある。
 だが、流れを察するに、ここまでが用意されていたシナリオで、本当に次からはちゃんとしたものである可能性が高い。

「はぁ……わかりました。ではまた明日」

 俺達は疲れた体を引きずるように会館を後にした。
 当然、外に出てからは不平不満の嵐が吹き荒れたのは言うまでもない。

「はぁ……」

 本当にため息しか出ない。
 だって、ギルド側の思惑通りになってしまったということは、俺達は最底辺からのスタートになるということだ。
 なんだかなぁ……。

 気落ちする、と同時に、内から何かが沸々と湧き上がるのを感じる。
 心のどこかでは、これはこれでありなんじゃないかと思い、思い通りにいかないっていうのがまた面白く、それはそれで燃え上がって来ているんだと思う。

 たぶん、みんなもそう感じているはずだ。
 そうだな、やっぱりゲームっていうのは思い通りにいかない方が燃えるってもんだよな……!
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