ゲーマーパーティ転移―ゲーム中に異世界へ飛ばされましたが、レベルアップやステータスがあるので俺達は余裕で生き残ります―

椿紅颯

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第四章

第23話『ただのお使いクエストなんだよな』

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 綺麗さっぱり、お腹も一杯になったところで、俺達は次の指令を与えられていた。

「これさ、ただのお使いクエストなんだよな」
「それは間違いない」

 お題は三つ。
 まず初めにバスケットの中に入れられた四つのパンを指定された人物へ渡す。
 次にその人から依頼される配達を行う。
 最後に、完全に私情としか思えない商品を渡された金額で購入し、リラーミカさんに届ける。

 ここまでになってくると露骨なパシリではないか、としか思えない。

「でも、なんだか面白いね。こうしてみんなと歩くのって新鮮じゃない?」
「わっかるーっ。休みの日にみんなでお出掛けしているみたい!」
「ゲームの世界じゃこんなことはしなかったから、新鮮でいいじゃない」

 言われてみればそうだ。
 現実世界では買い物に行く時は、現地に集合したりして足並みを揃えるものだが、ゲームの世界ではみんなで買い物に出掛けるなんてことは一度もなかった。
 ここはこの世界を遊び尽くすと決めた手前、全力で楽しむしかないな。

 しかも、街並みを見物できたのも街に入ってすぐだったし、落ち着いた今改めて見てみると全然別物にも見える。

「たぶんこういうクエスト的なものが終了したら、冒険者登録に進めるんじゃないかな」
「だよな。俺もそう思う」
「予想でしかないけれど、そろそろ給料的なものが支払われたりするんじゃないかな」
「あー、なるほどな」

 ケイヤの良そうに納得がいった。

 俺達はもうそろそろ所持金が底をついてしまう。
 出て行く一方で入ってこないのだから当たり前だが、ゲームの最初もそんな感じだった。
 だが、初心者救済として、お使いクエストをやっていくだけで小学ではあるが報酬としてお金がもらえたのを思い出す。
 NPCに頼まれるクエストなんだが、本当に移動だけで済むことから話さえちゃんと聞いていれば誰にだって遂行できるものであった。

「懐かしいな」
「だね。初心者だった頃を思い出すよね」
「懐かしっ。ボクは飛ばしまくって全然話を聴かなかったから苦戦してた」
「そこで、うろちょろうろちょろしていて、あたしと出会ったのよね」
「うわーっ超懐かしいー!」
「その出会い方、面白すぎんだろ」

 そんな話、初めて聞いたな。
 言われてみれば、ミサヤとアンナはセットで知り合ったのを思い出す。
 いつもいつも正反対なことばかり言っているから、てっきり出会ったばかりの頃に話しかけたとばかり思っていたが、そんなことでもなかったんだな。

「それにしても……この地図、どうにかならなかったんかな」
「だねぇ……」

 アケミもカバーできないほどには酷い地図をリラーミカさんから手渡されていた。
 簡潔に説明すると、線しか描かれていない。

「たぶん、大通りを沿って歩けば問題なんだろうが……この黒い〇が示す場所はここだよな」

 俺達は足を止め、目の前にある店を覗き込む。

「生花店って看板には書いてあるが、バスケットの中に入ってるのはパンだよな。本当にここであってるのか? 間違ってるとしか思えないんだが」

 俺の意見に満場一致のようだ。

 店前で立ち止まったせいか、ドアベルを鳴らしながら中から人が出てきた。

「あら? どうかされましたか?」
「依頼でこちらの物を届けるようになっていたのですが、ここではなさそうでして」
「依頼?」

 姿を現したのは20代ぐらいの女性。
 白を基調とした花柄のエプロンを着ていることから、従業員だというのは予想できる。

「店の前で覗き込んでしまって迷惑でしたよね、ごめんなさい。そこでなんですが、僕達は――ここに行こうとしているのですが、どこだか見当がついたりしませんか?」
「どれどれ」

 俺は恐る恐る地図もとい、線だけが描かれた一枚の紙を差し出す。
 女性は嫌な顔一つせず覗き込んでくれたが、罪悪感が半端ない。

「あー、なるほどね。だったらここで合っていますよ」
「え、本当ですか?」
「ええ、なんだか大変そうだねあなた達。同情するわよ」
「どういうことですか?」

 さっきまでの客を対応する触りの良い感じの態度から一変、ため息を吐いた後、急に距離感が近くなった。
 言葉通り、表情が「ご苦労様」と語っている。

「えっとね、一応確認だけ取るけれど、これを書いたのはリラーミカよね」
「はい。もしかしてお知り合いだったりしますか?」
「そうね。知り合いも何も大親友よ」
「な、なるほど」

 あの人の知り合い、というのを聞いただけで少しだけ身構えてしまう。

「大丈夫よ。私はあれと違ってちゃんとあなた達の心はわかるし、雑用なんてさせたりはしない。それに、過小評価だってしない」
「なんでそれを」
「そりゃあね。私とリラーミカは物心ついた時から一緒に居たからね。それぐらいのことはわかるし、どんな仕事っぷりかっていうのも耳に入ってくるわよ。そして、冒険者になりたいっていう若手を虐めて、ここへお遣いさせることも」
「おぉ……!」
「わかるわかる。いままで大変だったわね、私はキミたちの苦労をちゃんとわかってあげられるわよ」

 俺達は全員、初めての理解者に喜びを隠せなかった。
 なんならちょっと涙が込み上げてきたもん。

「まあでも、リラーミカはちゃんと報酬を払ってくれるからね。そこは安心して大丈夫よ。そのバスケットが渡せと言われた品だね?」
「そうです。中身は見ていないのですが、パンですね」
「んまあ、匂いでわかちゃうよね」

 早速バスケットを渡した。

「実はお金を事前に渡されているのよね。まとまってドカッと。でもそれは報酬じゃなくて、キミたちみたいな子に渡す用なんだけど」
「大変ですね」
「そうなのよね。でもね、案外面白いのがこのパン、あの子が焼いたものなのよ」
「へぇ、リラーミカさんってお料理ができるんですね」
「まあね。――あっ、面白いことを想い付いたわ」

 女性はパッと顔を明るくし、軽く手をパンッと叩いた。

「このパンをみんなで食べて、感想を伝えてあげましょうよ。そしたら面白いものが見られるわよ。食べて美味しいと思ったのなら、素直にその感想を言ってあげてちょうだい」
「なんだかよくわかりませんが、わかりました」
「ふふっ、今から楽しみね。残念なのが私はそれを見られないってことなんだけど。あ、凄く今更なんだけど自己紹介がまだだったわね。私はマリカよ。お金に余裕ができ始めたらお店に来てみてちょうだい」
「わかりました。その時はよろしくお願いします」
「じゃあこれ、みんなで食べましょ」

 マリカさんはバスケットからパンを一つ取り出し、小分けに千切って俺達に渡してくれた。
 ここまでフラグっぽいものを感知していたから、てっきりマズいのかと思っていたが、匂いや見た目通りに美味しい。
 ここにジャムとかマーガリンとかがあったらさらに美味しいんだろうが、この世界にそれらはあるんだろうか。

 まあでもマリカさんが企んでいることを理解できなかったが、パンは美味しかったし、食べ終わったら一人当たり1000Gはもらえたし、街を軽く散策できたことだし良いことばかりだったな。
 こういうお使いクエストなら何個でもできそうだ。
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